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君は今をどう生きる?  作者: 光いつき
2/3

生存闘争

 早速、俺たちは花音が魔術を使えるか試すところから順に所持品の確認や俺の記憶の共有をした。

 ある程度結論から言うと、花音は魔術が使え、記憶は整理しきれず、大したものなど当然持っていなかった。


 まず花音の魔術について言うと、一番最初に俺が使った魔術、「ウォーターボール」を一度見ただけで再現した。

 威力も初めこそ微妙に見えたものの、一瞬で改善していた。

 この世界の平均や普通がどの程度かはさっぱり分からないが、もしかすると花音には才能があるのかもしれない。

 俺は不正しているようなものなので才能ではない。

 さらに記憶を整理していた中で回復魔術や、支援魔術なんてものもあり、それに関しては俺は大半成功させられなかったが、花音だけが成功させたりもした。


 そしてその記憶についてだが、整理しきれなっかった理由は二つある。

 一つは単純に量の問題だが、もう一つ、この記憶は、まるですべてを元から知っていたかのように錯覚してしまう特性のようなものがあるようで、どの記憶が新しく増えたものなのかが判別ができなかったのだ。


 まあ、荷物については言うまでもない。もう使う機会がないであろう我が家の鍵と日本円が入った財布と学校の教科書が入った鞄を花音が持っているくらいだ。

 その中に、たまたま持って帰ってきてくれた俺の外靴があったことが唯一の救いか。

 だが、服に関しては元々家に居たため部屋着である。まあこのくらいは仕方ない。諦めよう。


 と、具体的にはそんなところだ。そして今は、最初に見えた町に向かって山を降っている。山の半分程度は降りたかというところか。気になるところはいくつかあるが、問題があった訳でもないので、そのまま真っ直ぐ進んでいる。


「それにしても不思議ね、魔術って。そんなのがある世界なんて物語でしか知らないけど、実際どんな暮らしをしてるのかしらね」

「まあこれも立派な技術な訳だし、地球の暮らしとそんなに変わらないんじゃないか?」


 魔術が存在する以外にも、この世界には様々な種族がいるはずだ。文化が違えば食物も違う。

 不安はゼロではないが、期待感も大きい。


「確かに球体の炎や水を空中に浮かせられるのは魔術で制御されているからと考えれば、物理法則もある程度存在する可能性が高いわよね」

「その通りだな」

 そうして、ひっくり返した荷物をしまって言う。


「さあ、行こうか。異世界人の暮らす街へ」



「...ねえ、総介。この森、なにかおかしくない?」


 山の頂上から見えた街を目指して山を降り始めて30分程経った頃、森の中で花音が言った。


「なにが気になるんだ?」

「この森に入ってから、人の手が入っている様子も全然ないのに、動物どころか虫一匹たりとも見かけないわ」


 俺が気になっていたことの一つだ。


「やっぱりそう思うか?」

「総介も気づいてたの?」

「まあな」


 花音に言われて、もう一度意識すると、この山、というより森の中にはかじられた葉や、獣道など動物や虫のいた痕跡が複数あるにも関わらず、それを形作った生き物が一切見当たらない。


「俺も一つ思ったのはさっきから、少しだけ変な匂いがすると思うんだが。獣のような錆びた鉄のようなそんな匂いが」

「変な匂い?確かに、言われてみれば...」


『‐‐‐‐‐』


「今のは音は何だ?」

「分からないけど、ここよりさらに下よね。どうする?行くの?」

「とりあえず遠くから様子だけでも見に行ってやばかったら撤退しよう。」

「人だったら喋りかけに行きたいわ」

「OK。そうしよう」


 行くなら、今から色々なパターンを脳内でシュミレーションしておこう。



--そこからしゃがんで隠れながら5分ほど行った先


「..ねぇ、あれ見て」

「熊...か。ヤバイな」


 そこには、全長二メートル位の赤い目をした熊がいた。そして熊は、人間よりも数千から数万倍嗅覚の優れていると言われる犬よりも更に何倍も鼻がきくのだ。これは...こっちを見たな...チッ


「バレてる!戦うぞ!」

「..わかった!」

「...ウォーターボール!」

「...ウォーターボール!」


 二つの水弾が命中する。


『フゥゥゥッ!!』


「..チッ」


 いきなりの戦闘で焦って攻撃したが、今のはおそらくほとんど効いていない上、相手を完全に怒らせた形になった可能性が高い。

 実は事前に戦うなら環境のためにも水系統と話していたんだが、よくなさそうだな。


「花音!予定変更、風だ!胸を狙え!!」

「りょーかい!!」

「ウィンドカッター!」

「ウィンドカッター!」


 また命中した。今度は...


『グォォォォォ!!』


「効いた!」


 傷は深くはないが、間違いなくダメージにはなった。攻撃に関してはこのままなんとかなりそうだが...


 ドッッ!!


「ヤバッ!」

「あぶない!」


 シンプルな突進なのに明らかに速い。この土の地面に、大量の木や草などの障害物がある森の中、目測で50m以上はあった距離が一瞬で詰められた。

 加速のタイミングが分からなかったら余裕で死んでいる。

 ただ、今はとにかく距離をとらなきゃ死ぬ。だがそれに加え、花音の方も気にしなくては片方ずつ殺されるだけになるし、やることは多いか...


