1.友人への相談
友人であるエスリアとは、定期的に顔を合わせている。
彼女には色々と相談してきた。人に話せないようなことでも、彼女には話せるのだ。
「弟と婚約する? ええ……」
「エスリア? その反応は何なのかしら? 別にそこまでおかしいことではないでしょう? ラガンデ侯爵家は色々と問題があった訳だし……」
「いや、家としての判断はわからない訳ではないけれど……」
私はエスリアに、弟のイルディンとの婚約について話していた。
それに彼女は、表情を歪めている。それはなんというか、少々失礼なような気がする。
ラガンデ侯爵家は、私の婚約破棄によって社交界において良い立場ではない。その婚約破棄に非はないことは知られているものの、それでも苦しい状況といえる。
「イルディン君も大変だな、この状況で婚約とか……」
「大変? 別にそういう訳でもないとは思うけれど。あら? そういえばあなたは、あの子の思いを知っていたの?」
「うん? あれ? あのさ、アルメ、もしかして……」
「ああ、イルディンからはその思いは聞かされたわよ」
「……ええ?」
エスリアはまた、失礼な反応をしてきた。一体、彼女はどうして私とイルディンとのこととなるとこうなるのだろうか。
しかし意外だ。彼女がイルディンの思いを知っていたなんて。エスリアは、恋愛面において意外と鋭いらしい。それは知らなかった。
「あなた、知っていたのね? どうしてわかったのかしら? まさかイルディンから相談されていたの?」
「いや、そういう訳ではないけど……」
「それなら、雰囲気などから察したということになるわよね? よくわかったわね? あなたが恋愛面においてそんなに鋭かったなんて……」
「鋭いとかではないかな。見れば誰でもわかるというか……」
エスリアは謙遜しているようだった。イルディンの思いは、ずっと一緒だった私が気付かなかったものだ。それを見抜くなんてことは、容易ではない。
しかしそういうことなら、イルディンもエスリアに相談していれば良かったのに。彼女ならきっと、力になってくれたはずだ。
「イルディンからの好意は、嬉しく思っているわ。あの子のことは、ずっと大好きだったから、婚約も好意もすんなりと受け入れられたというか……」
「……それはイルディン君的にはどうなのかな? 複雑なような気がするけど」
「そういうものかしら? でも、私はこれからイルディンとちゃんと婚約者として振る舞っていくつもりよ?」
「それは、どういうこと?」
「とりあえずキスはしたわ。頑張ったご褒美も含めてね」
「……なんでそうなっちゃうのかな? もうちょっと考えてあげてよ、イルディン君の気持ち」
私の発言に、エスリアは不服なようだった。
それは何故だろうか。愛し合う二人が口づけを交わす。それは別に、何もおかしいことではないというのに。
私はキスして嬉しい気持ちになった。イルディンだって、きっとそうだろう。そうじゃなかったら、少し悲しい。
「……イルディンは、私とキスするのは嫌だったのかしら?」
「え? いや、そういうことではなくて、もう少し情緒というか、雰囲気というか……」
「エスリア、もう少しはっきりと言ってもらわなければ、私にはわからないのかもしれないわ」
「アルメはムードとか、そういうことを気にした方がいいと思う。時と場合を考えて行動する方がいいんじゃないかな?」
「時と場合、なるほど……」
私はこと恋愛面においては、少しずれているのかもしれない。エスリアの言葉を聞いて、段々とそう思えてきた。
とりあえず彼女は私よりもそういったことに関して鋭い訳だし、従ってみる方が良いだろう。時と場合を考えて、これからは行動すると、私は決めたのだった。




