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0097 卑怯者! 私に何を飲ませた!? ああっ、身体の一部が燃えるように熱いッ 

 オイゲンは事態をガスパル王に伝える為、野営地を発って行った。俺達は将軍が戻るまでこの野営地の守備を手伝う事にした。

 さて、知っての通り、俺はただご飯が食べられて、明るく無責任にエッチが出来ればいいだけのごく普通の男なのだが。


「留守の間の事は、万事ウサジ殿に伺うように」


 ジジイがそんな事を言って出掛けたもんだから、兵隊共が話を何でも俺の所に持って来る。俺、三国志とかで言ったら相当な無能武将の部類だと思うんだけど。


 ただ……こうしてたたずんでいても、周囲から今までよりも強く、ヴェロニクの加護の力がただよっているのを感じる。


「ヴェロニク様、シュキシュキダイシュキ」


 時々、兵士達がそうつぶやいているのも聞こえる。この妙なお祈りもすっかり定着してしまったわ、悪いなヴェロニク。


 辺りの哨戒は引き続きラガーリン達が引き受けてくれている。兵士が少し手伝おうとしても、


「おマエら、チャカチャカウルサい。ジャま」


 人間の兵士は鎧や剣がチャカチャカ言うし、歩くのも遅く、敵やモンスターに見つかり易いので、却って迷惑だと言うのだ。



 それから昨夜魔族兵が言っていた通り、川の上流から魔王軍の船が何艘かこちらに向かっているという情報もキャッチした。しかし。


「ヤツら、にげテッタ」


 この野営地から逃げ出した魔族兵が何か知らせたのか、上流へと漕ぎ帰っているそうである。


「それじゃあ少し、森で暴れてるモンスターを退治しに行きますか。ああ、兵隊さん達はこのまま、ここを守備して下さい」

「しかし、ウサジ様まで不在になられては指揮官が居なくなります」

「副将とか居ないんですか、貴方達」


 ラガーリン達も森に大量のモンスターが居る現状を良くは思っていないだろうし、ここは少しでもこいつらの協力に報いておきたい。俺は……ノエラ達を呼ぶ。


「お前達、四人で森の掃除が出来ますか?」

「はいっ! 出来ます! でもジュノン君はちょっと心配かなあ」

「ジュノンさんの防具、ただのぬののふくですし」


 俺の防具もぬののふくなんだけど? とにかくジュノンは置いて行かれる事になった。まあ、小道具係はこの野営地の中に居る方が役に立ちそうだな。


「ウサジさん! 檻の中の全てのモンスターと餌の対照表が出来ました!」

「え? 貴方そんなものを作ってたんですか?」

「すみません、勝手な事をしてしまって」

「いや褒めたんです、面白いですねこれ。さすが小道具係だ」


 サメデビルの好物はバナナって意外過ぎるわ。海でどうやって生活してんだよ? エッチそうでエッチじゃない触手モンスターの餌は……うしのふん。ふんふん。まあ餌をやった所でれるとは思わんが、生かしておけばモンスター動物園とか作れるかもね、いつか。


 それはさておき。俺がノートに書かれた表を見ている間、ジュノンは団扇うちわを出して静かに俺をあおいでいた。確かに……確かに俺今、少し暑いなと思ってたけどね……


 何だよスティーヴ? 行かないのかって? 行く訳ないだろこいつ男だぞ! あの白いミニスカートの中身は俺のパンツだぞ解ってんのか。

 何? でもそのまた中身は女の身体だろうって?

 あのなあスティーヴ。俺はこういう所に関してはコンサバティブなんだ。意味が解らない? グーグルさんに聞け。そうじゃない? 女体なら何でもいいじゃないかって? そうは行かないんだよ、だいたいこいつ自身の心は男なんだから、男に抱かれたい訳ないだろう。もういいスティーヴ、この話は終わり、終わりだ。


「あっ、ウサジさん、これ、ありがとうございました」


 ジュノンはそう言って、道具袋から小さな布袋を取り出して俺に差し出す。何だろう? 小さな可愛いリボンで閉じてある……俺は何気にそれを開ける。

 何だよ。新品のパンツじゃねえか、俺がジュノンに貸したのと同じ……


「ひっ!?」


 違う、これは俺がジュノンに貸したパンツだ! 丁寧に洗って糊をつけてアイロン掛けて綺麗にたたんで、新品同様になってるゥ!


「あと、お礼にクッキーも焼いたんですけど、さすがに一緒の袋に入れたら失礼かなと思って」


 ジュノンはさらに別の小袋も渡して来る。俺は真っ白になったままそれを受け取ってしまった。


「ノエラさんは下着も貸してくれるっておっしゃってたんですけど、さすがにそれは気まずくて……新しい布で自分で縫いました」


 そう言ってスカートの裾を押さえて照れ笑いを浮かべるジュノン……何この女子力ゥ!? こいつ元々()()()()男だったのか、もしかして!?


「クッキーって……貴方いつの間にそんな」

「お菓子作りは元々の趣味なんです、ノエラさんの分も一緒に作りました」


 そして例によって俺は今、小腹が空いていた。全部解っててやってるのか、こいつ……そうして俺が仕方なくクッキーの袋を開けると。


「今お茶を入れますね」


 ジュノンは既にティーポットとカップを手にしていた。

「いいお茶ですね……心まで温まります」

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作者みちなりが一番力を入れている作品です!
少女マリーと父の形見の帆船
舞台は大航海時代風の架空世界
不遇スタートから始まる、貧しさに負けず頑張る女の子の大冒険ファンタジー活劇サクセスストーリー!
是非是非見に来て下さい!
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