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【超人気異世界小説】聖戦のウサジ ヤンデレ女神の24時間監視付き異世界転生  作者: みちなり


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0276 グッバイメモリー

 異変の根源はすぐに見つかった。例の噴火口から、噴煙の代わりにどろどろとした何かがあふれ出しているのだ。遠目には、温度の下がった溶岩のようにも見えたが。


「……ああっ!?」

「あれは……」


 違う。大地の裂け目から、互いの身体に取り憑き合うように這い上がって来るのは亡者だ。

 半ば焼け焦げ、溶けたような無数の亡者が集まり、群体ぐんたいを作り、まるで一つの生き物のようになって、山を降り、寺院の方へと這い寄って行くのだ。

 それは勿論もちろん、掛け値なしにおぞましい光景とは言えたが。


「ウサジさん、あれはさっきまでの怪異共みたいに動きも速くはないし、這い寄るだけであまり攻撃力があるようには見えないですけど……」


 ノエラはそう言うが、これはそんな生易しいものではない……これは恐らく女魔術師が支配し蓄えて来た、実体を持つ亡者の群れだ。

 一言で片づけるなら、ゾンビというやつなのだろうが……今ある生命に執着するあまり世のことわりに逆らい、永遠の命を信じて女魔術師の邪法にその身を委ねた、実際にこの世界に生きていた人々の変わり果てた姿なのだろう。


「だけどこのままじゃいつか寺院にまで辿たどり着いちゃいます、止めますよねウサジさん? 奴らの先頭まで行きましょう」


 俺をまたがらせたままノエラはゆうしゃクラウドをひとっ飛びさせ、群体ぐんたいと化した亡者共の先頭へと回り、地面に降りる。


「うわあ……」


 亡者の群体は俺達など目に入らないように、互いに取り憑きあい、絡みあい、もつれあいながら押し寄せて来る。


「下がって下さいウサジさん、こんなの僕一人で吹き飛ばしてみせます」

「……ま、待ちなさい!」


 考え事に沈んでいた俺はノエラを止めそびれてしまった。俺が声を掛けた時には、ノエラは既に天秤棒を振りかざし亡者の群体へと突っ込んでいた。


「うおおおおおりゃああああああ!!」


 たちまち暴風と化したノエラは凄まじいパワーで天秤棒を揮い、亡者達の身体をぎ払い、吹き散らし、跳ね飛ばす。

 しかし相手は完全な亡者だった。へし折られようが、叩きつけられようが、彼等は前進する事をやめなかった。


「うらああああ! おう! せい! どりゃああ!」


 人外のパワーとスピードでノエラは戦い続ける、だが結果は同じだ、いくらノエラが強くても、亡者達は這い寄る事をやめず、互いの身体に取り憑きあいながら、いくらでも進んで来る……これでは土や泥のかたまりを攻撃してるかのようで、全くキリがない。


「戻りなさい、ノエラ!」

「ウサジさん、こいつら勝手が違います!」


 俺の呼び掛けに応え、ノエラは素直に戻って来た。


「これは穴を掘って埋めるとか、まとめて焼き払うとかじゃないと倒せませんよ、やっぱりクレールとラシェルも連れて来ましょう」


 俺もさっきからその事を考えていた。


 だけど人間一人を完全な灰に変えようと思ったら、大変な火力が要るのだ。増してやこれだけの数の亡者を灰に変える火力など、用意出来るものか。少なくともクレールとラシェルだけ連れて来ても全く足りない。

 では王の兵士や魔族兵達を動員して、こいつらが這い寄れなくなるまでその身体を潰し、焼き払い、切り刻ませるか? 俺は人にそんな事をさせたくない。いつかヴェロニカでラガーリンの戦士達の遺体を切り刻もうとしていた時と同じだ。


 そしてこの亡者達は切り刻まれて動けなくなったら諦めてくれるのか? 地中深くに埋められたら女魔術師の呪縛から逃れられるのか? そうじゃなかったらどうする。地中深く埋められても永遠の責め苦が続いたらどうする。


「それか、あの……ヴェロニク様に御願いする訳には行かないんですか?」


 ノエラは俺の目の前に居て、俺を見上げていた。


「ヴェロニク様の力で何とかしてもらう事は出来ないですか? 十七福神の皆さんもいらっしゃいますし、あの……魔王とは僕達が戦うべきだったとは思うんですけど」


 俺はノエラの方を見る。ノエラは遠慮がちにちらちらと俺を見ては、また視線を逸らしながら続ける。


「この亡者共……いいえ、この人達は、退治して済ませられるものじゃないような気がします」

「……そうですね、私もそう思います」

「ごめんなさい、こんな事言って」

「謝る事など何もありません、私は嬉しいですよ。貴女は以前自分には戦いしか出来ないなんておつしゃってましたが、そんな事はありません。貴女の手には人をいつくしみ、守り育てる事が出来る、強い力と心が宿っています」


 俺はノエラの手を取って微笑み、そのてのひらを包んででる。


「ウサジさん?」

「ノエラさん。クレールとラシェルを連れて一度寺院に戻り、これまでの事をガスパル王に報告し、兵士達に戦闘をやめさせ怪我人の救護や防壁の修繕に集中するよう、進言して下さい、私はここで彼らの足止めをします」

「待って下さい、それならウサジさんも一緒に戻りましょう」

「大丈夫ですよ。羯諦羯諦波羅羯諦」

「きゃああ!?」


 俺がいきなりおはらいを唱え出すと、当然のようにノエラは地面に跳ね飛んで悶え、転げ回る。


「はははは」

「何笑ってるんですか、ひどいですウサジさん、何で今こんな事するんですか!」

「ご覧なさい」


 俺は亡者の群体を指差す。おはらいの効果範囲に居た亡者達はその威力にあおられ、倒れ、転げ回っていた……効いているのだ。


「造作もありませんよ、私なら彼らを安全に食い止められます、だから安心して行きなさい。ガスパル王に進言を終えたらヴェロニク様の元へ行って下さい、次に何をすべきかは、きっとヴェロニク様が教えて下さいます」


