表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/279

0039 まあ俺は、明るく楽しくエッチが出来たらそれでいいんだけど

 次に現れた蟹のモンスターは中々に厄介だった。殻が固く、俺のひのきのぼうではほとんどダメージを与えられないのだ。おまけに時間が経つと仲間を呼んで増えて行く。


「しかもこいつら食べても美味しくないんだ、御願い、ウサジは下がって身を守っていて!」


 ノエラが叫ぶ。さっきのノエラのファンブルも、後方に下がらない俺を守ろうとしてぶつかってしまったんだよなあ。

 彼女達が言ってる事は解るんだけど……俺はいつまでも女の子達に守られる弱い男で居たくない。だってそれじゃエッチ出来ねーじゃん。


「敵は私を狙ってます、上手く利用して!」

「だめだよウサジ下がって!」


 ノエラはそう言うが、俺はしたたかな動きで蟹共を誘導する……そして集まった蟹が三体、まとめてラシェルの火炎魔法の餌食になる。こいつら本当に不味いの? 割といい匂いがするんだけど。

 俺が一瞬そんな事を考えてしまった、その時。


「あっ……!」


 俺は既に倒されていた蟹の亡骸に足を引っ掛けてバランスを崩す……まずい、体高1m超の蟹型モンスターの大きなはさみが迫る!


「ウサジ!」


 この声はクレール、そう思う間もなくムオッ!? 柔らかく温かい物に視界を塞がれた俺は地面を転げ回る!?


―― ザクッ! ゴボボボ……!


 俺に襲い掛かろうとしていた蟹が斬られて泡を吹く音がする……


―― ゴォォォ!


 それからまた炎魔法の音と、ラシェルの「片付きましたよ」の声が。だけど俺は地面に仰向けに倒れていて、顔には柔らかくて温かい物が覆い被さっていて周りの様子が全く解らない。


「怪我は無いか」


 柔らかい物が離れて行く……ああこれはやはりクレールの推定Fカップのぼいんぼいんだった……クレールさん、今日もうっかり胸甲をつけ忘れたの?


「ウサジのおかげで戦い易かったぞ、だけど蟹共が自分を狙ってるとどうして解ったんだ?」


 クレールは俺の上で四つん這いになったままそう言った。彼女の桃色がかった長く艶やかな銀髪が、カーテンのように俺の顔の周りを覆っている……世界には俺と、微笑みを浮かべるクレールしか居ない……


「え、ええ、奴等も装甲の薄い私を、一番の餌だと思ったのでしょう」

「ウサジは勇敢だな……だけどウサジに万一の事があったら困る。あまり前に出ず、私の後ろに居てもらう訳には行かないだろうか……?」


 クレールは膝を立てているので身体的にコンタクトしている所はもう無いのだが、こうも完璧なプロポーションのクレールにこうも完璧にマウントされてしまっては、俺の男のプライドも形無しというものだ。いいぜベイベー好きにしな。


「クレール! そ、そんな言い方はウサジに失礼だよ! ウサジはか弱い者なんかじゃない!」


 そこへ飛んで来て涙声で叫んだのはノエラ……うーん。俺はノエラも好きだけど今はちょっと邪魔しないで欲しいなー。もう少しの間クレールと二人きりにしてくれない?


「私はそんな事は言ってない。だけどウサジの防具は今もぬののふくだけなのだ」

「それはッ……! パーティの資金繰りが上手く出来てない僕のせいだ……」


 クレールが立ち上がってしまう……あーあ……もう暫くこうしていたかった。クレールは俺の手を引っ張り、立ち上がらせてくれた。


「ウサジが防具を整えるまでの間、私はウサジをガードしようと思う……いいだろう? ノエラ」


 クレールは謎めいた笑みを浮かべてそう言った。

 ノエラは何かを言おうとして口を開いては閉じ、腕を上げては下げ……逡巡しゅんじゅんしていたが、やがて少し肩を落として答えた。


「わかった……ウサジのガードはクレールに任せるよ」



 旅は再開された。クレールはずっと俺の近くに居た。

 俺は最初、機嫌の悪いクレールが近くに居る事に緊張していたが。


「ウサジは短い間に本当に強くなったな、その様子だと私もうかうかしていられない、凄いな、ウサジは」


 クレールの機嫌は良くなっていた。むしろ今までで一番いい。


 だけどクレールの機嫌が良くなるのと引き換えに、ノエラがますます静かになってしまった。彼女はラシェルに代わり先頭に立ち、荒れた道を警戒しながら黙って進んで行く。


 俺は少し反省していた。勇者ノエラが下がって身を守れと言ったのだから、パーティの仲間キャラクターである俺はそうするべきだったのだ。


 パーティのリーダーって、口で言う程簡単じゃないよな……ごめんな、ノエラ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
作者みちなりが一番力を入れている作品です!
少女マリーと父の形見の帆船
舞台は大航海時代風の架空世界
不遇スタートから始まる、貧しさに負けず頑張る女の子の大冒険ファンタジー活劇サクセスストーリー!
是非是非見に来て下さい!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