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0072 フヒヒヒ、見て下さい、全裸の俺を見て下さい! ああっ……! 快感……!

 リビングの扉を出た俺は歓声に迎えられた。オイゲン爺さんも女官達も喜んでいる。きっと皆、誰かにマドレーヌを学校に行かせるようにと命じられて、困惑していたのだろう。

 俺は女官達の案内で城の中の宿坊のような所に通された。周りは贅沢を尽くした城なのに、そこは質素な寝台だけがある部屋だった。


「ウサジ様に御満足いただけるよう、華美な装飾や寝台は片付けさせていただきました。あの……お気に召していただけましたでしょうか?」


 って、これわざわざ俺の為にグレードダウンした寝室かよ! いやまあ……別に寝室が豪華かどうかはどうでもいいよ、俺は毛布一枚敷いただけの床でも寝れるからな。だけど豪華なベッドがあるんならそれで寝たいし、わざわざ片付けたとか言われたらショックだよ。


 で……夜伽よとぎはしてくれるの? 俺、賓客ですよね? 居るんだよね? 夜伽よとぎ。女官達は皆おばさんだったが、まあまあ可愛いおばさんも居る、俺が夜伽よとぎをせい、と言ったらしてくれるのかしら?

 しかしそれを口に出せなかったシャイな俺は、一人静かに眠る。あーやっぱり言ってみれば良かったかなあ。中世の女官ってそういう仕事もこなしてたんじゃないのかなー。胸の大きいおばさんもいたなー。エッチしたかったなー。



   ◇◇◇



「どうしてウサジは、いつもエッチな事を考えてるの?」


 ヴェロニクの声に気づき、俺はベッドの上で上半身を起こす……あれ? ここは宿坊じゃなく高校生くらいの男の部屋だな。ブレザー制服姿のヴェロニクは、扉の所で通学鞄を抱えて立っている。

 これは部屋まで上がって来て起こしてくれる幼馴染シチュエーションだな……だけどヴェロニクは、ちょっと怒っている。


「どうしてって、もうバレてるからですよ。ヴェロニク様は私がいつもエッチな事を考えているのを知ってるでしょ」

「だ、だからって、むきになってわざとエッチな事を考えなくても……いいと思うの……」


 わざとじゃありません。俺はエッチな事を考えるのが好きなんです。いや、エッチな思考こそが俺の存在であり、本体であって、肉体はその器に過ぎないと言っても過言ではありません。


「違うもん。ウサジは私がウサジの考えてる事を盗み見するから、むきになってわざとエッチな事を考えてるんだもん」


 じゃあその盗み見を、


「解った! 私、やめる!」


 何をですか?


「やめるもん。私やめるんだから、これからはもう、頼まれたってウサジの心の中を覗いたりしないんだから!」


 何ですかその、もう起こしに来てあげないんだから! とか言ってる幼馴染の女の子風なね方は。


「これからはもう、口で言ってくれないと解らないんだから!」


 プイッと横を向くヴェロニク。

 うーん。俺は今まで考え事を覗かれるなんて恥ずかしいし気持ちが良くないと思っていた。それは相手が女神か女の子かなんて関係ない。人間誰しも自分の心なんて読まれたい訳がない、そう思っていた。

 だけどそれって、思考を読まれる事で相手にきらわれたり軽蔑けいべつされたり、だまされたり裏切うらぎられたりするのがいやだからなんだよな。

 ヴェロニクは俺のどぎついエロエロ思考を読もうが、卑怯で欲深い思考を読もうが、俺を嫌ったり軽蔑したりはしなかった。

 じゃあ別に見られてもいいじゃん。むしろ、それでも俺を好きでいてくれるなんて最高なのでは?


「な、何で黙って見てるのよ、ちゃんとしゃべってくれないと、解らないんだから」


 ええ。信じてますよヴェロニク様。俺、貴女の使徒になれて本当に良かった。


 ヴェロニクは、ほほを赤らめて、両手で抱えていたかばんに顔をうずめる……


「あっはっは、やっぱ見てるじゃんヴェロニク様! 俺の頭の中見てるー!」

「ずっ、ずるいわウサジ、そんなの不意討ちよ!」


 ベッドから降りて逃げる俺を、ヴェロニクが追い掛けて来て鞄でポムポム叩く。

 俺はニセ坊主だし信心なんてものにはトンと縁がなく、これからもないと思うが、ヴェロニクになら安心して裸の心をさらけ出せると思う。もしかして、こういうのも信心というのかね?


「いいんですヴェロニク様、これからもどうぞ俺の頭の中を御覧下さい、その方が絶対便利ですから、あははは」

「い、いやよ、もう頼まれたって見ないもん、ウサジ! 真面目に聞いて!」


 今日も窓の外は明るかった。きっと夜明けまでもう少しだ。

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作者みちなりが一番力を入れている作品です!
少女マリーと父の形見の帆船
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