元の暮らし
右左次というのは俺が両親から貰った本名だ。どういうつもりでつけた名前なのかは聞く事が出来なかったが。
俺は短い夢を見た。使い古しのハードディスクが宇宙船のように空を飛んで、俺を迎えに来た。俺は天空から垂れ下がった縄梯子を登り、宇宙船の乗降口のようなSATA端子部からそこに乗り込んだ。
海のように広い大河と、緑豊かな浮遊大陸を離れ、虹色のオーロラが輝く宇宙空間のような世界を、ハードディスクの宇宙船は飛んだ……
そして俺は国道沿いのコンビニからほんの20メートル入った、児童公園脇の歩道の植え込みで目を覚ました。
「あ……ああ……」
俺は何故ここに? 俺は確か……要らなくなったハードディスクに穴を開けて処分しようとしたんだけど、電動ドリルのバッテリーが切れてたから、充電してる間に近くのコンビニへストロングゼロとからあげくんを買いに行って……
俺はその途中で、ダンプカーに撥ねられた、いや、撥ねられそうになったんだ。
「おおおい、おいっ!?」
誰かが駆け寄って来る。あれは妖精だろうか。
顔はヒゲ面、頭には鉢巻き、腹には腹巻、下半身はステテコ姿の小柄なおっさん……今時こんな奴が現実に居るのか、いや居ない、こんなのは妖精に違いない。そう思えるおっさんが、駆け寄って来て俺の上半身を起こす。
「大丈夫か兄ちゃん!? 怪我はねえのか!?」
俺は自分の身体を見る。いや、怪我はないな……俺は実際にはダンプカーには撥ねられていない。記憶は曖昧だが、そう思う。
「さーせん飛び出して、俺は大丈夫っす、怪我はないです」
「いやいやぶつかったからこの植え込みに飛ばされたんだ、命があって良かったけど、とにかく乗ってくれ、近くの救急病院まで連れてくから!」
おっさんは心底心配そうな顔で俺を見てそう言うが、俺は膝を擦りむいただけで、救急病院に連れて行かれるような怪我はしてない。
それにこのおっさんも何かおかしいだろ、今時ラクダシャツにステテコ姿でダンプカーを運転してる奴なんか居るか?
「ほら、立てるか、さあこっちへ」
「あの、いいです、いいですから!」
俺はおっさんの手を振り解き、立ち上がる。
「ンとにサーセンした飛び出して! だけど俺見ての通り怪我はないですし、いきなり道に飛び出した俺が100%悪いんです、ンとにごめんなさい!」
「ああっ、待ちなって!」
ヒゲ面で頭に鉢巻き腹には腹巻き、下半身はステテコ姿の小柄なおっさんの手を振り切り、俺は住宅街の路地を駆け抜ける。
……
本当に申し訳ねえ。
ここで何があったのか、まったく覚えてねえんだけど。俺、もしかして自分から道に飛び出したのかな……衝動的に。
あのダンプカーに跳ねられて、それで終わりにしようと思って。
俺が植え込みの中で眠っていたのは、長くても数秒ってところだろう。
その間に俺は、ハードディスクに乗って空を飛ぶ短い夢を見たのだが。
何故かなあ。俺、その前に数か月に渡る旅をしていたような気もする。どこかの世界で、何かを成し遂げたような気がする。それから……名残りを惜しむ人々と別れ、こっちの世界に戻って来た。そんな気がするんだ。
「プッ……ふ、ふふ」
バッカだなあ。何考えてんだ俺。そんな訳ねえだろ。
俺はどこへ行っても役に立たねえ、つまらない男だ。
……
だけどどうしても、俺は短い夢の中で何かを成し遂げたような気がしてならない。我ながら病的な錯覚だと思う。
だけど……
俺は空を見上げる。今夜はよく晴れてはいたが、街灯や電飾の多い都会の空では星はほとんど見えない。変だなあ。俺、ついこないだまで星で一杯の空の下に居たような気がする。
