準備
会談が無事終わり、後は数日ヒル様が滞在するのみとなった。ただ滞在するだけなのに、私の胸にある不安は拭えない。何か起こる、そんな気がしてならなかった。
と、そこに「コンコン」。音が鳴る。深夜ということもあり、不気味に聞こえるノック音。
「誰ですか」
「私よルルー」
聞こえてきた声は、すぐに分かった。ガチャりとドアを開ければ、やはりその人がいた。
「なんで…」
「これから言うことを覚えて実行して欲しいの、命がかかっているのよ」
「姫様、少し外に出ませんか? 」
気分転換も兼ねて、私が言えば、姫様は少し悩んだあと、そうねと頷いた。
澄んだ外の空気を触れ、姫様は背伸びをする。
「よく晴れていて、気持ちのいい日ね」
「はい」
しかし、姫様のお顔は晴れ無かった。悩ましげに俯くままであった。
「ヒル様はどちらに? 」
「今は、ご自身のお部屋にて、モルビテ国の仕事に取り組んでいらっしゃるかと」
「多忙な方なのね」
「そのようです」
話すことも無くて、少しの間沈黙が続く。
「私思ったの」
急な姫様の言葉に視線が上がる。
「私たちの入れ替わりって、モルビテ国が関与しているんじゃないかって」
「…それは私もそのように考えています」
絶対に、何かがあった。レヴィエストとモルビテで。
「でも、それから分からない。何も、分からないの」
「……はい」
私も分かりません、そう言おうとした。でも、それを言ったら「何も分からない」で止まってしまいそうで、言えなかった。
でも、今はやるべきことがあった。姫様に、伝えなければ。
「シャルロッテ様、少し、良いですか? 」
こてん、と首をかしげる姫様。
「何が? 」
「これから、言う通りに行動して欲しいのです」
「……それは一体誰の指示かしら」
あの人の名前を言う訳には行かなかった。
「私の独断です」
「それで何か得られるというの? 」
「はい」
それは、確実に。
目線でそう訴えると、姫様は真剣な顔で言った。
「いいわよ」




