0076 ついにちんちん比べの時が来たのか!? はいはい解ってますよ違うんでしょ
ガスパル王は尻餅をつき目を丸くしていた。地面に手をついてしまうとは、覇王も形無しである。
槍を離してしまった近衛兵は青ざめていたが、この場はオイゲンが落ち着いて取り成した。
「槍はおもちゃではありません、マドレーヌ様……陛下もこの程度で尻餅をつくなど情けない、上手に受け取められなかったのですか。お前達、暫しの間下がれ」
将軍に促され、兵士達は執務室から退出して行く。三妖怪も顔を見合わせて、部屋を出る。後には国王親子と将軍と俺だけが残った。
「あの……マドレーヌ。すまん、確かにお前との約束は何一つ守れていなかったな……正直な所、授業参観とハイキングは無理なのだ、母さまについては父も努力はしている、しかし母さまがなかなか首を縦に振ってくれぬのだ」
王は膝をついたまま、娘の背中にそう語り掛ける。なんだ、偉い人なのにいい父ちゃんじゃないか。心配する事なかったな。
「……もういいのじゃ」
マドレーヌは立ち上がり、こちらを向いた……ヒエッ!? 鼻をぶつけたマドレーヌは顔を赤らめ大粒の涙を溜めているのだが、口をへの字に結んで必死に泣くのを堪えている……やべえ超面白い、吹き出してしまう!
「爺、ウサジ、急いで部屋に戻るのじゃ。妾は学校に行く」
◇◇◇
実際、マドレーヌは途中渡り廊下で二回転倒しながらも、大急ぎで部屋に戻って行った。そして学校行きの支度を整えると、さらに大急ぎで飛び出して来た。
「ギリギリ間に合うのじゃ」
マドレーヌは最後にそう言って、城門の方へと果敢に走り出して行く。
「ウサジ殿……貴様は」
しかしオイゲンがそう言い掛けた所に、マドレーヌは戻って来た。
「ウサジ! お前は妾を説得しに来た坊主なのじゃ、妾が戻るまでちゃんとそこに居るのじゃぞ!」
マドレーヌはそれだけ言って、また、城門の方へ駆けて行く。オイゲンはもう一度、深い溜息をついてから言う。
「貴様は本当に大したものだ。我らの誰もが為し得なかった事を、瞬く間にやり遂げてしまった」
「私は何もしてませんよ」
俺は後ろで踊りまくる三妖怪を目で制する。
「それで貴方の、私の次の仕事は何ですか? 神官長に御会いすれば良いのですか?」
「先程は時間が無かったが、陛下に確認して来よう。この辺りで暫し待たれよ」
オイゲンがそう言って立ち去ると、すぐに三妖怪が集まって来る。
「やったねウサジさん! これでヴェロニク様の信仰が王国じゅうで認められるよ!」
「もう王女様もウサジさんにメロメロじゃない? ウサジさん素敵ー!」
「ウサジさんの快進撃が続きますよ! 私達も盛り上げなくちゃ!」
「やめなさいお前達、ほら女官の皆さんが見てますよ」
イモジャージに不細工メイクのノエラ、クレール、ラシェルは俺のストライクゾーンの中には居ないが、まあこんな風に持ち上げられるのは悪い気はしないな。思った程酷い事にはならなくて良かった。
俺がそんな風に考えていた、その時。
「失礼……貴方がヴェロニクの使徒、ウサジ殿ですな?」
そこにやって来たのは、いかにも「しんかんのふく」という感じの装備を身に着けた、十数人の男共だった。
「ヴェロニクという名前は王国17柱にも、王国が把握しているどんな零細信仰にも記録がありません。貴方が信じ、広めようとしている、その、神がどんなものなのか……神官長の前で御説明いただけないでしょうか」
次の試練はこういう感じか……なるほど、ウンザリだ。