0082 ヒーローになりてえなあ。美少女達にエッチな格好をさせるヒーローによお
夢の中でも働きまくった俺は、朝から少し疲れていた。
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ウサジ
レベル58
そうりょ
HP306/542
MP37/114
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ラシェル
レベル36
つきびと
HP198/198
MP273/273
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ノエラ
レベル41
つきびと
HP299/299
MP94/94
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クレール
レベル48
つきびと
HP470/470
MP38/38
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だけど久々に見たら……マジかこのステータス? 何で俺だけめちゃくちゃレベル上がってんの? 最近の俺、全く戦ってないのに……サッパリわからん。
俺達はまた城に向かって歩いていた。マドレーヌも爺も来いと言ってたし、行った方がいいのだろう。
「ねえ、あの人ウサジ様じゃない?」
「おい、今の人ヴェロニクの使徒ウサジ様だろ!」
そしていつの間に俺の名前と顔が知れてるんだよ、俺一昨日来たばかりだぞ、しかもこんな都会でそんな……これじゃ俺、エッチなお店に入りづらいじゃん……
「一緒に居るのはノエラちゃんか!? ノエラちゃんが何故あんな格好を!?」
「じゃああの瓶底眼鏡はラシェるん、ラシェるんなの!?」
「嘘だぁクレール様があんな皺だらけのメイク、誰か嘘だと言ってくれえ!」
そして俺の評判は、必ずしも良くはない。
「あの坊主がさせてるんだ……あの子達にあんな格好を、あの坊主……!」
拳を握りしめて俺を睨んでる奴も居る……うるせえ、何泣いてやがんだいいオッサンが。見世物じゃねえぞ畜生。
「お前達、少し離れて歩いてもらう訳には行きませんか」
「嫌です! 僕達はウサジさんの付き人です!」
「私達、ウサジさんを守る為に一緒に居るんだから!」
「地獄の釜の中までだってお供しますよ、ウサジさん!」
妖怪共もそんな調子である。本当に俺を地獄送りにする気かよ。
それから俺達は、ノエラが天秤棒を、クレールは平らな鋤を、ラシェルは三つ歯の鍬を担いでいて、俺はひのきのぼうしか持ってねえ訳だが。
「あいつら、あの格好で魔王を倒しに行くのかよ」
「本当は魔王と戦う気なんてないんじゃないの」
「あれで王様から旅立ちの資金貰ってるんだろ?」
「何だよそれ、税金泥棒じゃん」
そんな声も聞こえて来る……
返す言葉も無い俺は、黙って通り過ぎようとしたが。
「待って下さい! 僕達は何と言われても仕方ないけど、ウサジさんは違います、ウサジさんは本物の聖者なんです、魔王を倒すのはこのウサジさんです!」
「ひ、ひえっ!?」「す、すんませんでした!」
極太カモメ眉毛のノエラにそう迫られ、男共は慌てて逃げて行く。
「待って、僕、そんなつもりじゃ……!」
「やめなさいノエラさん。いけませんよ、人を驚かせては」
「ごめんなさい、ウサジさん……」
連中を追い掛けようとして俺に止められたノエラは、しょんぼりと肩を落とす。
「だけど僕、悔しいです……僕達の見た目がこうなのは、全部ラシェルと僕とクレールのせいなのに」
ノエラはお仕置きされた順に名前を並べる……いや待て、俺は誰もお仕置きなんてしてねえっての、こいつらが勝手に準メンバーだとか言い出して……ん? そうだ思い出した、俺、こいつらにちゃんとしたお仕置きをしようと思ってたんだわ。
お前達。
反省の態度を示すのに、そんなカラフルなジャージは無いでしょう。反省とは真心を持ってする物ですよ。
お前達には真心を見せる方法が解りますか? それは、ありのままの自分を見せる事です。お前達は顔に妙な絵を描いたりしていますが、それでは真心など伝わるはずもありません。
自分を偽る化粧を落としなさい。それからありのままの自分を、生まれたままの自分をさらけ出すのです。
さあ、ここにお前達の修行の為の服を用意しました。この、マイクロビキニに着替えなさい。そしてより生まれたままの状態に近いその姿で、私と共に、修行の旅を続けるのです。
俺は今から言う事を心の中で整理していた。しかしちょっと待て、肝心のあぶないみずぎが無いんだよな……そのへんの雑貨屋とかで売ってない? あぶないみずぎ。あるよね? ここは大きな国の首都だよねー?
そこへ。
「ウサジさん……! ウサジさぁぁん! 良かったここで会えて、ウサジさん!」
誰かが俺の名前を呼んでいる。しかし周りを見回しても誰が俺を呼んでいるのかが解らない。群集の中からだろうか……だけどありゃ男の声だな。
「ごめんなさい、ちょっと道を開けてください! 待って下さいウサジさん!」
そうして人混みを掻き分けて現れたのは背の低い男、いや少年……ってこいつ確か、勇者候補の金髪キザ野郎のパーティで荷物係をしていたジュノンじゃん。
「ジュノンくん!」
「どうしたの!? 傷だらけじゃない!」
「またデッカーさんにぶたれたんですか!?」
俺は興味は無かったのだが、三妖怪はジュノンに駆け寄る。そして確かにジュノンは傷だらけだった。
「あ……貴女はノエラさん!? クレールさんにラシェルさん!?」
一方ジュノンはジュノンで一瞬ノエラ達の変わり果てた姿に驚いたようだが、首を振って続ける。
「ヴェロニカに……ヴェロニカに魔物の軍勢が現れたんです!」