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大倭幻想譚  作者: 司馬 仁兵衞
第一章
3/3

依頼と不測の事態

 俺は到着早々、ギルドのクエストボードからあかがね等級の仕事に目を向ける。


 そうして数あるものから


======


〔銅等級クエスト〕

“討伐依頼”

・人里におりて田畑を荒らす"ボア"の駆除

・潜伏場所:【里付近にある森】

・討伐数:5体

・報酬額:銀判3枚(3,000ゼニィ)


======


 を選び、受付を済ませターゲットが潜む森にやってきた。


 ボアは泥浴を好む。いくつか目星をつけてた沼田場ぬたばをまわりつつ茂みをかき分け、足跡や排泄物を俺は探した。これらがあれば其処が拠点だ。


 索敵や感知能力があれば楽に発見することができるのだが、俺には適正がなかった。戦闘のイロハを叩き込んでくれた人ーーーつまり師匠のもとで唯一得られたは気配察知(近くにいる者の敵意なんかがわかる技能スキル)だけ。


(無いものをねだっても仕方がないか。師匠も言ってたしな、『ハンターは歩いて走ってなんぼだ』って。地道に行くか)


〜〜〜〜〜〜


 地道にコツコツと頑張った結果、ボアの群れを発見した。十中八九ターゲットで間違いない。俺は物陰に潜み腰のポシェットから閃光玉を取り出し、群れ目掛け投げ込んだ。


ーーーボンッ!!


 不快な破裂音と同時に閃光フラッシュが辺りを包み、群れを一時的に麻痺状態へ。


「ーーー【気刃斬(オーラブレード)】ッ!×5」


 ターゲットの聴覚・視覚を奪った俺はすかさず得物を抜き、W(ウェポン)S(スキル)〈相手を真っ二つにするイメージで練り上げ、変化させた闘気の刃〉技を急所に5発ブチ込む。


“ブギィイイーーブギュゥ”


 やや高いトーンの鳴き声をあげ、どさっと倒れて死に絶える5体のボア。


 旋棍刀トンファーブレードを仕舞い、腰に下げた紅い瓢箪ひょうたんを手に "吸い込め" と念じて亡骸を収納した。


(やっぱ便利だなコレ。生き物以外なら大きさ関係無しになんでも吸って無限に収納できるから仕事が楽だ。“修行完了祝いだ!” と,譲ってくれた師匠に感謝だな、内容はめっちゃキツくツラかったけど)


 ここで解体してもいいんだがあえて俺は戻って作業することを選んだ。それは血のニオイで別のモンスターがやって来る恐れがある。また、解体中はスキが生じやすく奇襲にかかり易い。まぁ、師匠による地獄の修行を乗りきった俺なら無傷とまではいかないが余裕で返り討ちにできるのだが。そうしないのは小ダメージ程度の治療で余計な出費をするのが嫌だからのと、今日はソロで依頼クエストしているのが理由。いくら俺でも、許容範囲超えるマンパワーで攻めらたら無理ッ! 勝つことより命を優先する。


ガサガサ


 立ち去ろうとしたその時、茂みが揺れ背後から凄まじいプレッシャーを感じた。俺は臨戦態勢で警戒しつつ音がした方に振り返った。


 視線の先にいたのは毒蛇ヴァイパー、その上位種ーー"ワイルドヴァイパー"だった。


「ーー!?ッ」


 殺気を感じた俺はバックステップ+瞬動術のコンボで奴と距離をおいた。そして気配を消し、木の影に隠れこっそり状況を見ると、立ってた場所には木が倒れていた。損傷箇所に注目するとかなりの圧力で折られたのだと理解した。当然、やったのはアイツだろう。


 全身の筋力を活かしたスピード咬撃。


 対応が一歩遅かったら大木の代わりに倒れていたのが俺だと思うとゾッとする。


 “ワイルドヴァイパー”は中級モンスター。銅等級あかがねである俺なら苦戦することは無い。しかし、例外がある。変異種イレギュラーといわれる個体。コイツらはこっちの常識が全く通じない厄介な相手で、下級・中級が特殊な条件下で上級以上のちからを持っている。そして、そのような存在を俺達ハンターはそう呼んでいる。たとえばゴブ()リン()ナイト(騎士)とか。そんで目の前にいるのは間違いなく変異種だ。従来の個体より図体がデカく膂力、俊敏性ともに規格外! なにより色が違った。


(師匠曰く、『敵を知れ! そして、己を知れ』だな)


 相手と自分の力量を見誤ると痛い目を見ると最初に教わったけ。この場合、痛い目じゃなく確実に死ぬパターンだろ。ここは逃げの一択だ! ソロでコイツと殺り合うには今の俺じゃ実力が足りん。同格か銀等級しろがねが2、3人いねぇと分が悪い。


 即撤退を決め、その場から立ち去ろうと瞬動を行った。その時、身体にとてつもない痛みと衝撃がはしり、攻撃されたことに気づいたときには俺はブッ飛ばされたあとだった。


 目を向けると奴が尻尾をぶらりぶらりと揺らす姿が。


 不覚にも嵌められた。気配を隠していたから大丈夫と思っていたのだが、あっちは俺の存在をずっと認知していたようだ。予想外のことでニオイや熱で探知される可能性を忘れるなんて、師匠に知られたらこっぴどく叱られるだろうなぁ。もっともそん時には死体となってだがな。


 全身激痛で身動きすらかなわない状況。当然、奴さんがこちらに気をつかって見逃してくれるはずもなく、大口ひらいて毒牙剥き出しにトドメをさしにきていた。


 万事休す。そう思った矢先、ドカンッ!! という轟音が響きわたりブっ飛ばされるブラックヴァイパーの姿を目にする。

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