俺の胸に、その幻の星空が語り掛けて来るんだ。
こんな俺でも、どこかで誰かに必要とされていたような気がするんだ。
やべーな俺、モテないし友達は居ないし仕事はクビになるし、現実逃避がそこまで来ちゃったか。
まあ、いいじゃないか。錯覚でも現実逃避でもさ。
もう少し頑張ってみようと思えるならさ。妄想ってのも悪くない。
ストゼロとからあげくんは買ったんだっけ? いや、まだだな。さっきの道に戻ってコンビニに行き、買い物を済ませよう。
これからもこの世界の片隅で、不器用ながらも生きて行こう。そんな誓いを新たにして、俺は一人、夜道を歩いて行く。
◇◇◇ おわり ◇◇◇
「ウサジぃぃー!!」
児童公園のある通りに戻った瞬間。俺は若い娘のような甲高く黄色い声に名前を呼ばれ、驚いて跳ね上がる。
振り返った俺が見たのは、どこかの学校のブレザー制服を着た黒髪ショートカットの女の子だった。この暗がりでほんの一瞬見えただけでも解るくらい、めちゃくちゃ可愛い子だ、そんな子がいきなり俺にタックルをかまして来た!
「うわああ!?」
地面に押し倒された俺に、そのショートカットの女の子は強く抱き着いて嗚咽を上げる……!?
「ウサジぃぃ! ウサジさん、ウサジさぁぁん! 本当にウサジだ、ウサジさんだ、そうでしょおお!?」
「あ、あの……人違いでは……」
俺は思わずそう答えていた。こんな美少女に泣きながら抱き着かれるのは嬉しくない訳がないが、俺にはそんな事をされる心当たりが全くない。
「ウソだ、だってウサジはウサジさんなんだ、ウサジさぁぁん!!」
「あっ、あのっ、俺は確かに右左次だけど……」
そこへ。
「ウーサージーぃぃぃぃ!!」
別の方向から同じ制服を着たプラチナブロンドの欧米人らしい背の高い女の子が突進して来る!? そしてやはり激しくタックルして来る!
「ぐわげほおっ!?」
「ウサジぃぃぃぃい!!」
この子も信じられないくらいの美少女だ、テレビや雑誌は勿論、ネットでも見た事のないような……だけど、だけどどこかで見た事があるような……?
「ウサジさん……ウサジさぁぁぁん!!」
さらに児童公園のゲートの方からまた一人、同じ制服を着た女の子が泣きながら現れる、濃い目の金髪のこの子は眼鏡を掛けていて、日欧ハーフくらいの顔立ちをしたこれも大変な美少女だ。この子はタックルはして来ず、泣きながら駆け寄って来て俺の両手を掴んで振り回す。
俺は……俺はこの子を知っている!?
「あ……貴女はラシェル!?」
「はい! ラシェルですウサジさん!」
そうだ、これはラシェルだ! おしとやかで頭が良くて優しくて、いつも仲間の事を考えていた賢者ラシェルだ! じゃあこっちは……
「貴女はまさかクレール!?」
「そうよ! 何だと思ったのよ!」
向こうでは薄紫色の銀髪だったクレールの長いストレートな髪は、この世界でも見られない事はないプラチナブロンドに変わっていた。
と言う事は、この黒髪の美少女は、つまり……
「貴女はノエラですか!?」
「そうですウサジさん! 僕だよ! ノエラだよ!」
青髪のノエラは黒髪のノエラになっていた! これならこっちの世界にも馴染むよな……
「ウサジぃぃ!」「ウサジー!!」「ウサジさぁぁん!」
三人の美少女は、三方向から俺に抱き着いてわんわん泣きじゃくる……ああ、あ……俺の頭の中に異世界での冒険と放浪の日々の光景が蘇って来た……!
そうだ、俺は本当に異世界を旅して来たんだ! だけど最後に命を捨ててでもやらなきゃいけない事に気づいて……ちょっと待て!
