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浮気されたので婚約破棄して、義弟と気ままに暮らしています。元婚約者が女性関係で困っているようですが、私には関係ありません。  作者: 木山楽斗


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第43話 少し落ち込む弟

 私とイルディンは、馬車で領地のコルカッサという村に向かっていた。


「ダルケンさんのおかげで、騎士達から不当な扱いを受けることはなくなりそうね」

「うん、そうだね」


 そんな馬車の中で、私達は先程の出来事を振り返っていた。

 ダルケンさんのおかげで、不当な疑いをかけられなくなる。その事実は、とても嬉しいものだ。


「なんだか、とてもすっきりしているわ。肩の荷が下りたというか……」

「それは、良かったね。でも、まだ完全に安心できる訳ではないよ。事件は、解決した訳ではない。もちろん、不当な疑いはかけられないとは思うけど、それでも僕達はまだ容疑者からは外れていないはずだから」

「それは、そうなのよね……でも、正当な捜査をしているなら、それも仕方ないと思えるわ」


 しかし、冷静な弟の言う通り、まだ完全に安心できるという訳ではない。

 決めつけて不当に疑う騎士はいなくなった。だが、決めつける騎士でないからといって、私達が容疑者でなくなるという訳ではない。

 私達が犯人である可能性は、これからも追われるだろう。しかし、それに関しては仕方ないことだ。正当な捜査をしているなら、それは問題ではない。


「それにしても、ダルケンさんがあんな特別な地位の人だったなんて、まったく予想していなかったわ。まともだけど少し変わった人だと思っていたけど、あの独特な雰囲気は、他の騎士達を調査しているから出ているものだったのかしら?」

「そうかもしれないね……」


 私がダルケンさんのことを褒めると、イルディンは少し微妙な反応を返してきた。

 なんというか、少しテンションが低いのだ。いつもより、声のトーンも落ちている。


「イルディン? どうかしたの?」

「え?」

「いや、なんだか、少し落ち込んでいるみたいに見えるけど……」

「そ、そうかな……」


 私が問いかけてみると、イルディンは動揺していた。

 あんなにわかりやすい反応だったのに、隠せていると思っていたのだろうか。

 もしかしたら、無意識にああいう反応をしてしまったという可能性もある。だから、自分でも驚いているとかだろうか。


「あっ……」


 そこで、私はイルディンが何故このような反応なのか理由を思いついた。

 そういえば、この弟は私が他の人を褒めると妙な反応をすることがあるのだ。

 小さな頃に、晩餐会などで会った他の貴族を賞賛したら、イルディンは少し落ち込んでいた。先程の反応は、それと同じような反応だ。

 恐らく、嫉妬のような感情があるのだろう。他の人を姉に褒めて欲しくない。そのような独占欲を感じてくれているのだ。

 少し不謹慎な気もするが、私はその感情に震えていた。弟が自分に向ける欲望が、どうしようもなく嬉しいのである。

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