聖なるお札は呪われています。装備から外せません。
かつて世界を滅ぼそうとした魔王・ガルヴァース。
魔王は聖女・アリシアの聖なるお札によって封印されたが、千年の時を経て、ついにその封印が破られた。
「ふははははっ! 我、ここに復活せり! このような札ごときに、いつまでも封じられている我ではないわっ!」
そして額に貼られたお札を忌々しそうに引き剥がそうとしたその時、
「聖なるお札は呪われています。装備から外せません」
千年に渡る魔王の怨嗟は、聖なるお札を呪いのアイテムに変えていた!
「こ、こんな物をヒラヒラさせたままでは、魔王の威厳もなにもあったものではないっ!」
かくして、ガルヴァースは呪いを解除するため、冒険者を装い聖女の子孫を探した。
道中、襲って来た山賊を蹴散らし、わずかな路銀と聖女の情報を手に入れ、
「貴様が聖女の末裔か」
小さな、だが小綺麗な教会で礼拝している少女に声をかける。
振り向けば、確かに少女には聖女の面影があった。
「なにかご用ですかー?」
「我が名はガルーー、ガルス。貴様にこれの解除を頼みたい」
前髪を上げて額を見せると、少女は無遠慮に近付いてお札を観察して、
「呪いの解除ですかー。これは年代物ですねー。お代は五万ゴールドほどいただきますー」
「……これで足りるか?」
「そちらはカッパー銅貨ですのでー、お支払いには五百万枚ほどご用意くださいー」
「……また来る」
「闇の彼方へ弾けて消えろ! ダーク! ヴォイド! プラズマァァァァァァァァッ!」
ちゅどーーーーーーんっ!
「これで代金の代わりになるか?」
少女の前にゴトン、とドラゴンの角を放る。
少女は馴れた様子でモノクルを填め、
「古代竜の角ですねー。片方のみの欠品でー、洗浄・加工費用、販売契約やその他手数料を差し引いてー、五ゴールドになりますー」
あちこち傷だらけでズタボロになったガルヴァースはあんぐり口を開け、そしてふるふる……っ、と拳を震わせて、
「……また来る」
少女はヒラヒラとハンカチを振って、その背中を見送った。