表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浮気されたので婚約破棄して、義弟と気ままに暮らしています。元婚約者が女性関係で困っているようですが、私には関係ありません。  作者: 木山楽斗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/70

第26話 朝起きて

 カーテンを突き抜けて差す光に、私はゆっくりと目を覚ます。

 どうやら、朝が来たようだ。眠ってからは、特に目覚めることもなかった。ぐっすりと安眠できたようである。


「あら……」


 目を覚まして一番に見えたのは、イルディンの顔だった。

 眠る前は、これ程近くに弟はいなかった。恐らく、眠っている内に、二人の距離が詰まったのだろう。眠っている間にあったことなのでよくわからないが、寝相によってこうなることは別に不思議ではない。


「大丈夫そうね……」


 目と鼻の先で眠る弟は、穏やかな顔をしている。恐らく、イルディンも安眠できたのだろう。

 そのことに、私は安心する。眠る直前に変なことを言ってしまったため、眠れなくなっていないか心配だったからだ。


「ふう……」


 とりあえず、私は一度落ち着くことにした。

 今私が動いたら、イルディンを起こしてしまうだろう。朝が来たとはいえ、疲れている彼には満足するまで眠ってもらいたい。そのため、布団から出るのは得策ではないだろう。

 それでは、どうするべきか。その答えはただ一つである。私も、もう一度眠るのだ。

 正直、眠るのが遅かったため、まだまだ眠たい。幸いにも、今日は特に予定もないので、まだ眠っていても特に問題はないはずである。

 そう思い、私はゆっくりと目を瞑った。恐らく、程なくして眠れるだろう。


「うっ……」


 眠ろうとしていた私の耳に、小さな呻き声が聞こえてきた。

 それは、間違いなく弟の声である。もしかしたら、イルディンも起きたのかもしれない。

 二度寝しようと思っていたが、イルディンが起きたならその必要はなくなってしまう。それは、非常に残念である。

 だが、仕方ないことだとも思う。二度寝はあまり良くないことだ。諦めて、私も起きるべきだろう。


「え? あがっ……」


 そんなことを考えている私に、イルディンのよくわからない声が聞こえてきた。

 恐らく、目の前に私の顔があることに驚いたのだろう。もしかしたら、叫ぼうとしていたのかもしれない。大きく声をあげようとして抑えたことが、その声色から推測できる。

 確かに、起きて姉の顔がいきなり正面にあったら、驚くかもしれない。だが、大声をあげようとしていたという事実は、普通に傷つく。いくらなんでも、顔を見て声をあげられたくはない。


「驚いた……姉さんの顔が近くに……」


 私がまだ眠っていると思ったのか、イルディンはそのようなことを言ってきた。

 やはり、私の顔が近くにあったことで、相当驚いているらしい。


「まずい……どうしよう」


 イルディンは、かなり焦っているようだ。

 もしかして、優しい弟は私に怒られると思っているのかもしれない。

 よく考えてみれば、イルディンは寝る前から距離をとってきていた。姉弟であっても、女性には安易に近づかない。そういう気遣いの心があったのではないだろうか。

 それで、私に近づいてしまったため、かなり焦っている。そのように解釈できるのではないだろうか。

 そう考えれば、大声をあげてしまったことも納得できる。あれは、私に近づいてしまった申し訳なさから出た声なのだ。

 根拠はないが、そう思うことにしよう。その方が、私の精神衛生上、絶対にいい。

 本当に、イルディンは気遣いができる優しい弟である。私は、勝手にそのように結論付けるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