0090 助けに来ましたよお嬢さん! 特別に無料でエッチさせてはいただけませんか
神官の(多分)ソーサーは魔族兵の腰掛けにされていた。酷えザマだこと。
クレールはノエラとラシェル、ジュノンも物陰に連れて来る。俺はジュノンに尋ねる。
「ああ、あの。以前私が貴方に初めて会った時、デッカーさんに殴られた貴方を、ソーサーさんは治療しませんでしたね」
俺は賭けを仕掛ける。さあ来い!
「ソーサーさんは元々貴族の次男で、プライドの高い方なんです」
やったー! 合ってた、あの金ピカで趣味悪い神官野郎がソーサーで、あのたゆんたゆんがメーラちゃんなのね、メーラちゃーん! 今助けてあげますよー! だから後でやらせて? タダで。
「酷いですよ。プライドが高いなら尚の事、怪我をした仲間は治すべきです」
「ソーサーさんの考えでは、デッカーさんに血の気が多いのは解っているのだから、ちゃんと避けるのが立派な冒険者で、パーティの仲間だと……避けられずに怪我をする時点で、僕はパーティの一員とは言えない未熟者なんです」
うーん……乱暴だがまあ一理ある。だけど野郎なんぞに合意するのは癪だ。
「仲間に暴力を振るうのも傷ついた仲間を治療しないのも、そんな理屈は有り得ません、増していつもパーティの事を考えている優しいジュノンさんに何ですか」
俺はポーズだけ怒ってみせる。本当はどうでもいいっス。
「あ、あの、御願いします、僕達はそれで良かったんです、僕に免じてどうかソーサーさんを、二人を助けて下さい」
「貴方がそういうなら、仕方ないですね」
ジュノンに立派な冒険者でないのが悪いと言った男は今、土下座の姿勢のまま、目の前で敵にお酌をさせられているメーラを助ける事もなく、奴らの腰掛けになっている。ざまぁもいいとこだよ全く。
やがてソーサーに座っていた魔族兵は立ち上がり、どこかに去って行く……しかしソーサーは立ち上がらない……というか微動だにしない。
「とにかく明日には増援のモンスターが来る。今度はもっと突破力のある奴を呼んだからな」
「今度こそ城壁を突破して、ヴェロニクの神殿とやらをズタズタに破壊し、信者共を皆殺しにしてやろう。フハハハハ」
バーベキューを終えた他の魔族兵も、見張りを残してテントに戻って行く。当たり前なのかもしれないが物騒な事言ってやがる。そんな事はさせないぞ。
さて、出来ればメーラちゃんだけ助けて、ソーサーはチャンスが無かった事にして置いて行きたい訳だが……ちょうどソーサーの周りに誰も居なくなってしまった。メーラちゃんも酒瓶をどこかへ持って行ったきり、戻って来ていない。
仕方無い、行くか……あまり大勢じゃない方がいいな。
「とりあえず、ラシェルだけ来なさい」
俺は匍匐前進してソーサーに近づく。ラシェルは鍬を手に陸自並みの第四匍匐でついて来る。
「……ソーサーさん……ソーサーさん!」
俺が目の前まで来て囁いても、ソーサーはまだ土下座をしていた。俺は手を伸ばし、その腕をつつく……ええっ? 何だこいつ、鉄のように硬いぞ?
「ウサジさん……この人アースートローンの術を使っています」
「アースートローン? 何ですかそれは」
「動けなくなる代わりに体が鉄のように硬くなって、どんな攻撃も受け付けなくなる、究極の防御魔法の一つです」
「凄い魔法じゃないですか、それで生き延びたんですねこの人」
「ちなみに効果時間は三年です」
「その間この人ずっとここでこのままなんですか?」
「すごく重いけど持ち運ぶ事は可能です、火口や深海にでも沈められたら実質死亡ですし、どこか安全な場所に運んであげないと」
「欠陥魔法じゃないですか。何故そんなものを」
「誰か来ます」
まずい、遠くのテントから誰かこっちに向かって来る……いや……あれはメーラちゃんだ! 辺りは暗くてよく見えないが、さすがに魔族兵とぷるんぷるんのお姉ちゃんではシルエットが違う。俺はそのまま立ち上がる。
メーラは、どんどん近づいて来る……あれ? 俺に気づいてない?
「んんー? あんたー。どっかで見らわれぇ……」
この女……酔っ払っているのか?
「メーラさん、助けに来ましたよ。ジュノンもデッカーさんも心配しています。一緒に帰りましょう」
俺がそう言っても、メーラは暫く、首をひねったり、腰をくねらせたりしながら、焦点の合わない目で俺を見ていたが。
「あっ……ああっ! あぁー」
「メ、メーラさんお静かに」
いきなりそこそこ大きな声を出したメーラに、ラシェルは慌てて注意する。メーラは少し声を落とし、魅惑的に腰をくねらせながら続ける。
「助けに来てくれたのね、良かったぁ。私、魔族の連中に捕まって、とっても心細かったのよ。見て、そのソーサーの姿を。私一人でなら逃げられない事もないんだけど、そうしたらあいつら、ソーサーを川底に沈めてやるなんて言うわけ!」
「ソーサーさんも運べると思います。とにかく来て下さい、向こうに仲間が居ますから」
こんな所で話を続けるのは得策ではない。早くここを離れないと。
「運べる、じゃなく、運ばなきゃ、わ、私の大事な仲間なんだから、置いて行ける訳がないでしょう? 貴方、もしかしてソーサーを置き去りにして私だけ連れて逃げるつもりじゃないの!?」
「お静かに、ソーサーさんは後で必ず運びますから」
ラシェルもそう説得するのだが、メーラは首を縦に振らない。待て。これは何か様子がおかしい。
「メーラさん……貴女……まさか……」
「えっ? 何? 急に怖い顔してどうしたの? ていうか貴方誰だっけ? どっかで見たんだけど思い出せないのよねー……あんたみたいな、地味な男の名前なんてねぇ! ホーッホッホッホッホ!」
次の瞬間。
「ハーッハッハッハ!! ヴェロニクの使徒ウサジ、貴様もこれで終わりだァァ!」
背後で誰かがそう叫んだ! 俺は今完全に油断していたのに、その声のおかげで俺は振り向いて構える事が出来た、こんな事をするのはきっとあいつだ!
アスタロウ!
「喰らえーッ! 運命のエグゼキューション!!」
さらに技名まで叫んでから何かを投げつけて来る奴の攻撃を、俺は余裕をもって避け……
「危ない!!」
なのに、俺とアスタロウの間に誰かが飛び出して来た……ジュノン!? 馬鹿!




