第42話 同行する騎士
私とイルディンは、ダルケンさんと対面していた。
二人の騎士は、既に帰っている。恐らく、捜査する気力もなくなってしまったのだろう。
「お二人には、色々と迷惑をかけてしまいましたね?」
「いえ、気にしないでください。ダルケンさんが悪い訳ではありませんから」
ダルケンさんの言葉に、イルディンはそう返した。
今回の件は、別に彼が悪いという訳ではない。あの悪徳騎士二人が悪いのだから、弟の言葉は当然のものである。
「ところで、小耳に挟んだのですが、お二人は何か困っているようですね?」
「ええ、実は領地の村で少し問題が起こっていましてね……」
そこで、ダルケンさんは話を変えてきた。
私達がどこに出かけるか、彼も気になっているようだ。
ただ、別にあの悪徳騎士達のように出かけるなと言ってくる訳ではないだろう。今まで接してきて、それはわかっている。
「領地の問題……何か深刻な問題でしょうか?」
「ええ、実は害獣被害で長い間困っているみたいなのです」
「害獣被害……それは、騎士が関係していることでしょうね?」
「そうですね、騎士が関係していることではあります」
ダルケンさんは、イルディンの言葉に少しだけ表情を変えた。
害獣被害は、騎士が事件解決にあたることが多い。そこから、騎士が関係していることを導き出し、表情が変わったのだろう。
害獣問題が解決していないということは、騎士に何か問題があるかもしれない。監査する立場の彼にとって、それは気になることなのだろう。
「少し気になるので、私もその村に向かわせてもらえませんか?」
「え? ええ、それは構いませんよ」
「どの村か教えてもらえますか?」
「え? コルカッサという村ですが……」
「わかりました。それでは、現地でお会いしましょう。失礼します」
イルディンに場所を聞いた後、ダルケンさんは去って行った。
どうやら、彼もコルカッサに向かうようである。
「……一緒に馬車で行けばよかったわよね?」
「そうだね。でも、もう行ってしまったし……」
別に、私達と一緒の馬車で向かえばいいと思ったのだが、ダルケンさんは既に行ってしまっていた。
もしかしたら、私達に気を遣ってくれたのだろうか。客人がいると、気を遣わなければならない。そういうことがないように、一人で行くことを選んでくれたのではないだろうか。
「まあ、いいわ。私達も行きましょうか」
「あ、うん。行こうか」
とりあえず、私達もコルカッサに向かうことにした。
ダルケンさんは行ってしまったので、もうどうすることもできない。これ以上気にしても無駄である。
こうして、私達は事件のあった村に出かけるのだった。




