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0089 ほんとごめんここは俺のハーレムだから男は入れないの、前にも言っただろ

 夕闇迫る森の中を、俺達は身を潜めて進んで行く。


 先導はヴェロニカへ連絡に来た三人のラガーリンが引き受けてくれた。彼等は草むらや小川が作る、森の中の自然のトンネルを熟知していた。

 最初はオイゲンもついて来ると言い張っていたのだが、ラガーリンの一人が爺を一言で説得してくれた。


『おマエデカい。テキにみつかル。ジャま』


 おかげで俺達はモンスターに見つかる事なく進む事が出来た。それはいいのだが……行き掛かり上ジュノンまでついて来てしまったのは閉口へいこうものである。

 妖怪みたいな顔になってはいても、ノエラ、クレール、ラシェルは若い娘で俺はパーティ唯一の男、その形は崩したくなかったのになー。


「皆さんお待ち下さい、そろそろ虫除けを塗りなおして下さい」


 ジュノンはヴェロニカで持たせてもらった新しい道具袋を抱えて、俺達の間を行き来する……こいつ、小道具係としては本当に優秀らしい。とにかく、敵にも味方にも全く気配を悟らせずに移動して、その時に必要な道具を繰り出して来るのだ。

 まるでこちらの心を読んでいるかのように……例えばちょっと小腹が空いたなーなどと思っていると。


「りんごパイで宜しかったですか?」


 たちまちおやつを持って現れる。そのくらいならまだいいが、ふと立ち止まった所に無言で耳かきを差し出された時はさすがに変な声が出た。確かに俺、耳がかゆいなと思ってたけど!

 金髪キザ野郎がジュノンを追放してしまったのは、こういう所も影響してたんじゃないだろうか。



 川のほとりで野営している奴らを見つけたのは、日没後の事だった。

 真っ赤な肌に黒白反転の瞳、頭には四本の角、棘のような髪の毛、そしていかにも悪魔っぽい目鼻立ち……そんな魔族が焚き火をいてバーベキューみたいな事してやがる。その様子だけ見たらそのへんの陽キャと変わりねーな。


 周りにはテントがたくさん張られているが、それ以上に目立つのは鉄のおりだ。大小様々な物があり、中に様々なモンスターが入れられている。これ魔法で転送してるとかじゃなく、川を使って舟で運んで来るのか、もしかして。


「どうしますウサジさん? 酒樽に睡眠薬を仕込んで来ましょうか?」

「いくら相手が魔族でも、そういうのはもうやめましょう……」



 俺達は慎重に野営地の観察を続ける。

 魔族兵の中には怒りに任せて怒鳴り合っている者も居た。ヴェロニカに予想外に多数で武装の整った守備隊が居た事に苛立いらだっているらしい。


「アスタロウの奴の言う通りではないのか!? あの緑色のゴミクズ共が、人間に加担かたんしているのだ!」

「負け犬のアスタロウは自分の失敗の責任転嫁(てんか)をしているに過ぎん、奴はもう終わった魔族よ、いちいち真に受ける事はない」

「何でもいい、ラガーリン共が魔王様に逆らうというのなら、一人残らず根絶やしにしてやるべきだ」


 ほら見ろ、あんな事言ってやがる。


「落ち着け。人間共は人間共でラガーリンを下等生物と馬鹿にしているのだ、奴らは手を組んだりせん」


「……どうするの、ウサジさん……ラガーリンはもう味方なんだよね? ウサジさんはラガーリン達も守ってあげるんだよね?」


 魔族共の放言を聞き、一緒に草むらに忍んでいたノエラが極太カモメ眉毛をゆがめて心配そうにささやく。こういう表情をしてると、元のちょっといじめたくなる美少女、ノエラの面影があるな。


「勿論ですよ、だけど彼等は決してヤワじゃありません。もしも魔族がラガーリンの村を襲うなら、オイゲン将軍と一緒に後ろから挟み撃ちにしてやりましょう」


 だけどその前に、あのぼいんぼいんの姉ちゃんを救い出さなくてはならない。デッカーにも頼まれちまったし、ジュノンもやる気満々だ。あとまあ一応、金ピカ神官も見掛けたら助けてやらんと。実際人質にされると面倒だしな。



「そろそろまた虫除けを塗り直してください」


 俺達はジュノンに言われた通り、虫除けの薬を服や手首に塗りなおす。これのおかげか知らないが、檻の中のモンスターもほとんどこちらを見ない。

 そうして、人質になった二人を探して手分けをして探していると。


「ウサジさん、こっちに居たよ、来て、来て」


 クレールがやって来て、そっと俺の袖を引っ張る。



 果たして。あの姉ちゃんは居た。

 ああ……何てこった、姉ちゃんは鬼共が、いや魔族兵共が焚火を囲んで酒を飲んでいる周りで、奴らにおしゃくをさせられている……何という典型的な人質風景なんだ。ああっ!? あの魔族野郎、色っぽい腰に手なんか回してやがる畜生!


 どうしよう。どうすりゃいい? やっぱりラシェルの薬を使うか? あれをしゃくに混ぜれば……駄目だ。あの薬は効き目が強過ぎるのだ、それではたちまち魔族共に疑われ姉ちゃんが酷い目に遭わされるかもしれない。

 ところで酷い目ってどんな目だろう。魔族の男は人間の女にも性的な興味があるのか? あの腰をなでるいやらしい手つきから察するに十分あるのだろう。

 あの推定Gカップの姉ちゃんを魔族共が取り囲み、悪い子にはおしおきだと言い出して、前から後ろから……やべえ興奮して来た。いやそうじゃねえだろ。


 あと、結局あの女魔術師の名前はソーサーなの、メーラなの? あ。よく見りゃ金ピカ神官の方も居るじゃん。魔族兵の男共は、自然の岩や丸太、切り株、折り畳み椅子などに座っているのだが、そのうちの一人は地面にうずくまったあの神官の背中に座っていた。


 うーん……よし、あの神官がソーサーで、魔術師の姉ちゃんがメーラな(仮)! 合ってたら明日は俺のラッキーデーという事にしよう。

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作者みちなりが一番力を入れている作品です!
少女マリーと父の形見の帆船
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[一言] ジュノンやべー能力者だ
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