第56話 村の祝勝会
私とイルディンは、コルカッサの村で、一晩ゆっくりと休ませてもらった。
流石に、昨日は疲れてしまったため、後処理をしてから、皆休むことになったのだ。ゆっくりと一夜を越えて、なんとか疲れもとれている。
そして、後日、村ではちょっとした祝勝会が開かれていた。作物を荒らしまわっていた獣が討伐されたため、村は大盛況である。
「結構、いけるものね……」
「うん、おいしいよ」
村を襲った獣は、今は姿を変えていた。
祝勝会で振る舞われている鍋の具材になったのである。
獣の肉は、中々に美味であった。その美味しさに、私もイルディンも手が止まらないくらいである。
「美味しかったわね……それじゃあ、ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした」
私とイルディンは、振る舞われた分を食べ終わり、手を合わせた。
これは、獣への弔いも込めている。
あの獣は、村の作物を荒らしまわった。だが、それも生きるためにやったことである。
私達はその命を奪った。これもまた、生きるためである。だからこそ、弔う気持ちを忘れてはならないだろう。
「さて、とりあえず、この村の問題は解決することができたね」
「ええ、でも、まだ終わっていないこともあるのよね……」
「そうだね。向こうに戻ったら、また事件のことで、色々とあるかもしれないね……」
この村の問題は、無事に解決することができた。それは、喜ぶことである。
だが、私達の問題はまだまだ解決していない。家に帰っても、ガルビム様の事件が解決している訳ではないだろう。また、事件の調査やら何やらで、面倒なことが続くだろう。
「まあ、でも、暗い話をしている場合ではないわよね。今は、この村を助けられたことを祝う場なのだもの」
「それも、そうだよね」
しかし、今この場で、そういうことを考えるのは無粋というものだ。
今は、村で祝勝会が開かれている。それを乱すようなことを、言っている場合ではないのだ。
「お二人とも、ここにいましたか」
「あ、ダルケンさん」
そんな私達の元に、ダルケンさんがやって来た。
その隣には、ログバンさんもいる。傷はまだ癒えていないようだが、歩けるくらいには回復したようだ。
「今回は、本当にありがとうございました。騎士団として、お礼を言わせてもらいます」
「自分の不出来で、ご迷惑をかけて、申し訳ありませんでした。ご協力、感謝します」
「いえ、気にしないでください」
「僕達は、僕達にできることをやっただけですから」
二人の騎士は、私達に感謝された。
だが、私達は領地を守るという領主として当たり前のことをしたまでだ。だから、感謝など必要ないのである。
こうして、私達は一つの村の問題を解決したのだった。