「よし、お互いカバーできるぎりぎりの距離で逃げながら戦うぞ!時間をかけろ!」


 俺が右、花音が左で、どっちかが突っ込まれたらどっちかが下がりながら攻撃を繰り返す。

 すると、相手は毎回攻撃対象を変える。

 後はそれを繰り返し、一方的に相手を弱らせていけばいい。


********************************************************



 ...はぁ、はぁ、はぁ


 もう10分ほど戦っているか。幸い、ウィンドカッターしか使っていないため、魔力はまだまだあるように感じるが、体力はそろそろ限界だ。

 この10分間、俺は花音と交代しながら全力疾走で突進から逃げ続けてヒットアンドアウェイを繰り返している。

 しかも、森の土は走りにくく、攻撃では障害物だらけのはずなのに、相手はそれを全て無視して突っ込んでくる。


 ただ、その相手も、傷だらけではあるため、この結果だけを見れば一方的な戦いにできている。

 それに、相手の行動パターンも一つだけ分かったしな。



「よし、そろそろ限界だ、タイミングを合わせてくれ!」

「ん!」


 そう言いつつ、俺は地面に落ちている石を拾い、熊に投げつけた。


「...今だ!」

「ストーンキャノン!」


 魔術の石が俺の投げたそれを越えていき、熊の意識外から命中する。


「やったか」


 念のため、一発ウォーターボールを撃つ。熊の体は直撃の反応で揺れるのみ


「反応なしね」

「よしっ!これでなんとかなったか」


 普通に危なかったが、攻撃してきたやつを優先的に攻撃する特性と、向かってくるものを何でも防ごうとする特性を見つけて、それを活かして勝負できたのは我ながら完璧だったと思う。


「...ん?」

「どうかしたの...か...!」



段々と地鳴りが聞こえてくる。それも間違いなくこちらへ真っ直ぐ向かってきている。


『グラアァァァァァァァァ!』


 おいおいちょっと急展開すぎないか。


「嘘だろ...1体でもきついのに..同時に3体は無理だろ.........」


 マズイマズイマズイ。これは本当にマズイ。しかも策を考える余裕もない。

 一か八か賭けるしかないな。ぶっつけ本番だが、いけると思おう。


「一発だけ全力で撃って逃げるぞ」

「じゃあ私は逃げれるように準備するね」

「よろしく」


 大きく息を吸って、吐く。


「アイスストーム!」


 次の瞬間、氷点下を下回る雪と氷の暴風が森の木々もろとも熊3体をまとめて宙に巻き上げる。


「にげるぞ!」

「ストーンウォール!」


 ...逃げる。逃げて逃げてとにかく逃げる。

 結局一度では逃げ切れず途中で何度も相手を足止めするが、ダメージを考える余裕はない。

 花音と対策を練る余裕もない。

 相手は3体である上に、1体火と風の魔術を使ってきた。

 そのせいで、毎回水と土で相殺しなくてはならないため、魔力さえも危なそうだ。


 そうして、死ぬ覚悟も、生きる決意もできぬまま、5分が経ったとき。

 花音が動いた。


「アイスエッジ!...ストーンキャノン!」


 花音はストーンウォールを使い続けるのをやめて、相手が至近距離に来たところへ一気に攻撃してそのまま1体を倒しきった。が、


「ぐうっ!」

「花音!チッ、ウィンドカッター!」


 1体目を倒した瞬間に突っ込んできた2体目に弾き飛ばされ、木に叩きつけられてしまった。

 その間見てるだけしかできず、人が死にかけなければ覚悟の一つも決まらない自分が本当に醜く、愚かで情けない。


 遅れて俺と魔術熊がお互いに魔術を放ち、相殺する。

 俺はそのまま続けて、本日二度目の賭けにでる。


「耐えてくれよ俺の武器」 


 そうしてズボンのポケットから戦いの前に何かの役にたつかもと思い花音から貰った、日本製のごく普通の『鍵』を取り出す。

 更に、それを包むように暴風の矢を作り、同じく作った風の弓を構える。

 狙いは目の前の魔術熊。とその奥のさっき花音を弾き飛ばしたやつの2体。


「二枚抜きだ。トルネード...アローーーー!!」


 1体目の魔術熊がドスンと音をたてて倒れる。そして二体目の熊も...


「まじかよ」


 倒れることはなく、鍵を胸に刺したまま、奇声をあげてはいるが、立っていた。

 逆に俺は魔力と体力ともに尽き、その場に倒れる。


 嘘だろ、最後の最後。後一歩のところで死ぬのかよ。死にたくない。死にたくない。こんなところで、死ぬわけにはいかない。


 そう思い今にも寝てしまいそうな意識と葛藤していると、何か音がして、鍵の刺さった熊が倒れる。


 助かったのか?


 直後、人影が見えたが、その数を見ることは叶わず、俺は意識を手放した。

小説書くのむずかしいです。間違いやアドバイスありましたら是非教えていただけると嬉しいです。

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