0046 ええ、百合の間に挟まる事には興味が無くもないですね、男の夢の一つかなと
昨夜は怪我人の手当てと破壊された城門の修理、色々な片付けなどで徹夜になってしまった。それで夜が明けてから宿に帰って寝た所に掃除の夢である。昼過ぎに起きた俺は、睡眠をとったにも関わらずくたくただった。
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ウサジ
レベル17
そうりょ
HP70/124
MP19/26
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寝る前よりMPが減ってるのは気のせいだろうか。結構レベル上がったな。
さて、腹が減った……そういや昨日の夜から何も食ってない。だけどあんな事件のすぐ後では、外食なんか出来るのかどうか。町の連中も後方の安全な村に避難したはず。
「ウサジ様、起きられましたか! 今食事をお持ちします!」
しかし俺が食堂へ降りて行くと、宿屋の親父はそう言って本当にすぐに食事を持って来てくれた。やれやれ、助かった。
そして食事を終えた俺が外に出てみると。
「こんにちは、ウサジ様!」「ウサジ様! 昨日はありがとうございました!」
町の連中がみんな俺に挨拶をして来る。これがあの辛気臭かった町か? 昨日あんな事があったのに、みんな避難とかしないのか?
「皆さん避難されなかったんですか!? 昨日攻め込んで来た魔物はとても危険でした、今のうちに別の安全な町に避難された方が……」
俺はそう言って辺りを見回す。そこに、昨日の神官のじいさんと、また別の身なりのいいじいさんがやって来る。
「ウサジ様! お目覚めになられましたか、昨日は本当に有難うございました! この町が今日を迎える事が出来ましたのは、全てウサジ様達のおかげです!」
「我々は皆でこの町を守り続ける事にしました。ここを魔物共に渡してしまえば、さらに後ろの町や村が襲われるだけですから……ついてはウサジ様、一つだけ、大変な御願いがあるのですが……」
身なりのいいじいさんはこの町の領主だと言う。そのじいさんが言うのには。
「この町に……ヴェロニク様の名前を!?」
「はい! このような小さな町がその名を乞うのはおこがましいかもしれません! しかしどうか御願い致します、ヴェロニク様の名前を頂く事で、私達は誇りを持って魔物に立ち向かい、この町を人類の反撃の拠点にして行きたいのです!」
ええええー? いいの? またあのアスタロウみたいな奴が来たらおっかないんじゃないの……? マジかよ……
だけど折角敵の将軍的な魔物を倒した後だ、人類側にもそんな希望があってもいいよな。
それに、何よりこれが、俺がこの世界にやって来た理由じゃないか。俺はヴェロニクをあの空間から救い、ヴェロニクにこの世界を救わせる為、ここに居るのだ。
「解りました。ヴェロニク様もきっとお喜びになると思います」
まあ正確には二番目の理由だけど。俺がここに居る一番の目的は、この自由な異世界でたくさん楽しいエッチをする事だ。
しかしそうなると俺、ノエラの勇者パーティを離れてこの町で暮らさないといけなくなるのかな? そんな事を考えていると、そのノエラがクレールと一緒に歩いているのが見えた。
「ねえ、そっちも一口だけ、ちょうだい?」
「ああ、いいぞ」
「ありがとう! ……わあ、木苺の香りが凄いね! おいしい!」
「ふふ、だけどほっぺたについたぞノエラ、ほら拭いてやる」
「あはは、くすぐったい、やめて」
お互いのアイスクリームを食べっこしながら、いちゃつく二人……何やってんだあいつら。昨夜の続きか? 昨日までの喧嘩は何だったんだ。
俺が手を振ると、二人は気づいてこちらに来た。ラシェルは二人の後ろから長い柄のついた日傘を差し掛けている。
「よく眠れた? ウサジ」
「私達も一時間前に起きたばかりだ。町の皆の事はこちらの領主殿から聞いた」
ノエラもクレールも木の椀に入ったアイスクリームを食べている……そんな物あるのかこの異世界。まあ魔法で冷やせるんだからあるか。
「それから、神官殿にも聞いたのだが……昨日、礼拝堂に魔物が侵入していたと」
ああその話。今日になって伝わってたのね。
「ええ。そんな事もあろうかと、ノエラさんが私をそこに配置してくれたのでしょう」
俺は昨日の事を思い出し、男前らしくクールに微笑みながらそう答えたが。
「違うんだ! 僕はただ、まだ武器や防具を買ってないウサジには安全な所に居て貰おうと思って、それで! あ……ごめんなさい、また言っちゃった……クレールと喧嘩していたのもこの事だったんだ」
ノエラは顔色を変えてそう言ったかと思うと、見る見るうちに萎れて行く。クレールはすぐにその肩に手を置いて言う。
「もうよせノエラ。魔物の軍勢の襲撃も、教会に魔物が紛れ込んでいた事も誰にも予想出来なかった。ノエラがウサジの事を思って言ったのは解っているし、結果はこの通りなんだからいいじゃないか」
「クレールは、あまり過保護にするのはウサジに対して失礼だって教えてくれたんだ。ウサジは立派な男だし、自分の面倒は自分で見れるって。だけど僕は意固地になって、ウサジは教会に隠れててって、そう言ったんだ」
二人の喧嘩の原因は、俺が一人でしめじソルジャーを倒しに行った事だったんだな。それで勝手に危ない事をして欲しくないノエラと、俺を一人前の男として扱うクレールの意見が対立してしまったのか。
何て罪作りな男なんだ俺は。この責任は二人に公平な数だけエッチをする事で取らせて貰おう。週のうち三日はノエラ、三日はクレールで。あとの一日は……まあ別の女の子とのエッチに使おう。
「皆さん、少し今後のお話をさせていただけませんか、立ち話も何ですから、私の館へお越し下さいませんか。まあ、田舎の小さな館ではございますが」
領主のじいさんは俺達を館へと案内して行く。
その途中。日傘を持ったラシェルが俺の背後に忍び寄って来て、囁いた。
「ウサジさん。違いますよ……二人の喧嘩の原因は、二人がお互い、相手がウサジさんの事を好きになってしまったと気づいた事です……ですからこの火種はまだまだ燻ってます! 一見仲良くなったように見えるお二人ですが、解りませんか? あのポーズは作り物、本当は二人の間にはいつバチバチの火花が飛び散ってもおかしくないんですよ!」
俺は思わずラシェルの面白眼鏡を見た。眼鏡は分厚く不気味に光っていたので、ラシェルがどんな目をして俺にそう言ってるのかは解らなかった。
「私に日傘は要りませんから、向こうの御二人に差してあげて下さい」
俺はとりあえず何とも思ってないふりをして、ひのきのぼうでラシェルを押し退けた。