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詩❲恋愛❳

過去を刻む 恋も刻む

作者: 日浦海里

ひとつ刻んだ

ここに刻んだ


茜が深みを帯びて臙脂(えんじ)に変わる空の色

連なる山を覆い尽くす鳳の羽の如き雲

味気ない灰の木々もこの時ばかりは秋の色

風を切るように三角描く小さく黒い空の影

遠く遠くどこまでも伸びて紫紺はやがて瑠璃になる


陽が陰に転ずる一瞬


ひとつ刻んだ

ここに刻んだ



ひとつ刻んだ

かこを刻んだ


乙女が赤みを帯びて容姿を変える恋の色

連なる山の谷間に響く龍の嘆き叫ぶ鼓動

色気ない灰の日々もその瞬間から春の色

息を切るほどに曲線描く細くて赤い線と陰

近くて遠いいつまでも消せぬ薄紅はいつか藍になる


陰と陽が交わる一瞬


ひとつ刻んだ

かごを刻んだ



刻まれた一瞬

永遠の一瞬


刻まれた傷は

痛みか温もりか


刻まれた時は

永遠(とわ)に変わらず

ただ顧みて

心を揺らす


不意に零れて落ちた雫は

藍色のまま

紫金(しこん)に煌めいて

目にした感動も

心に浮かべた情動も

連綿と続く時の流れの中にあって

けれど、刻み切り取られたその瞬間は

二度と訪れることはなくて。


----

茜:暗い赤色。

臙脂:黒みを帯びた赤色

紫紺:紺色がかった暗めの紫

瑠璃:紫みを帯びた鮮やかな青

乙女:黄みを含んだ淡い赤色。乙女椿の花のような色

薄紅:淡くくすんだ紅色

藍色:暗い青色

紫金:しこん。紫磨金しまごんの略。紫を帯びた純粋な黄金。しきん、と読んだ場合は赤銅の異称となる。



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― 新着の感想 ―
[良い点]  景色としての色、情景としての色、そして、感情としての色。  それらも、色同士も。明確にわけられることなく紡がれて。遠くに山が見えるからか、その広大さを感じて圧倒されます。 [一言]  …
[良い点] 世界には本当にたくさんの色がありますね。 良作をありがとうございます♪(*´▽`*)
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