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0060 うんことちんちんを連呼しながら全裸で客席にダイブしたら伝説になれるかな

「あの人達、私も芸人風になってる事はスルーでした……」


 意味もなく落ち込んでいるラシェルを引っ張って、俺達はラガーリンの使者達を念の為、彼等の村まで護衛した。


「本当にすみません。人間にも色んな奴が居るんです。こういう事が起こらないよう、今回の和平を色々な人間に伝えます」

「ワレらがうサジの町を襲っタのも本当……うサジは悪クない」


 ラガーリンの村とヴェロニカの町は、何かの事変があれば互いにその事を相手にも伝えるという事になった。さすがに援軍の約束まではまだ出来ないが、これは大きな前進だと思う。


 その帰り道。先程から元気の無かったノエラが話し掛けて来る。


「あの、ウサジ……さん、あの人達の事は何とかしなくていいの?」

「ラガーリン達は本来、森や砦を利用した守りの戦の方が得意なのだそうです。彼等も決してヤワでありませんよ、攻め戦を無理強いされたからもろかったんです」

「あ、いや、そうじゃなくて……あの、金髪で、髪の長い、勇者候補の……」


 あれ? もしかしてノエラもあいつの名前知らないの?


「王様や大公に言いつけてやると言ってた彼ですか? 申し訳ないですが私は彼を全く脅威に感じません。折角のノエラさんの勧誘を断ってお気の毒ですね、彼」

「えっ……? ど、どういう事?」

「優しいノエラさんが心配してあげる事ではありませんよ」

「御願い、僕にも解るように教えてウサジ……さん!」

「ああ、暇ならあそこを歩いてる行商人の所へ行って、揚げパンとミルクを買って来て下さい」


 ノエラは弾かれたように、森の中の道の遠くに微かに見える行商人目掛け疾走して行く。

 俺も別に確信がある訳ではないが、ジュノンが居ないあのパーティはライバルとしては何の脅威きょういにならないように思える。



   ◇◇◇



 町に戻った俺達は、町の地道な仕事を手伝う。

 援軍に来てくれたのは、あの金髪キザ野郎だけではなかった。檄文に応えた冒険者や傭兵、他の領主が派遣してくれた兵士、そして支援物資が、少しずつではあるがこの町に届き始めたのだ。


「ヴェロニカの町へようこそ皆さま! 宿場はこちらです、あっ、樽の荷下ろしですね、今やります!」


 ノエラとラシェルの付き人コンビは、応援の人々や支援物資の間を飛び回り、必要な案内や仕分けをてきぱきとこなして行く。


「ここは二人に任せて、私達は領主に報告に行こうか」


 クレールはそう言って、俺の手を、いや腕を取る……

 な、なにこの距離感? これが初めて会った時から警戒心MAX(マックス)で人をほぼバイキン扱いしていたクレールなのか?

 もしかして、俺の方からもクレールの手をぎゅっと握り返してもいいのか? それからグッと腰に手を回してもいいのか? そして顎の下をくいっと持ち上げて、情熱的なキッスをしていやらしく舌をからめ合体してメイクマイベイビーオゥオゥしていいのか?


 俺がそんな人と環境に優しい明るい未来に想いを馳せていると。あのじいさん神官が慌てた様子でこちらに駆けて来る。何だよ。まさか俺に用じゃないだろうな、今の俺、かなり忙しいんだけど。


「ウサジ様! ここでお会い出来て良かった、御忙しい所誠に申し訳ないのですが、なるべく早くに御願いしたい事がございまして!」



 じいさん神官は、教会にヴェロニクの教えを聞きたいという人々が押し寄せていると言う。


「ウサジ様を使徒としてつかわし、この世界を救おうとしておられるヴェロニク様についてより深く知りたいと! 御願い致しますウサジ様、彼等にヴェロニク様について伝道してはいただけませんか」


 で……でんどう? 電動マッサージ機なら知ってるけど、俺が持ってる訳ねーだろ。何だでんどうってマジか、ハハハ……いやハハハじゃねえな。

 そうか。俺はヴェロニクの僧侶だから、ヴェロニクの教えについて伝道でんどうしないといけないのか……


「ウサジ、教会へ行くのか? ヴェロニク様の教えを広める大事な機会だものな」

「えっ……ええ……」


 クレールに突然そう聞かれた俺は、思わずそう言ってうなずいてしまう。するとクレールはすぐに俺から手を離してしまった。


「解った。領主への報告は私に任せて、ウサジは教会に向かってくれ。私は後から教会に向かおう」


 ああ……クレールはそう言い残して一人でさっさと行ってしまった。仕方ない……じじいに着いて教会に行くか。



 それで。俺は今から坊主の真似事をしなくちゃならないのか。

 俺はじいさんに、普段はだいたいどんな生活をしているのかを。聞いてみた。


「朝は日の出の二時間前には起きます、身支度をして朝のお祈りをして、教会とその周りを掃き清めて、皆さんが集まったら朝の説法をして、それから戦災孤児などの為に朝食の支度を」

「あっ、もういいです、ありがとうございます」


 嘘だろ? まさか俺これからずっと、この田舎町で坊主の真似事をして暮らすのか? 毎日早起きして掃除とお経三昧の禁欲人生を送れと?


 ありえない……そんなんだったら毎日遅く起きてカップ麺食ってアニメ見てゲームして匿名掲示板でレスバトルして頭に来たらエロ動画(あさ)ってスッキリして寝る、日本のプー太郎生活の方がマシだ。


 それにヴェロニクはこの世に戻って来たばかり、いやまだ戻ってすらいないのに。教義も何もある訳が無い。一体何を広めろと言うのか。

 ヴェロニクの教義は、今俺がここで即興で作らないといけないのか?


「おお、ヴェロニクの使徒ウサジ様だ」「ウサジ様がいらっしゃったわ」

「この町を守って下さった方だ」「狂戦士達も降伏させたのだろう?」

「ママー、あの人が偉い人?」「シーッ、指を差したら失礼よ!」


 教会にはたくさんの市民や旅人が詰め掛けていた……非番の衛兵の姿もある。トホホ……勘弁してくれよ、どうすりゃいいんだ。

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作者みちなりが一番力を入れている作品です!
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[一言] 雲湖朕鎮…大事ですよね…
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