0091 上手く行かねえもんだなあ、人生は。今夜も一人エッチ確定かぁ
―― ガッシャァァーン!!
ガラスが砕けるような音がした。俺を庇うように両手を広げて飛び出して来たジュノンは、アスタロウの攻撃をまともに受け……仰け反る……
「ジュノ……」
俺は一瞬、叫び掛けたが。
「ファイアーストーム!」
「ミストウォール!」
背後からのメーラの魔法攻撃で弾き飛ばされる! ラシェルが間一髪防御魔法を掛けてくれたらしく、ダメージは大した事なかったが……!
「せっかくアタシが気ィ引いてやってんのに、何てザマだこのクソザコが!」
メーラがアスタロウに激しく毒づく。そうかよ……そういう事かよ!
アスタロウはメーラを無視して、俺の方を向いて叫ぶ。
「おのれ、ウサジ! よくも俺の運命のエグゼキューションをそんな方法で防いでくれたな!」
そうだ、ジュノンは!? アスタロウはジュノンに何をしたんだ!
「ううぐ……うあああっ!?」
奴は……奴はジュノンに硫酸か何かを浴びせたのか!? ジュノンの体は、酷い異臭のする液体で覆われていた。周りには煙のようなものが立ち込め、ジュノンの着ている服は濡れた紙のようにボロボロになっていて、ジュノンが苦しみ、のたうちまわるにつれて、引き千切れ、破れてゆく。
悪魔……悪魔め!
「おのれ……!」
次の瞬間、俺の身体はアスタロウに向かって飛んでいた。奴の目が驚愕に見開かれるのが、スローモーションのように見える……
―― バキィッ……!
俺が振り抜いたひのきのぼうは、奴の胴体を脇腹から捕らえ、背骨をへし折るくらいの深さまで抉る……!
「ぐおぅわぁあああああー!!」
目玉が飛び出すかというくらいまで瞼を見開いたアスタロウが、弾き飛ばされてすっ飛んで行く……
―― ズザザザザザァ!!
「アスタロウ! 僕が相手だ!!」
さらに場外からノエラが突進して来る。アスタロウは……脇腹を抑えながら飛び立つ……
「フ、フハハ、俺には翼があるのを」
しかしその時には既にノエラは跳躍し、上空10メートルまで飛んだアスタロウのさらに上を取っていた。
―― ズガァァァァン!!
「グワァァァァァーッ!!」
ノエラの天秤棒の渾身の一撃を脳天からまともに喰らい、いかにもという悲鳴を上げながら墜落したアスタロウは、
―― ドボォォーン!!
川面に落ちて派手な水柱を上げた。
「クソがぁ! 本っ当にザコだねそいつは! 魔族の皆さん! また英雄気取りの冒険者共がやって来たわよ!」
メーラは忌々しげにそう口走ると、向こうを向いて逃げて行く。
「メーラ! やめろ!」
別の方向を警戒していたクレールもこちらに駆け戻りながら、そう叫んだ。そして。
「人間共だと!?」
「馬鹿な、昼間の軍隊が攻めて来たのか!?」
「なんだ、少人数ではないか!」
「プワハハ、飛んで火に入る夏の虫め!」
異世界にもあるのか、飛んで火に入る夏の虫。そんな事考えてる場合じゃねえ! 魔族兵共がどんどんどんどんテントから出て来る! こいつらあの……あの……金髪キザ野郎でも敵わなかった強敵なんだろう!?
何とか退路を見つけて逃げないと……くそ、でもジュノンはどうする、つーかまずは治療しないと、ジュノン! 俺はジュノンの元へ向かおうとする。
「ハッハー!! か弱い人間共めがー!」
「ろくな武器もなしにいい度胸だァー!」
しかしいきなり正面から、筋骨隆々の魔族兵が二体……! 俺は奴らが振り回す鉄球を! 大鎌をかわし! ひのきのぼうを脳天に叩き込む!
「ぐはぅわぁあ!?」
「皆さん! なんとか退路を、ジュノンの治療を!」
だけど魔族兵はますます増える! くそっ、こいつら動きも力も昼間のモンスター共の比じゃねえ!
「ウサジさんに触んなァァァ!!」
蛮声を上げて飛び込んで来るノエラ、その天秤棒にはくの字に折れ曲がった小柄な魔族兵がぶら下がっている、ノエラは棒を振りそいつをすっ飛ばす、飛んで行った魔族兵は、
「グギャウ!」「ぐぉわぁ!?」
別の大柄な魔族兵にぶち当たってそいつも吹き飛ばす!
ノエラは再び跳躍する、くそっ、暗過ぎて味方の動きを追うのも容易じゃねえ!