「お前達、どうやってここへ!?」
「ヴェロニク様に御願いしたんだ! ヴェロニク様が、世界を救ったご褒美に、何でも一つだけ願いを叶えてあげるって言ったから!」
「アタシ達三人とも、ウサジに会いたいって御願いしたの! だけどウサジは元の世界に帰ってしまったから、簡単には会えないんだって……!」
「だけどどうしてもウサジさんに会いたくて、私達次元の狭間を何カ月も旅して来たんです、ウサジさんの主観でどれだけ時間が経ってるか解りませんが」
嘘だろ……? 俺に、会いたくて?
「それはその……何故そこまでして……」
「ウサジが一人で遠くへ行っちゃったからに決まってるでしょう!? ウサジさん最後は本当に酷かった、僕みんなに怒られたよ、どうしてウサジを引き摺ってでも連れて来なかったのかって!」
「ウサジは亡者になった人々まで一人残らず救ったんだって、だけどその為に私達の世界では死んじゃったんだって、ヴェロニク様だって泣いてたんだからね!?」
「でもいいんです、こうしてまた会えたんだから、そうですよねノエラさん、クレールさん」
「勿論だよ! 僕達はパーティだもん、今度はウサジの世界で一緒に冒険しようよ、僕達次元の狭間を旅する間にもっと強くなったんだ!」
「そうよ、どんな化け物だって倒してみせるんだから、これからも一緒に戦おう、ねっウサジ!」
「……待ってくれ」
俺は……力なく肩を落とし、三人の手を一つずつ払いのける。
「ここはお前達の世界とは違うんだよ……怪物なんか居ない。そして、この世界の俺はそうりょでも何でもない、むしょくの男なんだ。レベルは1のままだし、魔法だって使えない。そして……」
俺に手を離された三人は神妙な顔で俺を見ていた。俺は三人を順番に見渡してから……重い口を開く。
「俺は甲斐性無しの貧乏人で、とてもお前らみたいな若い娘を三人も養ってなんてやれない。すまん。折角会いに来てくれたのにな……帰ってくれ、お前達の世界に。見ての通り俺は俺で、この世界でちゃんと生きてはいるからさ。ヴェロニク様にも、そう伝えて欲しい」
情けねえ。向こうに居た時は、聖者ウサジなんて呼ばれて調子に乗っていた俺。だけどこの世界の俺は自分一人食わすのが精一杯のフリーターだ、こんな美少女達に惚れてもらえるような要素は何一つない。
世界を救ったお礼に、っていうのは解らなくもないが。それだけで俺の側に居続けるのは、お前らだってキツいって。
「ウサジさん。これ、ヴェロニク様からのお手紙です」
そこに。ノエラは真顔で、襷掛けにした鞄の中から取り出した封筒のような物を、俺に突き出す。
◇◇◇
私の大好きなウサジ君へ。
この手紙を読んでいるという事は、あの子達は次元の狭間を突破して貴方の世界まで辿り着いたという事だと思います。
正直、こんな事はしたくなかったです。
だけどこの子達、私が何でも一つだけ願いを叶えてあげるって言ってるのに、ウサジに会いたいしか言わないのよ。永遠の命でも世界の半分でも、何でもあげるって言ってるのに。
特にこのショートカットのゆうしゃの子。私、この子だけは駄目なの。この子は私と同類の臭いがするから。この子をまた貴方に近づけるのは、嫌で嫌で仕方がありません。
私、貴方との約束を守りました。
貴方が魔王との戦いには直接手を出すなって言うから、一生懸命我慢しました。
だけどそれは本当に苦しかったです。貴方が死にもの狂いで戦っているのに、私は歌を歌い続けなくてはならなかった。泣きたいのに、泣く事も許されない。
なのに貴方は約束を破りました。
私が救えなかった人達を、その人達を閉じ込めていた人達を、残らず救って。貴方自身は、消えてしまいました。
うそつき。必ず戻って来るって言ったのに。
だけど私の方にも、貴方に謝らなくてはならない事があります。
前に言ったよね。私、もうウサジの心を覗いたりしないって。ごめんなさい。あれは、うそです。
ウサジの事を見ていないふりをしていたのも。全部うそです。本当は私、ずっとウサジの事を見てました。ウサジの心をずっと覗いてました。
私はウサジが大好き。ウサジが居ない時間なんて想像出来ない。ウサジも私の事が好きで、私達は相思相愛なの。
だけどウサジはちょっとだけ浮気者みたいな所があるの。他の女の子の事を気にしたり、あれこれ企んだり。私、胸が大きくなくてごめんね。それだけはウサジの望み通りにしてあげられないけど、他の事なら私、どんな事でもするから。ウサジの望み通りの女神になるから。
私達、絶対離れられないの。なのにウサジは一人で遠くに行ってしまいました。そして私にはそこへ、ウサジが今居る世界へ行く手段がありません。ひどいね。こんな事ってないよね。
貴方がこれを読んでいる今も。私は貴方の事をずっと見ています。24時間、365日、貴方が起きている時も寝ている間も、ずっとね!
