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「双子の妹を甘やかせ」と言うおかしな法律がある国。そんな国に住む私もやっぱり狂っている。

作者: あかり

後味が悪い話となっております。



私は、『モニカ』が嫌いだ。


なぜなら……


「ルチアの人形ちょうだい」

「ルチアの洋服ちょうだい」

「ルチアのお菓子ちょうだい」

「ルチアのペンちょうだい」

 何でも私のものを欲しがるのだ。同じものを同じなだけ与えられているにも関わらず、強欲にも私のものを欲しがる。しかも、ここの大人たちはモニカのわがままを許し、私から取り上げモニカに与える。

なぜモニカのわがままを大人たちが許すのか。それは、この国に『双子法』というおかしな法律が存在する。

 その内容が『双子が生まれた場合弟・妹を甘やかし、兄・姉を厳しく育てよ』と言うものだ。普通、子育てついて国が口出すものかと思う。しかし、それは仕方ないことだ。この国では双子は国の宝なのだ。特に双子の弟・妹は神の子なのだ。


 この国は、双子の兄弟によって建国されたと伝えられている。兄は国王として弟は神の子として国に尽くした。そのため、双子は国の吉兆の証として『郭公の学び舎』で大切に育てられる。

もちろん私たちも漏れず、6歳の誕生日に祝い金と言う名の金で、両親に『郭公の学び舎』に売られた。

私は来たくてここに来たわけではない。それに、両親は双子法により多少モニカを甘やかしたが、ここ大人たちほど甘やかし過ぎることはなかった。規定の金額の10倍で……大人2人が一生遊んでいける金に目が眩まなければ、私は両親とモニカと慎ましいながら幸せに暮らしていけたに違いない。


