表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴェレス戦記  作者: 百瀬(ももせ)
9/21

【カリン・フォードウェルⅡ】

《あたしはなぜここにいるの? なぜまだ生きているの? 生きる意味も、理由もないのに》



 あの男と出会ってから二ヶ月。

 あたし達は身体中至る所までいじられた。苦痛、だったかもしれない。でもよく覚えてない。

 苦痛っていうのは生きていてこそ感じるものだから。あの時のあたしは生きているようで死んでいたから、だから覚えてないの。

 ただ身体中をいじられすぎて自分がもう人間の姿をしていないんじゃないかって、思った時期もあった。

 でも、周りからは『強化人間』って呼ばれてたから少なくともそんなことはなかったみたいだけど。

 何故、自分が今も生きているのか。あたしにはその理由がわからなかった。

 それを考える気も、もはやあたしには起きなかったし。

 だからあの時、あの男の言葉を否定も肯定もしなかった。その結果が強化処置。ある時、

「あなたを生かした私を恨んでいますか?」

 医務室で、あの男があたしに注射をうちながら聞いた。

 あたしは無言のまま頷く。

 もうこの世界には、おじいちゃんもおばあちゃんもパパもママも、お兄ちゃんもいないんだから。

 あたしにはこの世界に生きている理由がもうなかったのに。

 知らず、涙が溢れていた。

「ならば私が与えてあげますよ、貴女の生きる意味を」

 そう言ってあの男はあたしの涙を指で拭った。

「殺せばいいんです、貴女をこんな境遇に追い込んだ奴らを」

 あの男は笑った。

「簡単でしょう?」

 ――その後のことは、よく覚えてない。





「いいわね? 突入したら各個撃破。基地を制圧する必要はないから全て破壊して」

 通信モニターで千津葉が真剣な声色で喋ってる。あたしは今、コックピットに座っていた。

 人型戦闘兵器『スヴァローグ』のコックピットに。

 難しいことは全部わからない。わかる必要もない。あたしはただ、

「あたしの敵をみんな殺す。殺し尽くす」

 それだけ。

「行くわよ、カリン。秀二君」

 あたしは先行する千津葉の後に続いた。あたしが、これからも生きていくために。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