第66話 線引き
私は、友人のエスリアから質問を受けることになった。
私のブラコンがどれ程のものなのか、計るためである。
「それじゃあ……何がいいのかな? とりあえず、お風呂とかは一緒に入れるの?」
「お風呂? それくらいは入れるわよ。最近はイルディンが嫌がるけど、数年前までは一緒に入っていたし……」
「え? そうなの? 抵抗感とかないの? イルディン君も大変だなあ……」
エスリアが最初に質問してきたのは、お風呂だった。
しかし、それくらいは別に大丈夫ではないだろうか。
イルディンに裸を見られる抵抗感など、まったくない。弟が恥ずかしがっていなければ、今でも一緒に入りたいくらいである。
「まあ、別にこれくらいは普通なのかな? 弟がいないからわからないけど、異性でも兄弟なら問題ないということなのかな?」
「そういうものではないかしら?」
「まあ、イルディン君からしたらたまったものではないと思うけど……」
「え?」
「あ、いや、なんでもないよ」
エスリアは、イルディンに対して同情しているかのような言葉を放った。
確かに、弟側からしたら、あまりいい印象は持てないかもしれない。
それは、私も理解している。だから、今は一緒に入ろうと言ったりしなくなったのだ。
「じゃあ、弟と絶対にできなそうなことを質問しようかな? キスとかどうなの?」
「キス? それくらいも別にできるわよ」
「あ、頬とかにではなく、唇とか……」
「え? そのつもりだったけど……」
「え? それも抵抗感とかないの?」
次にエスリアが聞いてきたのは、キスのことだった。
しかし、それも別に大丈夫である。
こちらに関しても、抵抗感はなかった。幼い頃は普通にしていたし、特に問題があるようには思えない。
「うわあ……」
「え? 少し引いている?」
「いや、引いてはいないよ。ただ、そのイルディン君が哀れというか……本当に、苦しいというか」
「え? まあ、そうかもしれないけど……」
エスリアは、またイルディンのことを嘆いていた。
確かに、姉がこういうことに抵抗感を持っていないというのは、弟にとっては苦しいことなのかもしれない。
だが、こればかりは性分なのだから、仕方ないことなのだ。申し訳ないが、イルディンには納得してもらうしかないだろう。
「まあ、ある意味健全ともいえるのかな? 弟を弟として愛しているから、そういうことに抵抗感がないともいえるし……」
「え?」
「でも、気持ちを知っているこちらからすると、すごく哀れというか、なんというか……弟としか思っていないということだよね? 流石に、可哀そうだよ……」
エスリアは、小声で何かを嘆いていた。
そんなに、私という人間は駄目なのだろうか。もう少し、恥じらいというものを持った方がいいのかもしれない。




