第4話 変わらない二人
私は、イルディンと部屋で話していた。
イルディンは、色々と背負ってしまう癖がある。それが今回の会話で、少しでも直ってくれることを願うばかりだ。
「……姉さんは、変わらないね」
「え?」
「昔から、僕のことを思ってくれている。それが、とても嬉しいよ」
向き合って座りながらお茶にしていた所、イルディンはそのようなことを言ってきた。
確かに、私は昔から変わっていない。弟ができてから、私はずっとイルディンのことを可愛がってきた。
ただ、先程のあれは少し変わらなさ過ぎているのかもしれない。イルディンもいい大人だ。流石に、この年になって、姉に抱きしめられたいとは思っていないのではないだろうか。
思い返してみると、恥ずかしくなってきた。必死だったため気づかなかったが、あまりいい選択ではなかったかもしれない。
もしかして、イルディンは遠回しにそれを伝えてきているのだろうか。ああいうことは、もうやめて欲しい。そう言っていると、解釈するべきなのだろうか。
「姉さん? どうかしたの?」
「えっと……イルディン。もしかして、さっきのあれ……嫌だった?」
「え?」
よくわからなかったので、私はイルディンに聞いてみることにした。
ただ、質問に目を丸めているので、弟にそういう意図はなかったことはわかった。本当に純粋に、嬉しいと思っていたようだ。
だが、この際、全部聞いてみる方がいいだろう。実際、イルディンが私の接し方にどう思っているかは聞いておきたいことである。
「私は、小さな頃からあまり変わらない接し方をしているけど、イルディンは嫌ではない? もっと大人扱いして欲しいとか、そういう要望はないの?」
「え? 大人扱い? 別に、そんなことはされたくないかな。むしろ、姉さんにはそのままでいて欲しいと思っているよ」
「あ、そうなのね……」
どうやら、イルディンは前までと同じ扱いでいいと思っているらしい。
それは、私にとってもありがたいことである。急に接し方を変えろと言われたら、結構大変だったはずだからだ。
考えてみれば、イルディンは他の人からはもう大人扱いされている。それは嬉しいことかもしれないが、堅苦しいと思うことでもあるだろう。
それなら、私くらいは小さな頃と同じように接した方がいいのかもしれない。その方が、イルディンも心が安らぐのではないだろうか。
「それなら、これからもいつも通りでいこうかしら?」
「うん、それでお願いするよ」
私の言葉に、イルディンは力強く頷いた。
恐らく、私の弟に対する接し方は、当分小さな頃のままになるだろう。