ウサジが元の世界での生活に不安を抱えているという事は、貴方の心の奥を覗いて知りました。
その子達はウサジに会いたいと言うし、私はウサジの元には行けないし。これは本当に苦渋の選択でした。貴方がこれを読んでいる今も、私の気持ちは後悔で一杯だと思います。
私はその子達を、私の天使として派遣しました。その子達はこちらの世界の力をそのまま持って行きました。三人もそう望んでいるようだから、せいぜい扱き使ってあげてね。
その子達は天使なので、そちらの世界では年をとりません。嬉しい? ウサジ。
これを書いている今も、私は嫉妬で狂いそうです。その子達がこれからウサジに何をするのかと思うと苦しいです。憎しみさえ感じます。
三人には天使としての任務も課しました。ウサジがそちらの世界で天寿を迎えたら、私の所まで連れて帰るように言ってあります。
そうよ。ウサジは私の元に戻って来るの。そしてずっとずっと、ずっと私と一緒に暮らすの! 今度は魔王退治なんかしなくていいの、昼も夜も、千年も百万年も、ずっと一緒に暮らすの! 待ち遠しいわ。ウサジは私の事が好きで、私もウサジの事が好きなの、私達、二度と離れないのよ。
だけどその前に、私は、貴方がその三人と暮らす何十年かを見つめなくてはならない。今の私の気持ち、想像出来ますか? 悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔
ゥ
ゥウ ササ
ウサジくん、魔王を倒したら私の事どうするって思ってたんだっけ? 私、その時は本当にどきどきしちゃった! 確か、二日や三日は離さないって、心の中で言ってたよね?
だけど私、怖いの。だってこれから毎日お預けを食わされるのよ私、その間、ずっと貴方とあの子達が仲良くしてるのを見つめ続けなくてはならないのよ。
そんなの見なければいいと思うでしょ? ごめんなさい。私もそう思うんだけれど、ウサジから目を離すのはもっと嫌なの。
私、自分が怖い。何十年もお預けを食わされた私が、貴方に再会した時。私、どうなっちゃうんだろう。私の方こそ、その時はウサジの事、二年や三年の間、一瞬たりとも離さないと思う。
貴方のそちらの世界での寿命は、貴方がそちらに帰った日から数えて、59年と7カ月と21日よ。その 間 は 悔し 悔 悔しいけど、貴方を、その三人に委ねます。
本当の事を言うと ノ ノ エ ラ だけ は ど うし ても ても
女兼 イヤ 嫌
だけど、我慢します。私はウサジの為なら何でも我慢 できる 女神だから。
再会の日を心待ちにしつつ、貴方の事をずっとずっと見ています。
今この瞬間も。ウサジ大好き。
貴方だけのヴェロニク
◇◇◇
手紙を読む間に、俺の脳裏にはおぼろげだった記憶が全て鮮明に蘇っていた。
「そういう訳で、僕達、ウサジさんの為の天使として来たんです!」
「アタシ達の世界を救ってくれたウサジさんを、今度はアタシ達が救うの!」
「ウサジさんの生活は私達が守ります! 59年と7カ月と21日後、ウサジさんが天寿を迎えるまで!」
まあまあ長ぇな、俺の寿命。だけどそういう数字って割と知りたくない物だと思うんですけど……
それでなんだって? 天寿を迎えた後は、ヴェロニクの元に連れ戻されるって?
