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0057 水着もタオルも禁止だ! 全裸で入るんだよ、全裸で! ヒャッハー!!

 今夜の夢の舞台は温泉宿のようである。

 そういえばこれ、別に毎日場所を変える必要は無いんじゃね? 或いは俺が飽きないようにと気を使ってくれているのだろうか。


 ヴェロニクはどこだ? 居ないな。また照れ倒しているのか? それともどこかで俺を監視してるのか?

 なかなかの高級旅館だな。部屋にも立派なひのき風呂がついている。入りたいなあ。だけどここもヴェロニクの居る夢の中だ、裸になるのは少々抵抗がある。


 もしかしてあれか? もう風呂の中で待っているのか?

 俺は念の為浴衣を着たまま、浴室に入ってみる……ああ、これ露天風呂でもあるのか! 浴室は中庭になっていて、風呂の周りは建物と塀で囲まれているが、真上には夕焼け空が見えている……こりゃあ大和魂が騒ぐなあ。


 湯船を満たしているのは白い濁り湯で、中は見えない。まさか湯船の中に隠れてないだろうな? どこかに鉄の斧は無いか? 投げ入れてみたら出て来るんじゃないか、湯船の中から、金の斧と銀の斧を持ったヴェロニクが……そんな冗談を考えているうちに、俺はいつの間にか浴衣を脱いでいた。やっぱ我慢出来んわ。


 それじゃ、掛け湯をして……おお、少し熱いなと思う程度のいい湯加減だ、夢の中だとは思えないな……ぬおっ……おおーっ! これは……極楽、極楽……!


「失礼致します」


 うおっと、おいでなすった!? やべえ! しかし、振り向くとヴェロニクは部屋の方に居て、きちんと和服を着て背筋を伸ばして正座している。今日は温泉の若女将風か。


「お湯加減は如何でしょうか」

「は、はい、完璧ですヴェロニク様……すみません勝手に入浴してしまって」

「失礼致しました。どうかごゆっくり、御寛おくつろぎ下さい」


 あれ。ヴェロニクはそう言って、静かに障子しょうじを閉めた……今日はそれだけなの?


「ねえ、ウサジ」


 そうかと思えば。ヴェロニクは障子の向こうから、いつもと同じ口調で声を掛けて来た。


「私が貴方に謝らなくてはならない事は、たくさんあるのだけれど……」

「私が本当はトラックにひかれていないって事ですか?」

「貴方を疑ってごめんなさい。ウサジが本当に、自分から好意を示して来た女の子にも手を出さないなんて、思わなかった……」


 本当の事を言うと、あれはさすがに少し引いたんです。ノエラがあんな肉食系だとは思わなかったわ。悪い意味で、普段とのギャップにやられたね。


「いいえ、あの子はウサジが好き過ぎて暴走してしまっただけよ。そんな風に思わないであげて……あの子には魔王を倒す勇者としての素質がある事も確かだから」


 えっそうなの? じゃあノエラはまだ男を知らないんですか?


「そうだけど、口に出さずに頭の中でそういう質問をするのはやめて……」


 それより、ヴェロニク様が私の頭の中を覗くのをやめて下さいよ。いやいいんですよ? 俺別にユニコーンじゃないし、全然気になんてしてないんですけどそういうの。でもそうなんですか。ええ。



 この夜は特別な事は何も無かった。俺は久々に、心行くまで日本旅館と露天風呂を楽しんだ。

 部屋で無理をして慣れない正座で待っていたヴェロニクは、俺が風呂から上がる頃には足がしびれて立ち上がれなくなっていた。俺はたたみをのたうち回るヴェロニクを追い掛け、足の裏を突っついて遊んだ。ヴェロニクも泣き笑いをしていた。

 それから、ヴェロニクが耳かきをしてくれると言うので素直に甘えさせて貰った。ソファで膝枕をしてやってもらったのだが、これは夢の中で寝落ちしてしまう程心地よかった。



   ◇◇◇



 ―――――――――


 クレール

 レベル47

 せんし

 HP454/454

 MP37/37


 ―――――――――


 ウサジ

 レベル29

 そうりょ

 HP425/267

 MP79/35


 ―――――――――


 ラシェル

 レベル35

 つきびと

 HP192/192

 MP264/264


 ―――――――――


 ノエラ

 レベル40

 つきびと

 HP290/290

 MP91/91


 ―――――――――


 今朝は何だか調子がいい。つーか俺のステータス、バグってない?

 いいのかな。それに俺、いつの間にかめちゃくちゃレベル上がってないか? まあ相変わらず魔法はろくに使えないし、ぬののふくとひのきのぼうしか装備していないが。


「おはようございますウサジさん!」

「ウサジさんおはようございます!」


 付き人共は、俺が食堂に現れた時には支度を済ませて整列していた。すぐにクレールも現れて、俺と二人で朝食を食べる。


「これからどうしましょう。ラガーリンの脅威は一段落したと思いますが」

「魔族の兵も何人か討伐出来た。これは大きな前進だと思う」

「正直、あれは気持ちのいい物ではありませんでしたね……」

「うん……」


 俺とクレールは、自白剤に侵食された魔族の兵士の顔を思い出していた。朝食のスープをすする手も思わず止まる。ラシェルはただ、にこにこしていたが。


「ウサジ。今まで私達のパーティでは短期的な目標、つまり毎日の行先などはノエラが決めていた。だけどノエラは見習いになってしまったので」


 ノエラはしょんぼりと肩を落としていた。ヴェロニクによれば、ノエラは恋をした事が無い上に極端に不器用だったのだそうだ。しかし紺のジャージにその眉毛は雰囲気まんま某巡査長だな。


「ごめんなさい。これからはクレールとウサジで目的地を決めて下さい」

「だけどリーダーは一人に決めた方がいい。ウサジ、私は見ての通り腕っぷし以外取りの無い人間だ、思慮しりょには自信が無い。だからこれからはウサジがパーティの行動を選択しては貰えないだろうか」

「しかし、私はこの世界には不案内ですよ」

「そんな事は無い。ウサジは私達の誰よりもこの世界に詳しい、いや、この世界を理解していると思える」


 クレールは真顔でそう言った。まあ……宿に泊まると体力が回復する事も知らなかった奴らよりはマシなのかもしれないけど。

 でもいいの? 本当に俺が決めても。じゃああれだ、温泉行こうか、温泉。勿論混浴で貸切に出来る所な。いいんだろ? 俺に決めさせてくれるって言ったよな?


 俺が今後のパーティの戦略を練っていると、町の衛兵が一人、泡を食った様子で食堂に飛び込んで来る。


「ウサジ様! 狂戦士の集団がまた、町の外に迫っております!」

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作者みちなりが一番力を入れている作品です!
少女マリーと父の形見の帆船
舞台は大航海時代風の架空世界
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是非是非見に来て下さい!
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