0033 えちえちなダークエルフのお姉さんを御願いします。え……居ないの!?
途中いくつかの村や宿場を素通りし、途中で魔物に会う事も無いまま、俺達は大きな城壁都市へと辿りついた。
「さあさあそろそろ次のステージが始まるよ! 美女の生着替えがたった銀貨1枚で覗けるよ、旅に疲れたそこの貴方! まずはここで一休みしないか!」
「うちは話上手な優しい良い娘が揃ってるよ、お代は銀貨5枚の完全パック製だ、安心して飲める店だよ!」
「お兄さん、お触りパブはどうだい? 大きな乳からうんと大きな乳まで、色々揃えているわよー?」
城門をくぐると、そこはいきなり歓楽街になっていた。この町は遠くからやって来た旅人を入り口でスッテンテンにする気らしい。スッテンテンの意味が解らない若い子は太宰治を読むかお父さんに聞いてね。
ああ……本当ならあんな店にも行きたかったな……まつたけサージェントを売って得た金はまだ半分残っている。何事も無ければ、どうにかしてパーティを抜け出して行ってたと思う。触れない美少女より触れるおっぱいパブだよな。
異世界風俗……考えてみれば何と心躍る響きだろう。エルフとか居るのかなやっぱり? せっかく異世界に来たんだぜ、本物のエルフのおっぱいに挟まれてみてえなあ。いいなあ異世界風俗。何が出て来るか見てみたいじゃないか。ははは!
駄目だ。出来もしない事を考えても仕方ない。
昨夜俺が寝られなかったのは、ヴェロニクを恐れてというのもある。
今の俺に出来るのは、次にヴェロニクに会うまでに出来る限り多くの善行を積む事ぐらいである。このお金はヴェロニクの僧侶としての慈善事業に使おう。何とか……ヴェロニクに許して貰う為に……
それかもうヤケクソで、この金全部異世界風俗に注ぎ込んでやろうかなあ。
やっぱそうしよっかな。
決めた。パーティを抜け出して異世界風俗に行こっと。
「ノエラさん。私はこの町でもヴェロニク様の名を広めたいのですが……少しの間一人にさせてはいただけないでしょうか」
俺はごく真面目な聖職者の仮面に己の本能を隠し、ノエラにそう尋ねた。しかしノエラは慌てて道を塞ぐように俺の正面に回って来る。
「待ってウサジ! そういう事なら今度こそ僕にも協力させて! 僕もヴェロニク様の教えを広めたいから!」
しかし。それを聞いたクレールは俯き気味に言った。
「ノエラ。仲間を想う気持ちは解るけれど、ヴェロニクの事を何も知らないお前にそう言われても、ウサジも困惑するのではないのか」
ノエラの動きが固まる……
いや待ってよ二人とも……なんか暗い、暗くて真面目過ぎるよ! もっと明るく元気出して行こうよ、俺はちんこ出して行くから、もう少し下ネタ多めで行こうよ! 俺は心ではそう思ったが、口には出せなかった。
「待って下さい、ウサジさん」
そこにまたラシェルがやって来て、俺の腕をそっと掴んで上目遣いで俺を見る……ああ、やっぱりこの子は女の子らしい女の子だなあ。可愛い……
「大きな町では、布教をするのにも許可が要るんです。私は神聖魔法も少し使いますから……あの、もし宜しければ、そういうギルドに御案内しますよ」
こうしてパーティは一旦二手に分かれて行動する事になった。ノエラとクレールは冒険者ギルドと質屋を回って来るそうだ。
質屋にはノエラがやむを得ず預けた、「勇者っぽい剣」という武器があるらしい。金髪キザ野郎が持っていたのと同じ型の製品だという。
「あの二人、大丈夫でしょうか……」
「二人きりになれば、二人で話すしかなくなりますから。その方がいいんです」
なるほど、さすがは賢者だ。二人きりになれば、二人で話すしかない。ノエラとクレールが仲直り出来ればいいな。
だけど、俺もラシェルと話すしかなくなるのか。
「あ、あの、ラシェルさん……」
俺は恐る恐る声を掛けるが、思わず声が裏返ってしまった。
「……はい」
「昨夜……私はあの宿場町の外れの、納屋の藁の上に居ました……あの場所にはその……ラシェル……さんもいらっしゃいましたよね……」
ラシェルは俺の横に並び、俯き加減で、前方の地面をぼんやりと見つめながら歩いていた。俺は必死でそちらに顔を向けたつもりだったが、彼女はこちらを見てくれない。
この事件の一番の問題は、俺の方に何一つ記憶が残っていないという事だ。俺は自分がどんな状況で、彼女にどんな事をしてしまったのか解らないのだ。
聞かなきゃ。やっぱり、ちゃんと聞かなきゃ……
「こんな事を言うのは大変恥ずかしく、誠に申し訳ないのですが……どうか教えて下さいラシェルさん、さ、昨夜の私は、貴女に何をしてしまったのでしょう!? 私、本当に記憶が無いのです!」
俺は一体どんな羨ましい事をラシェルにしたのか? いくら自分がした事だといわれても、記憶が無いのでは他人も同然ではないか! 畜生俺め許せねえ、俺がまだクンクンもハフハフも痛いのは最初だけやでぇもこれでお嬢ちゃんも大人の女やなぁもしていないラシェルに何て事を! ちくしょう涙が出る……どこかの知らない俺が……ラシェルを寝取りやがった……
「ウサジさん……大丈夫です。大丈夫ですから……その話はまた後で」
「御願いします、教えて下さいラシェルさん!」
「ここですよ」
俺達はいつの間にか賑やかな商店街を離れ、町の山の手の、大きな家が立ち並ぶ区画に来ていた。ラシェルはその中の一軒の、綺麗な庭のある屋敷を差している。
「大きな屋敷ですね……これがギルドですか?」
「さ、お入り下さい」
ラシェルはまるで自分の家であるかのように、庭の門を開け、俺を中へと手招きする。