表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浮気されたので婚約破棄して、義弟と気ままに暮らしています。元婚約者が女性関係で困っているようですが、私には関係ありません。  作者: 木山楽斗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/70

第62話 眠れない夜(イルディン視点)

 姉さんと少し話した後、僕は眠ろうとしたのだ。

 事前に話したことは、ずっと一緒にいられるかどうかという話だ。その話の内容は、少し重いものだったため、僕は少し眠れなくなっていた。

 そういうことにしたいのだが、眠れなかったのはまったく別の理由である。目の前で寝息を立てている姉さんが気になって仕方なかったのだ。


「すー」

「……くっ」


 穏やかに寝息を立てているので、姉さんは安眠できているということだろう。

 だから、僕は自分がここにいてよかったと思っていた。例え、自身が眠れなくても、姉さんが安眠できたなら、それでいい。そのように考えるようにしていた。

 自身の邪な気持ちが動かないように、僕はしっかりと自身を縛りあげる。頭の中で響かせていたのは、僕はただの弟だという言葉だ。

 今回の僕は、安眠を助けるために、仕方なく姉に付き合った弟なのである。そういう設定でいかなければ、ならないのだ。そんな自分になりきらなければ、この場は乗り切れないだろう。


「うーん……」

「姉さん? 大丈夫?」


 姉さんが少し唸ったので、僕は話しかけていた。

 だが、特に返事はない。代わりに、姉さんは僕の手を握ってきた。


「え?」


 さらに、姉さんは僕の方に身を寄せてきた。

 どうやら、先程の声は寝言でしかなかったようだ。

 一体、姉さんはどのような夢を見ているのだろうか。僕の手を握って、身を寄せてきたということは、何か不安な夢でも見ていたのだろうか。それは、少し心配である。


「どうしよう……」


 色々と心配があったが、一番の心配はこの状況だった。

 流石に、これは近づき過ぎである。なんとかしなければならないだろう。

 しかし、手を握られたことで、僕は身動きが取りにくくなっている。姉さんを起こさないように、慎重に体を離していくしかないだろう。


「よし……」


 僕は、なんとか姉さんから体を離すことに成功していた。

 幸いにも、ベッドが広いため、体を離しても充分寝られる。普段は、無駄に広いと思うこともあるベッドだが、今はその大きさに感謝しかない。


「手は……仕方ないか」


 握られた手は、姉さんが離してくれるのを待つしかない。だから、僕にできることは、もう何もないということだろう。

 姉さんの温もりを感じながら、僕はゆっくりと目を瞑る。この時は、その心地いい体温によって、安心して眠れた。

 しかし、この後の朝が大変だったことは今でもしっかりと覚えている。僕の寝る前の苦労は、それ程重要ではなかったのだ。

 だが、それも仕方ないことである。無意識のことを、どうにかできる訳がないのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