それで今この瞬間もずっと俺を見ていて嫉妬の炎を燃やしているヴェロニクは、その時になったら何をするか解らないって……
これ、どうやったら回避出来るの?
「そういう訳だから! ウサジさぁん、早くウサジさんの部屋に帰ろうよ、見てこれ! ウサジさんのアパートの合鍵! 僕、こっちに来てすぐ作ったんだ」
手紙を読む間俺から離れていたノエラが、また俺に抱き着いて来る……ヤバい目をして。
「アタシ達にはほんの60年しか時間がないの! それだけ経ったらウサジをヴェロニク様に返さなきゃならないのよ、そしてヴェロニク様に返したらウサジは二度と戻って来ないわ、だから! 今のうちに、ウサジといっぱい仲良くならないといけないの!」
クレールもヤバい目をして抱き着いて来る! ちょっと待て、離せ、離……だめだ、この世界の俺は一般人だがこいつらは人外の能力を身に着けた超人なのだ。
「うふふふ、ウサジさんは何の心配もしなくていいんですよ、ウサジさんは私達が養いますからね、この世界での寿命が尽きるまで、その間、ウサジさんは私達の物です……」
ラシェルまでも。ヤバい目をして俺の足元から這い上がって来る!?
「待ってくれ、そんな、お前達みたいな超人に三人掛かりで奪い合われたらすぐに死んでしまう、この世界の俺は強くはないんだ、」
「大丈夫ですウサジさん、僕達ウサジさんを巡って争ったりしません」
「アタシ達、ウサジさんの心と身体は三人で仲良く分けるって約束をしたの!」
「ウサジさんは私達三人の共有物なんです」
「俺の人権!?」
三人娘に取りつかれた俺は辺りを見回す、誰か! 誰か助けて下さい! 誰か……あ……あれは!? ヒゲに鉢巻き、腹巻にステテコ姿のおっさん! ヒゲに鉢巻き、腹巻にステテコ姿のおっさんが児童公園の出入り口近くの電柱にもたれかかり、こっちを見ている!
「助けて、おじさんっ……!」
「いやあ、残念だがそいつは手遅れだァ」
おっさん妖精は、含み笑いを浮かべ腕組みをしたまま、近づいて来る。
「お前がさっき俺のダンプカーに飛び乗っていればな……俺はお前を貨物船に乗せそのままメキシコまで拉致して、そいつらから隠していただろう。そしてそいつらに見つからないまま天寿を迎えていれば、女神の元に連れて帰られる事もなく、普通の男として生きて死ぬ事も出来たかもしれねェ」
こいつ、そんな重要キャラだったの!? ていうかお前マジ何なの!?
