0068 その時は順番に俺の46センチ砲をぶちこんで白目を剥くまで昇天させてやる
「ウサジくーん」
今日のヴェロニクは白いブラウスに黒のタイトスカート、インテリっぽい眼鏡をかけて出て来た。ここはまた教室か……だけどこれは女教師だな。
「ウサジくーん、御返事は?」
「はーい」
俺も制服を着せられているのだが、学ランの下は赤シャツだ。今時こんな奴居るわけねーだろ……ま、タイトスカートの若い美人教師も現実には居ない。
「うふふ。いい御返事ですねー」
「なーんでそんなにご機嫌なんですか、ヴェロニク先生」
ヴェロニクを両手で出席簿を抱きかかえてニコニコしている。
「先生、ウサジ君が約束を守ってくれた事がとっても嬉しいんです」
「当たり前ですよ、もしかして疑ってたんスか、俺の事」
俺がそう言ってプイッと教室の後ろの方を向くと、ヴェロニクは慌てて回り込んで来る。
「そ、そんな事ないわ! 私、ウサジ君の事信じてたもん! 違うのよ、あの胸の大きな子は力が強いでしょう? ウサジ君、抵抗を諦めちゃうんじゃないかって先生心配してたの!」
「あいつの鎧の紐を解いたの先生でしょ。びっくりしましたよ」
ヴェロニクは出席簿で慌てて顔を隠す。それから恐る恐る上目遣いで覗き込んで来る……だからこんな可愛い美人教師が居てたまるかっつーの。
「あの子、あの紐をわざとぎゅうぎゅうに結んでたのよ? ウサジを困らせようと思って」
「……そういうのって先生もわかるんですか?」
ヴェロニクは出席簿に目を落とし、それからまた俺を見る。
「あの子達もね、私を信じる事にしてくれたみたい。だから私、あの子達も直接見えるようになったの」
「じゃあ先生はベッドの下にノエラが、クローゼットにラシェルが隠れてるのを知ってたんですか」
「ええ。だからいざとなればあの子達がウサジを助けてくれるって事は知ってたの。ごめんね、その事を伝えてあげられなくて」
俺はまたプイッと教室の前の方に振り返る。ヴェロニクはまた慌てて回り込んで来る。
「あーあー。人が悪いなー先生も」
「だ、だからごめんなさいってば! でも……先生嬉しかった……ウサジが自分の事より私の事を心配してくれるなんて……」
ああ、あれね。だって心配じゃねーか。まーたヴェロニクがヤンデレ発症したら困るだろ、俺も、あの世界も。
ヴェロニクは真っ赤になって、また出席簿に顔を隠す。
「あの、気をつけます、気をつけますから……」
「じゃあこの話はおしまい! 先生。俺達は今、あのナントカ将軍ってのにどこかに連れ去られる所なんスけど。大丈夫なんですかね、これ」
しかし、この質問にはヴェロニクも肩を落とすしかないらしい。
「ごめんなさい……私に見えるのはウサジくんとあの女の子達、それから私を信じてくれる人達だけなの」
まあ、将軍達がヴェロニクを信じてるはずが無いし、俺達が連れて行かれる場所にもヴェロニク信者は居ない。解っているのはそれだけか。
◇◇◇
翌日。昨夜もそうだったが兵隊達は食事を普通に出してくれた。
「ウサジ……昨夜何かあったのか?」
将軍は朝食を摂る俺に単刀直入にそう聞いて来た。昨夜は俺と一緒に普通に飯を食っていたクレールが、今朝は面白フェイスになっていて、ノエラ、ラシェルと共に壁際に並んで俺が飯を食い終えるのを待っているのだ。
「パーティの問題ですので、お構いなく」
幸い将軍は俺がそう答えると、それ以上は聞いて来なくなった。まあ、取るに足りない問題なのだろう。
他の兵隊達は、敵意に近い目を俺に向けて来たようだが。
「畜生、なんでクレールさんまであんな恰好になってるんだ」
「昨夜何があったんだよ……」
「あの子達にあんな恰好させてるのって、どう考えてもあの坊主だろ!?」
実際、兵隊達がヒソヒソ話しているのが聞こえる。
それは誤解だ。俺はあんな恰好をしろなんて言った事もなければ、付き人になれとも、俺が飯を食う間は飯を食うなとも言っていない。実際三人の食事はちゃんとテーブルに用意されているのだ。
だけど俺は悪くないのだから、俺が弁明をする必要はない。第一男にどう思われようと俺はなーんともないからな。
「ごちそうさまでした」
俺はわざとらしく合掌して席を立つ。
「お皿を!」「片付けます!」
すると次の瞬間、ノエラとラシェルが光の速さで飛んで来る! 俺はひのきのぼうを構えて二人を止める!
「余計な事はしなくていいんです! とっとと座って食べなさい、お皿が片付かないと洗い物をする人が困るでしょう!」
「離せよラシェルっ! 概ね僕の方が掴んでるぞ!」「ノエラさんこそ! ウサジさんの口に入った部分は私が持ってますよ!」
しかし二人は俺を無視して手を伸ばし、俺が使ったフォークを奪い合っている。
俺は昨夜ヴェロニク先生から習った新しい「おはらい」の使い方を試してみる。
「しきぞくぜーくぅくーそくぜーしき」
俺は呪文を唱える。すると。
「きゃあああ!?」「なにこれちょっとやめて!!」
臙脂色の妖怪と紺色の妖怪は笑いながら地面をのたうち回る。
「くすぐったいですか? もし貴女がくすぐったいのなら、それは貴女に邪念があるからです。邪念を捨てて下さい。邪念を捨てれば全くくすぐったくなくなります。邪念が強ければ強いほど、くすぐったさも増しますからね。おや、クレールは大丈夫みたいですね」
俺はクレールに笑顔を向ける……しかしクレールも急にうずくまったと思うと地面に転がって笑い出す。
「ごめんなさい! 痩せ我慢してました許して下さいウサジさま! あは、あは、あはははは!」
「……貴女も邪念を捨てて下さい」
いや、えげつねえ魔法だな……これ、俺が誰かに掛けられたら完璧に笑い死ぬ自信があるわ。
不公平だな。自分は痴漢イメクラ通いまくりなのに、学校では鬼の生活指導員を演じていた俺の中学の時の担任みたいだ。俺は正直負い目を感じる。悲しい。
だけど仕方ない。平和とヴェロニクと俺の明るい未来のエッチの為だ。この三妖怪はヴェロニクをこの世界に復活させる事が出来たら人間に戻そうと思う。