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0037 乳首を吸ったのか? 乳首を吸ったんだろう、何か出ると思って、ああん?

 翌朝。俺が一人で泊まった宿を出ると。


「おはようございます……ウサジさん……本当に申し訳ありませんでした……」


 上下臙脂(えんじ)色のくそダサいジャージのような服を着たラシェルが、宿の前で土下座をしていた。仏頂面のノエラとクレールがその後ろに立っている。


「ラシェルはウサジに何度も睡眠薬を飲ませていたようだ。昨日も飲ませようとしていた。ラシェルが急に倒れたのは見ただろう? あれを飲ませていたのだ」


 一体どんな劇薬だよ! コンマ3秒で熟睡してたぞ!


「宿場町の納屋に眠らせたウサジを連れ込んだのもラシェルだよ。ウサジさんは眠らされていたので、ラシェルには何もしてないって」


 良かった……俺は何もしてなかったのか……

 いや良くなかった……じゃあ俺はまだ素人童貞なのか……


「それで、これからの事なんだけど。僕達は話し合ってウサジに決めてもらう事にしたんだ」

「ラシェルは命の危険は無かったと言っているが、あんなものを黙って飲ませていた女をこれからも仲間と呼べるか。ウサジが決めてくれ」


 決めろって……そんなの決めるも何も、当たり前じゃないか。こんな判断を求められて躊躇(ちゅうちょ)する奴なんて、この世に居るのか?


「私が決めていいのなら、これからも仲間でいて下さいラシェルさん」

「ちょっと、そんな簡単に決めていいの!? どうしてあんな危険な薬を飲ませたのかも聞かないの?」

「ウサジならそう言うような気はしていた、だけどラシェルがお前に何をしようとしていたのか、知りたくはないのか?」


 いや、それは知ってるからいいんだ。

 それにね。自分の身体に興味津々のむっつりスケベな金髪の清純派美少女を、黙って手放す男がどこに居るの? 私はむしろそれを君達に聞きたい、何なら解散総選挙をして広く民意に問いたい。今はそういう話をする雰囲気ではないようだから、言わないけど。


「さあ、そんな所にうずくまるのはやめて、立ち上がって下さい。町の人に見られたら恥ずかしいですから」


 俺は口でそう言うだけじゃなく、近づいてラシェルの手を取り、優しく引っ張る。やべえ、俺格好良すぎない?


「ありがとうございます、ウサジさん……」



 ラシェルの髪は昔の女学生のようなガチガチの三つ編みにされていた。そのくらいなら全く、俺の性的好奇心をさまたげるものにはならないのだが。

 ロリータらしい可愛い丸眼鏡は芸人のようなピンク色の極太フレームを持った瓶底メガネに換えられていた。

 そしてヘアピンでパツパツに留められて丸出しになった額には、大きな丸い眉毛が描かれてしまっている。

 上下臙脂(えんじ)色の芋ジャージの胸部分には、白い字で大きく「付き人」と刺繍ししゅうされている。刺繍ししゅうは背中にもあった。この世界の字なんだけど何故か俺にも読めた。



 ヒゲに鉢巻き、腹巻にステテコ姿の、俺の脳内に住む小さなおっさん妖精が、苦笑いをして首を振った。

 あの可憐かれんなロリータはどこへ行ったんだい? これは体当たり系の女芸人じゃないか。俺のストライクゾーンからボール三個分外れている。


「ウサジは許してくれたけど、しばらくの間ラシェルはパーティの準メンバー扱いにさせてもらうから。期間は僕とクレールがもういいって言うまで」

「そして、この件についての追求はこれきり、終わりにするという事でいいだろうか? 私達も二度と言わないし、ラシェルからも何も言わない」


 えぇ……俺としてはラシェルに聞きたいんだけど、ねちねちと問い詰めたいんだけど、俺の身体のどこに興味があってどんな事をしたのか、口に出して言わせてやりたいんだけど……駄目なの? 駄目? 駄目かあ……


 とにかく今は一秒でも早くこの空気を変えたいな。ノエラもクレールも怖い顔をしているし、ラシェルはずっと泣いている。


「さ、そうと決まったら行きましょう、今日も世界を救う為、元気を出して働きましょう! あっ、そうだ、武器や防具を揃えるんでしたよね、この町で」

「あの……その事なんだけど、ウサジ……」


 俺がそう言うと、ノエラは眉をハの字にしてうつむく。どうした? そう言えばノエラは「勇者っぽい剣」を取り戻したんじゃないのか? まだ普通の剣を持ってるみたいだけど。


「この魔法の付き人ジャージ、結構高かったんだ。その魔法の芸人メガネも」

「次の機会には必ずウサジの防具を買う、だからもうしばらく、戦闘時は私達の後ろに居てくれないか、頼む」


 そこに金掛けるの!?


「あっ、あのっ、この魔法の付き人ジャージを着ると、すばやさが1.5倍になるんです! これからは皆さんの為に1.5倍の速さでパンとか牛乳とか買って来ますから、どうかこれからもパーティの片隅に置いて下さい、御願いします!」


 ラシェルはそう言って、もう一度土下座をした。

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作者みちなりが一番力を入れている作品です!
少女マリーと父の形見の帆船
舞台は大航海時代風の架空世界
不遇スタートから始まる、貧しさに負けず頑張る女の子の大冒険ファンタジー活劇サクセスストーリー!
是非是非見に来て下さい!
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