「だけどこうなっちまっちゃもう遅い。俺には何も出来ねえな。ま、せいぜいその娘達と仲良くしなよ。その後は……永遠にあの女神と一緒だ……」
おっさん妖精は俺に背を向け、立ち去って行く。
「待って! 待って下さいおじさん!」
「もういいでしょ、ウサジさぁん……僕、もう我慢出来ないよ」
ノエラがますますヤバい目をして俺の顔に近づいて来る。
「早くウサジのアパートに帰ろうよ、アタシも限界」
クレールも俺の首に腕を絡ませ、俺の唇に唇を寄せて来る……俺は必死に顔を背けるが。
「協力して下さいウサジさん、じゃないと私達、もう何をするか解りません」
ひいいっ!? ラシェルは下から来る、俺の太腿をぎゅっと抱きしめ、熱病に潤んだ目で俺を見上げる……
「や……やめなさいお前達、若い娘がはしたないですよ……」
俺は弱々しい声でそう告げる。三人は俺に取りつくのをやめない。
「ごめんね、ウサジさん……」
「私達の物になって……」
「ウサジさぁぁん!」
無力だ、俺は無力なんだ、この世界では何の力もないッ……俺にはもう何も出来ない……そう思った瞬間、俺の口からは、自然におはらいの文句が漏れていた。
「仏説摩訶般若波羅蜜多心経観自在菩薩行深般若波羅蜜多時」
「きゃああああ!?」
「ええええええ!?」
「なんでえええ!?」
三人娘、いや三妖怪は跳ね飛ばされるように俺から手を離し、笑顔で道端に転がり、悶え、のたうちまわる。
「ぎゃははは、ぎゃははは、なんで、ずるい、話が違うー!」
「ひいっ、ひいいっ、ヴェロニク様のうそつき! きゃあははは!」
「何故ですかああっ、あはは、あはは、イヤ、あははは!」
俺は自分の擦り剥いた膝を見下ろし、しゅくふくをかけてみる。掌から青い光が放たれ、擦り傷が見る見る治って行く。
ええ……使えるの?
ここまでお付き合いいただきまして誠にありがとうございます!
以下はあとがきというか、作者の言い訳でございます。
・何が【超人気異世界小説】なのか
この小説、1~20話までと、その後とで全くの別物なんです。
最初の20話は2019年に、ドラクエ4コマのパロディくらいのつもりで書いて、検索に載せずに発表した短編でした。知り合いにだけ見せる用の作品だったんです。
お暇な方は小説情報=>アクセス解析=>月別[全部分]と見ていただけるとお解りいただけるかと思うんですけど、閉架作品ですから最初の二年間は月間PVが0だった時もありました。
それでタイトルに冗談で【超人気異世界小説】ってつけてました。決して調子に乗っていた訳ではないんです。ほんとに人気が出てランキングとかに載るようなら外そうとは思ってたんですが、結局そのままになりました。
・最初の20話
そんなわけでここだけ見ると今となっては超恥ずかしいグダグダのネタとかあって……いつか直そうとは思ってたんですけど読み返すのも恥ずかしくて、そのまま完結まで来てしまいました。
ステータスだってちゃんと描いたら面白いかもしれないけど、この程度の扱いなら無い方がマシですよねェ。
・ウサジが口ばっかりで全然エロくない
本当に申し訳ありません、ウサジの正体はヴェロニク様一筋の純愛野郎でした。そうでないとこの小説ノクターン行きになっちゃうんで……一応、主人公がもっとガツガツ行くルートも考えてはいたんです、それは 書 籍 が 出 る よ う な ら そうしようかと思ってたんですが、いや残念。
連載中にも複数のコンテストに落ちました。あー描きたかったなー本当にエッチなウサジ。
それから、途中で連載ペースがガタガタになって申し訳ありません、円安の影響で生活は今も不安定です、日々の心配事に囚われてる時に、エッチなサブタイトルを捻り出すのはキツかった……
あとはもうないかしら、書いてない事……
ああっ!? こちらをお読み下さった皆様にお願い申し上げます!
「少女マリーと父の形見の帆船」
本作ページの下の方にリンクがございます、私の代表作、「マリー・パスファインダーの冒険と航海」の第一作のこちら、まだお読みでない方は、是非是非! こちらもお読み下さい!!
今どき海洋冒険物なんてと思われるかもしれませんが、基本的にはウサジのような、泣き笑いの激しい主人公が様々な苦難を鮮やかに乗り越えて行く痛快アクションストーリーです! 何卒、何卒お願い致します!!
最後にもう一度、ここまでお付き合い下さいまして誠にありがとうございます。 宜しければブックマークはそのままで、お☆様を5つほどいただけますと、貧しさに負けそうな作者の胸に、暖かな光が届きます。
ありがとうございました。




