第40話 待ち構えていた者達
私とイルディンは、害獣被害が出ている村に向かうことにした。
幸いにも、今日は私が仕事を手伝ったため、イルディンの仕事は午前中には片付いた。
そのため、午後から出かけることにしたのだ。
「結局、やることは増えてしまったね……」
「これに関しては、仕方ないことよ。迅速に対処しようとするあなたの姿勢は、至極全うなものだわ」
仕事が少なくなって喜ぶはずだったが、結局仕事は増えていた。
だが、これに関しては仕方ないことである。困っている人を放っておく訳にはいかないので、仕事が増えようが関係ないのだ。
「さて、それじゃあ、そろそろ行かないとね」
「ええ」
私とイルディンは、外に出て行った。
これから、馬車で害獣被害があった村に向かう。
そこで状況を確かめて、色々と判断するのだ。
「お待ちください、二人とも」
「え?」
「あなた達は……」
そんな私達を、引き止めてくる者がいた。
それは、昨日私達を訪ねて来た感じの悪い騎士達だ。
ラーガン・ウォーハイとその部下のメデッセル・ジャルミー。悪徳騎士二人が、何故か私達の屋敷の前で待ち構えていたのである。
「どちらにお出かけですか?」
「領地の村で少し問題が起きましてね。状況を確認するために、出かけようと思っているのです」
ラーガンの質問に、イルディンははっきりと答えた。
別に、私達がどこに出かけるかは隠すべきことではない。冷静な弟は、相手の態度が悪くても、そう判断したのだろう。
「ご自身の状況を理解していらっしゃらないのですか?」
「というと?」
「あなた達は、事件の容疑者です。無闇に出かけることが許される立場ではないでしょう?」
ラーガンの言い分は、滅茶苦茶な言い分だった。
事件の容疑者だからといって、どこかに出かけることを制限されることはない。だが、この悪徳騎士にとってはそうではないのだろう。
そんな愚かな騎士に対して、弟は一切表情を変えない。心の底では色々と思っているはずだが、それをおくびにも出さないその精神力は流石のものである。
「事件の容疑者であろうとも、あなた達に僕達の行動を制限することはできません」
「こちらの心証というものがあるでしょう?」
「おやおや、心証ですか……どうやら、本当にあなた達の捜査は杜撰なようですね」
「え?」
弟に対して放たれたラーガンの言葉に返されたのは、弟の言葉ではなかった。
その場に、もう一人騎士が現れたのだ。ダルケン・ウォーファム。比較的まともな騎士が、悪徳騎士の行動を批判したのである。




