表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浮気されたので婚約破棄して、義弟と気ままに暮らしています。元婚約者が女性関係で困っているようですが、私には関係ありません。  作者: 木山楽斗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/70

第46話 考え方の違い

 私は、イルディンと馬車の中で話していた。

 真面目な弟は、かつての自分に色々と思う所があるようだ。

 ただ、別にそれで押し潰されたりはしない様子なので、あまり追及はしないことにする。


「それより、イルディンはまだ私が他の人を褒めるのが嫌なの?」

「え?」


 そこで、私は話題を転換した。

 こちらも、確かめておかなければならなかったことだ。

 小さい頃から、この弟は私が他の人を褒めると嫌そうな態度をする。その嫉妬心に私は喜んでいる訳だが、それは正しいものだったのだろうか。


「まあ、そうだね……でも、昔とは少し考え方は変わっているよ?」

「え? そうなの?」


 イルディンの回答に、私は少し驚いた。

 どうやら、昔と今では、同じ反応でも考え方が変わっているようだ。

 ただ、よく考えてみれば、それは当然である。先程の可愛いという話でも、昔と今では考え方が変わっていた。成長している以上、そういうことが起こるのは必然なのである。


「具体的には、どういう風に変わっているの?」

「そうだね……恥ずかしい話だけど、昔は姉さんが他の人を褒めると、姉さんが取られてしまうと思っていたと思う」

「私が取られる?」


 私が掘り下げて質問すると、イルディンはとても素直に答えてくれた。

 昔のイルディンは、私を取られると思って、嫌そうな態度をしていたようだ。


「姉さんが他の人を褒めると、姉さんはその人のことが自分より好きで、その人の所に行ってしまうんじゃないか。そう考えていたと思う」

「私が他の人の所に?」

「嫉妬心とか、独占欲とか、そういうものがあっただろうね。もちろん、今もそういう感情がないという訳ではないけど……」


 小さな頃のイルディンは、私が思っていた通り、嫉妬心や独占欲があったらしい。

 それは今もあるようだ。だが、それが一番ではないということだろう。


「今はどう思っているの?」

「今は、姉さんが他の人を褒めると……悔しいとでも、いうのかな? もっと頑張らなくちゃいけないと思うんだ」

「悔しい?」

「うん。姉さんが褒める人は、皆立派な人だよ。その人達みたいに、僕もなりたい。そういう思いになるんだ」

「なるほど……そういうことだったのね」


 今のイルディンが嫌そうな顔をしていたのは、そういうことだったようだ。

 自分ももっと頑張らなければならない。そういう決意をする深刻な顔が、私は嫌そうにしていると思ってしまったようだ。

 なんというか、かなり弟のことを勘違いしていたらしい。嫉妬心や独占欲は、持っていてくれていたようだが、それでももっと崇高な感情を弟は持っていたようだ。


「ごめんなさい、イルディン。私、勘違いしていたようね……」

「いや、別にいいよ。姉さんの思っている通りの感情も、僕にはあった。それも間違いないことだからね」

「イルディン……ありがとう。そう言ってもらえると、嬉しいわ」


 私の謝罪に対して、イルディンは笑ってくれた。

 どこまでも優しい弟に、私は感謝の気持ちでいっぱいだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