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0009 仕方ないじゃん、俺聖職者だもん、ちんちん丸出しにしてたら怒られちゃうじゃん

 翌朝。


「すごいよ! たった24ゴールドで体力も魔力も全快じゃないか!」

「今まで薬草を10個一気食いしてたのは何だったんだ……」

「こんなの許されますの!? 攻撃魔法使い放題じゃない!」


 巨大バッタ狩りのクエストも、MPをケチってちまちまやっていたので二ヶ月経っても終わらなかったが、魔法をふんだんに使いだしたら二日で終わった。数が多い敵なので単体攻撃ではキリが無かったのだ。


「これならダンジョン攻略も出来る!」

「何だ、ここの敵楽勝じゃないか!」

「私達、だいぶレベル上げしましたから……」


 翌日には手近なダンジョンも一つ、一日で攻略出来た。ダンジョンボスの巨大な触手草もクレールが魔法剣技を奮発して一人で倒してしまった。

 いくらか金も貯まったようだ……よく考えたらレベル35の勇者が革の鎧はおかしいよな……聞けば、一度は鉄の鎧も買ったのだが資金難で売ってしまったとか。


「ウサジのおかげだよ! そうでしょクレール!」

「わっ、私はまだ認めないからな! 私達が人の話を聞いてなかっただけだ!」


 そして夜には宿に戻る。


 ―――――――――


 ウサジ

 レベル7

 そうりょ

 HP58/58

 MP12/12


 ―――――――――


 ただ三人について回るだけの俺にも経験値の恩恵は降り、レベルは早くも7に到達したのだが……俺が魔法を使えるようになる気配は無かった。



   ◇◇◇



 宿は本当に寝るだけで、俺達は食事を村に一軒だけある酒場で摂っていた。


「あの……ウサジさんって僧侶……ですよね?」


 四人で食事をしていると……珍しくラシェルが声を掛けて来る。


「ええ、僧侶……ですね……すみません、回復魔法とかまだ覚えていなくて……」


 戦闘中も俺は後ろで「ぼうぎょ」しておけと言われている。正直手伝える事が無いのだ。

 檜の枝を振り回す程度の攻撃力はこのパーティには必要ないし、怪我をされるとラシェルが1ターン犠牲にして回復しないといけなくなる。

 俺が前に出てもデメリットしかない。


「あの、それなんですが……失礼でなければ教えて下さい……ウサジさんは、どちらの神様を信仰されていらっしゃるんですか?」



 あ。

 俺、別に……どの神様も信じてなかった……

 ていうかこの世界の神様って何て言うの?

 そういうのぜんぜん知らない……


 ……


 無宗教の僧侶が神聖魔法なんか使えるか!?



「あの……私が復活させてもらった教会、あれは何ていう神様を信仰してる教会なんですか?」

「あれは仕事神ワークスを奉る教会ですね、ウサジさんもワークス神の信徒なのですか?」


 迂闊だったわー。そりゃ何かの神様信じてなきゃ僧侶とは言えんわー。女共が宿屋知らなかったのを笑えんわー。

 どうしよう? 何か嫌な名前だけどそれでいいや、とりあえず。


「そうですね、私は仕事神ワークスを信仰して……」



――ガシャーン!!



 突然の物音に俺は飛び上がった。


「申し訳ありません!」


 何の事はない。

 空いた皿を集めていた給仕のおばさんが、皿を何枚か落としてしまっただけだ。

 皿が割れて、その欠片がまるで文字みたいに散らばっただけだ。


 その文字が『ウサジ』と読めるだけだ。


 ひ……

 ひいいいっ!?



「今片付けます!」


 給仕のおばさんはすぐに塵取りと箒を持って来て、欠片を集めてしまった。



「あの……私は……女神ヴェロニク様の信徒です……」


 俺は、恐らく真っ青な顔で、そう呟いた。



「ヴェロニク?」

「聞いた事の無い神だな……怪しい新興宗教とかじゃないだろうな」

「クレールさん、それはさすがにウサジさんに失礼ですよ」



 その瞬間。俺の頭の中に、二つの言葉が浮かんだ……


『しゅくふく』

『おはらい』


「あ、あの……あとごめんなさい……私、たった今魔法を二つ思い出しました……今までちょっと記憶喪失か何かになってたみたいです」

「本当!? じゃあ回復魔法とか使える!?」

「えーと、よく解らないけど、もしかしたら……」

「じゃあじゃあ! 僕にかけてみてくれない!? 今まだ少しHP減ってるから!」


 これは回復魔法なんだろうか?戦闘用のバフ魔法か?解らん……とにかく使ってみるか。

 ノエラが袖をまくりあげる。ああ、ちょっと青アザみたいなのがあるな。森の中で雑魚敵のスコップウサギから、うっかり痛恨の一撃を貰ってたっけ。



 ノエラ

 HP212/252


「えーと……『しゅくふく』!」


 おおっ!? 俺がかざした手から、キラキラと光の粒が溢れて、ノエラの腕を照らしている……


 ノエラ

 HP248/252



「あ……ありがとうウサジ! 完全に良くなったよ! ウサジは僕たちのパーティに絶対欠かせない戦力だね!」


 ノエラは素早く腕を引っ込め、満面の笑みを浮かべた。


「……少し残ってなかったか? 今」

「私も回復役が増えて助かります! 戦術にも幅が増えますよ!」


 威力が低過ぎて、手強い敵との戦闘中に使うには頼りねぇみたいだけどな……それでMP消費はいくつだよ。



 ウサジ

 MP12/12



 ん?

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作者みちなりが一番力を入れている作品です!
少女マリーと父の形見の帆船
舞台は大航海時代風の架空世界
不遇スタートから始まる、貧しさに負けず頑張る女の子の大冒険ファンタジー活劇サクセスストーリー!
是非是非見に来て下さい!
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