 ノエラは立ち上がり、つぶらな瞳で俺を見上げる。


「王様が先で、ヴェロニク様が後なんですか?」

「ええ、そうして下さい」



 現世の事は、現世に生きる者がケリをつけるべきなのだ。


 神々が直接手を下せばそれはあまり良くない伝承となって世界に残る。女魔術師が狂気に囚われたのも、結局の所神々の力に過度に期待してしまったからだ。


 この亡者共にしても。ヴェロニクは自ら聖域を訪れる者なら全て受け入れるが、ヴェロニク自身が手を下して強制的に連れて行くような事は出来ないのだ。

 こいつらは、人間の手でヴェロニクの元に送られなくてはならない。


 ノエラは何度も振り返る。俺はその度に笑顔で手を振ってやる。さっさと行けって……ああ、やっと行った。



 亡者の群れが迫って来る。うわっ……嫌だなあ、正直キモいわ見た目。

 老若男女、いろんな遺体が居るな……子供も居る。皆、女魔術師の邪法に依存し、永遠の命を手に入れたいと願ったのか。永遠を願うのもまた人のさがだ……自分は永遠など願わないが、大切な誰かの為にこんな姿に成り果てた奴も居るのだろう。


 あーあ。俺だって未練タラタラだよ。ちくしょう。どうしてこうなった。


 王都の歓楽街で毎晩遊びたかったなあ。俺は国王からも深い信頼を寄せられる聖者ウサジ様なのだ。俺が贔屓ひいきにするだけでその店は人気店となる、ならばみんなタダで遊ばせてくれるに違いない。

 ま、店なんか行かなくても神殿には可愛い女の子の弟子がたくさん居たけどね。みんな俺の事めちゃくちゃ尊敬してたし、その気になりゃ全く女に苦労なんかしなかったと思う。

 だけどシルバーに手を出さなかったのはこの世界での俺の人生の最大の失敗ではなかろうか。何度チャンスがあったんだよ? 仲間全員瓢箪(ひょうたん)に吸い込まれて居なかったり、シルバーの部屋にお邪魔した事も二度……二度目なんか完全にデートだったのよ? お手々握ってチューしたら後は成り行きで最後まで行けたと思うよ?

 最後までって言えばジュノンだな……最初は男だったって言うけど俺の付き合いの中ではほぼずっと美少女だった。あれが毎晩のように狭いテントの中ですぐ隣に寝てたんだぞ? しかも嫉妬深いヴェロニクもノエラも何故かジュノンはノーマーク、ジュノン自身も本物の女ではない自分は精進潔斎しょうじんけっさいの例外だから抱いていいと思いますなんて言ってた、何で? 何で毎晩抱かなかったの?

 ゴールドは人妻になってしまった……それが却ってやべー気もする。あの子はオックスバーンとも関係を持ってたようだし海千山千うみせんやませんの超肉食系のプレイガールだ、もしも。もしも人妻となって益々色気を増したゴールドに迫られたら、俺は理性を保てるのだろうか?

 とどめは三妖怪、いや三人娘だよね。

 三人三様、願ってもない美少女で、俺の事が好きでたまらないって言ってるのに。本当、何してたの俺? 最初から最後まで。

 ノエラは重い。重いけどあんな純真な美少女にべったり依存されて暮らすってどんな感じなのか、試してみたかったなあ……

 クレールはツンツンしてた時の事を思い出すと何度でもニヤニヤしてしまう、そして何たってスタイル抜群だ、ナンバーワンだ。

 ラシェルは優しくてしとやかで女の子女の子してて、お人形のようだ。あんな子を思う存分朝から晩まで()でたらどんなに幸せだろう。


 亡者の群体が、目の前まで迫って来た。

 ちくしょう……ちくしょうちくしょう、チックショー!

 ざけんな、何だよこれ! ヴェロニク……ヴェロニクー!

 俺は! お前とエッチがしたいから! お前の願いを叶え、全てを解決した上で、堂々と! 何の問題もなく! エッチがしたいからー!! だから……だから頑張って来たのに!


 亡者共が俺に向かって手を伸ばす……怖ぇぇえ! 落ち窪んだ眼窩がんか、焼け焦げたようにただれた肌、ガリガリに痩せ細った腕、伸びた爪、他の誰かの遺体を丸めて取り込んだような胴体……



「仏説摩訶般若波羅蜜多心経、観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空度一切苦厄舎利子」



 俺は魔力を籠めずにおはらいを唱え始める。この亡者達はおはらいで拒絶してはいけない。

 亡者共の腕が伸び、俺の肩を、腕を、首をとらえる……



「色不異空空不異色色即是空空即是色受想行識亦復如是舎利子是諸法空相不生不滅不垢不浄不増不減是故空中」



 俺の身体が、亡者共の群体に飲み込まれて行く。

 俺は成り行きに身を任せ、一心不乱に道を説く。

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作者みちなりが一番力を入れている作品です!
少女マリーと父の形見の帆船
舞台は大航海時代風の架空世界
不遇スタートから始まる、貧しさに負けず頑張る女の子の大冒険ファンタジー活劇サクセスストーリー!
是非是非見に来て下さい!
― 新着の感想 ―
[一言] 最後の雰囲気がぷんぷんする 存分にすけべしてくれ… 頑張れウサジ
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