0086 見た目に期待した俺が馬鹿だったよ、この殺戮しか取り柄のないクソ共が!
三妖怪の快進撃は続いた。
―― ブバババババババ
大盛りモスキート、体長30cm、モンスターとしては小柄だがその体サイズで人間の生き血を吸おうとする超絶恐ろしい敵である。そして大群で現れる。
「ノエラ、ラシェル、ここは魔法で……」
さすがにビビった俺はそう叫ぶが、
「うおりゃああああ!!」「はい! はい! それ、それ!」
二人は天秤棒と鍬で奴らに立ち向かう! そして凄まじい勢いで叩き落して行く! お前ら絶対前より強くなってるだろ!?
「僕達、絶対前より強くなってるよね!?」
「ウサジさんの愛の力のおかげですよ!」
「わ、訳のわからない事を言ってないで、さっさと魔法を使いなさい!」
「大丈夫! 魔力がもったいないもん!」
「町についたら、必要になるかもしれませんよ!」
仕方が無いので、俺もひのきのぼうを振りかざしてモスキート共を叩き落す……まあよく考えたら、こんなデカくて見え見えの蚊を叩くのは簡単だな。
「ウサジ殿! もう少し下がられよ!」
おっと、オイゲン達に追いついてしまった。爺さんはまだ元気なようだが、部下の騎兵は負傷してる奴も居るな。
「しゅくふく!」
俺は遠くからその魔法を掛けてみる。もしかしたら出来るんじゃない? ほら出来た。光のかたまりみたいなのが飛んで行って、傷ついた騎兵を包む。
「ぬおっ!? なんだこれは……ああっ、傷が塞がっている! ありがとうございますウサジ様!」
遠隔回復魔法まで使えるようになっちまった。すげえな俺。
いや……違うな。これは俺の成長じゃない。
「大丈夫ですよ! ヴェロニカへ急ぎましょう!」
―― ズシーン! バターン!
後ろの方で二体のワンサーティンが同時に倒れ、その間からクレールが駆け抜けて来る……クレールが一人でやったのか、凄いな。
その後からジュノンの姿も……まあこいつはついて来てるだけだな、うちのパーティはそもそもアイテムをほとんど持ってないので、アイテム使いに仕事は無い。
「こっちも片付いたわ! 急ぎましょうウサジさん!」
「皆さん……本当はこんなに強かったんですか……」
「本当とは何よ、失礼ねー」
「すっ、すみません!」
オイゲン爺が感心している。
「驚いた……三人は元々才能のある若者達だったが、短い期間でここまで強くなるとは……ウサジ殿、貴様が育てたのか」
うーん。そんなこたぁねーけど、三妖怪に関しては、付き人になる事でリミッターが外れたのかもしれない。
美少女パーティだった頃の三人は、構えも美しく動きも整然としていて、それはもうよだれの出そうな良い眺め、いや華麗な戦い方をしていたのだが……言い換えればそれはちょっと、お行儀が良過ぎたのかもしれない。
今の三人は野生のままに馬鹿力を振りかざしている。それでいて油断も隙もなく、戦士として習った技術を最大限に生かせる、ずる賢い動きが出来ている。
「おりゃおりゃおりゃりゃああああ!!」
「せい、やっ、だぁあ! うりゃ、うりゃ、どうだぁ!」
「はいっ、はいっ、そやさ! はいそやさ!」
いつの間にか先頭で道を切り開くのはノエラ達三人になっていた。
俺も相当パワーアップしている……ひのきのぼうとぬののふくでも、全く問題なく戦える程に。だけどこれは俺が強くなったのではなく、ヴェロニクの力が強くなったのだと思う。ヴェロニクを信じてくれる人々の力が、ヴェロニクの使徒である俺の力になっているのか。
困ったなあ。俺は本当はいっぱいエッチがしたいだけの男なんです、って言い出し辛くなっちゃうじゃん。
神の使いみたいな事にされちゃったら、気軽で無責任なエッチが出来なくなっちゃうよなあ。
俺はそんな事を考えながら、ひのきのぼうを揮う。周りでは時々、未熟な兵士共が怪我をするので、
「ウ、ウサジ様」
「しゅくふく! しゅくふく!」
「あざーす!」「サーセン!」
時々治療呪文を掛けながら、俺は左右から現れる触手の生えた巨大キノコをぶちのめす。お呼びじゃねえんだよ、この役立たず共め。
ふと。森の中を続く道の途中にある、一軒のうち捨てられた小屋が目につく……そういやあったな、こんな建物。前に通った時も、誰も住んでないように見えたが……誰かが小屋の窓から顔を出している……
「おおい、誰か……助けてくれえ!」
暗くて顔はよく見えないが、ありゃ男だな、ほっとこう。
いやまあそういう訳にも行かないか、面倒だけどヴェロニクの為だ、人助けはまめにやらないと。
「ウサジさん、気をつけて、僕が先に中を見るから!」
小屋の方に向かう俺にノエラが駆け寄って来る。いや待て、女の子に先に危険な所をチェックしてもらう訳には……まあいいか、妖怪だし。
ん? ジュノンも慌てて駆け寄って来る。
「待って下さい、あれは……デッカーさん!? どうしてここに!?」