 モニカのわがままが許される一方、『郭公の学び舎』の大人たちは、私のわがままを一切許さなかった。

 モニカのわがままは許されても、私の少しのわがままは許されず鞭で打たれた。

 モニカが勉強をサボっても許されるが、私は少しでも悪い点を取ると鞭で打たれた。

 モニカは魔法が使えないことが許されたが、私が魔法を失敗すると烈火のごとく怒り鞭で打たれた。

 モニカは不純異性交際をしても咎められないのに、私は少しでも同じ年の男の子と話しただけで、鞭で打たれた。

 モニカは愛を求めただけ大人たちに愛され、私がどんなに愛されたいと願っても愛を与えられない。

 モニカは暖かな寝具を与えられるのに、私は冷たい床で眠る。


 ある日は、モニカを注意しただけで、「モニカに嫉妬するな」と大人に叱られた。

 ある日は、「一緒に図書館に行こう」と誘っただけで、「何で意地悪言うの」と大声泣きだしたモニカ。大人たちは、「モニカを泣かした罰」と言い鞭で打たれた。

 ある日は、勉強をサボってばかりで読み書きが不十分なモニカに、文字を教えようとしただけで、「モニカの嫌がることはするな」と言われ食事を抜かれた。


 ついに、モニカも私を見下すようになり、下僕のように私を扱うようになった。

 モニカに名前を呼ばれなくなっても、モニカに犬だと呼ばれても、存在を無視されるようになっても私は耐えた。

 モニカにどんな扱いを受けても耐えなければ、大人たちに鞭で打たれる理由を与えるだけだとわかっていたから。


『双子法』により兄と姉は、どんな理不尽にも耐えなければいけないと決められている。


ああ、なんてこの国は理不尽で残酷なのだろう……


 そして、ついにこの日がやって来た。モニカが神の子として王城に行く日が。

モニカは綺麗に化粧をされ、極上の絹で作られたドレスを着て王城から迎えに来た馬車に乗り王城へ向かった。大人たちは笑顔でモニカを見送った。

私も、モニカが王城へ行くことを心から祝福し、モニカが神の子に選ばれたことがうれしくって涙を流した。






 モニカが王城へ行くと、今までモニカ与えられていたもの、モニカに奪われたものが私の物になった。

今まで、私に厳しく接していた大人たちは、私に笑顔を向けるようになった。そして、『郭公の学び舎』の責任者に聞かれた。


「高官となり国に仕えるのと、司祭として国を支えるのと、どっちがいい」と。


 私は司祭になることを選んだ。





ああ、なんて可哀想な私の片割れ。


双子法には、『双子が生まれた場合弟・妹を甘やかし、兄・姉を厳しく育てよ』と、そして、『生き残った方に高い地位を与えよ』と明記されている。



神の子が何をするのが知らない哀れな『モニカ』


ねぇ、『モニカ』知っている?この国の秘密を。


初代国王は弟を悪魔の生贄とした逸話を。


弟の尊い犠牲により魔法の力を手に入れたのよ?


魔法の力を維持するために、今も神の子(いけにえ)を王城の奥に棲むあくまに捧げているのよ?


私は何度もそれを知る機会を与えていたけど無駄だったみたいね。


そのことが書かれている本を読めように文字を教えようとした。


そのことが書かれている本を一緒に読むために図書館に誘った。


だけど、全て『モニカ』のわがままと、大人たちに阻まれた。


可哀想に。何も知らない無知な私の片割れ。


妹と言う目の前の利益に目が眩み、私から『モニカ』と言う名前を私から奪ったあまりに、姉としての厳しい教育を放棄したあまりに、自分から死を選ぶなんて。


ああ、なんて可哀想なお姉ちゃん。


お姉ちゃん、もう少し勉強をしていたら、妹だけ甘やかすだけの法律に疑問を持ったら死なずに済んだのに。


この国だって馬鹿じゃない。両方優秀だったら両方生かされたのに。


本当に無知で可哀想なお姉ちゃん。


本当にいいザマ


私から、名前を、全てを奪った罰が下ったのよ。



この国に『双子法』という狂った法律がある。

片方を極端に甘やかし、もう片方を極端に厳しく育てることにより、生贄かみのこを選別する狂った法律である。


ある双子は、甘やかされるだけ甘やかされ神の子の真実を知ろうとしなかった。

そして、妹が神の子に選ばれた。


ある双子は、甘やかされる弟を憎み、兄が弟を折檻した。

そして、兄が神の子に選ばれた。


ある双子は、毎日入れ替わり二人して堕落していった。

そして、両方が神の子に選ばれた。


ある双子は、真実を知り互いに手を取り合いながら、優秀であろうとした。

そして、両方が神の子に選ばれなかった。





双子は元々忌み子である。


その忌み子である双子を、悪魔に捧げて痛む良心を持ち合わせていない国に仕えるつもりなんて私にはない。


私はこれからの人生を、司祭として『モニカ』を可哀想と憐れんであげながら送ることにするわ。






だから、お姉ちゃんも大人しく悪魔に食べられてね?


*補足説明*

 

双子の入れ替わりです。甘やかされている本当のモニカに嫉妬した姉のルチアが入れ替わりを提案し、ルチアがそのまま『モニカ』として生活し甘やかされ、神の子に選ばれました。

本文中のモニカやあらすじの『モニカ』は本当は姉のルチアです。


 本物のモニカは『ルチア』として虐待のような厳しい生活を送ることになりますが、「なぜ、妹ばかり甘やかされるのが疑問におもったモニカは、図書館でその理由を調べ真実をしります。本文中『モニカ』がその真実を知る機会を与えたとありますが、実はどうせ『モニカ』は真実を知ろうとしないだろうとわかっていました。


 本物のモニカは、自分が生き残るために、姉を『モニカ』に仕立て上げたのです。もちろん『郭公の学び舎』の大人たちは二人の入れ替わりに気づいていましたが、最終的に「どちらか優秀な方が生き残ればいい」という考えなので、二人の入れ替わりを容認していました。


以上、補足説明でした。

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