第47話 到着した村で
私とイルディンは、コルカッサに到着していた。
この村は、ラガンデ家の領地にある小さな村である。この静かな村が、現在害獣被害に悩まされているのだ。
「お二人とも、お待ちしていましたよ」
「あ、ダルケンさん」
私とイルディンが馬車から下りると、ダルケンさんが出迎えてくれた。
どうやら、先にこの村に着いていたようだ。
「僕達より、先に着いていたのですね?」
「ええ、愛馬に乗ってきましたからね。馬車のあなた達よりも、身軽な私一人ですから、早く着いたのでしょう」
ダルケンさんは、愛馬に乗って、一人でここまで来たらしい。
それなら、私達よりも早く着くのは当たり前である。馬車という大きな乗り物で向かっていた私達が、一人を乗せた馬に勝てる訳はない。
「既に、村人には事情を説明してありますから、ご安心ください」
「それはありがとうございます。急な訪問だったので、事情を説明する手間が省けるのは、助かりますよ」
「いえいえ、先に着いたのですから、それくらいはしますよ。それより、こちらに来てください。騎士団としては情けないことですが、この村でも少々問題が起こっていたようです」
「はい、わかりました。行こうか、姉さん」
「ええ」
ダルケンさんの案内で、私達は村の中を進んで行く。
事情が既に知れ渡っているためか、村人達は特に驚くことはなかった。私達を見て、礼をすることはあっても、騒ぐことはない。
「さて、こちらの家です」
「ここは、村長の家ですか?」
「ええ、ここにいる人物に事情を聞くのが、一番早いと思います」
ダルケンさんの案内で辿り着いたのは、村長の家だった。
確かに、こういう時に事情を聞くのは大抵村長からである。この村のまとめ役なら、簡潔に事情を話してくれるだろう。
ダルケンさんは、ゆっくりとその家の戸を叩く。すると、中から物音が聞こえてくる。
「村長、ダルケンです。アルメネア様とイルディン様を連れてきましたよ」
「少々お待ちください」
ダルケンさんの言葉に返答があった後、戸がゆっくりと開かれた。
すると、一人の老人が見えてくる。
「アルメネア様、イルディン様、お久し振りでございます。訪問の事実を知りながら、出迎えの一つもできず、申し訳ありません」
「彼を責めないでください。お二人を出迎えるのは、私一人でいいと言ったのは私です」
「いえ、お二人とも気にしないでください。この訪問は予期せぬものです。ダルケンさんが知らせたとはいえ、そもそもが急な訪問。それは変わりませんから、村長に一切の非はありません」
村長は、まず謝罪をしてきた。
私達が訪問するという事実を知りながら、出迎えに来なかったことを申し訳ないと思ったのだろう。
だが、そんなことは気にする必要がないことだ。この急な訪問に対して、礼儀などは問えることではないからだ。
「それより、事情を説明して頂けますか? 僕達は、そのために来たのです」
「ええ、とりあえず、中にお入りください」
こうして、私達は村長の家で、話を聞くことになるのだった。




