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0024 俺の尻に触るな! って言わなくて良かった、いろんな意味で語弊があるし

 気障りな金髪野郎の後ろからは、斧を持った筋肉達磨、金ぴかの衣を着た神官っぽい奴、それに色気ムンムンのホステスみたいな姉ちゃんが出て来る。

 お決まりの編成ってやつだな。なるほど、これはライバル登場イベントってやつか。割とどうでもいい事だがあの姉ちゃんは俺のタイプだし、あの胸はクレールよりデカいかもしれん。あの間に挟まりたいな。駄目かな。駄目だろうな。


「どうのつるぎとたびびとの服だけで、こんな所まで来ない方がいいんじゃない? おじょうさん達、冒険をなめてるでしょ」


 その姉ちゃんがいやに腰をくねらせるアイドルモーションから、かなり嫌味っぽい口調でそう言うと。


「いっ、いつの話をしているんだ! 今は鋼の剣だってあるぞ!」


 クレールが挑発に乗ってそう応えてしまう。ああ……よせばいいのに……案の定、ライバルパーティの四人組は顔を見合わせて高笑いをした。


「ハハハハ、そりゃ良かったな、やっと鋼の剣だとよ!」

「どうか神のご加護がありますように! ふふ、ふっ!」


 ん? あのパーティ四人組じゃないじゃん。後ろからもう一人、ノエラくらいの背丈の少年が出て来た。


「この遺跡の中はくまなく調べましたので、中に入っても収穫は無いと思いますよ。あと、ワンサーティンに鋼の剣を使うのは控えた方が……斬り損ねると刃こぼれを起こしますから」

「ジュノン! 余計な事を言うんじゃないよ!」


 少年は金髪野郎に一喝されて黙り込む。一番小柄なのに山ほど荷物を背負わされているなあいつ。これは噂のハズレ職業、鍛治士とかアイテム鑑定士とか、そういうやつか。気の毒に、早く追放されてざまぁするんだぞ。


「ご忠告に感謝するよ……僕らには僕らの用事があるから。行こう、みんな」


 ノエラがそう言って俺達を促す。ライバルが荒らした後でもいいから、この神殿には入るという事か。


「おいおい、そんなガキなんかじゃなく俺達にも感謝しろよ? モンスターだってほとんど退治してやったんだぜ」


 筋肉達磨がそう言って、目の前を素通りしようとしているクレールをにらむ。

 聞こえないフリをするクレール……その時だ。筋肉達磨がクレールのお尻へと手を伸ばした……!



―― パシッ!



 あっ。


 ああああー!? 柄にもなくやってしまったあああ!? 俺はついひのきのぼうで、筋肉達磨の手を払ってしまった! だけど俺はいつの日か思う存分揉みまくる予定のクレールのお尻に、汚い野郎の手垢など1ナノメートルだってつけたくなかったのだ!


「何だあ? この野郎……」


 ぎゃあああ怖ぇえええ俺は筋肉達磨の目の前に居てこいつはブチ切れている、俺にこいつに対抗出来る戦闘能力は全く無い、あ、死ぬわこれ……ノエラ、悪いけど後でまた生き返らせといて……でも出来れば誰か助けて……



 助けは、来た。



「デッカーさん、今のはその、駄目ですよ」


 デッカーさんというのはこのデッカーい筋肉達磨か、分かり易い名前ですね、そうじゃねえ、間に入ってくれたのはジュノンという少年だった、しかし……!


「うるせえチビ!!」


―― ビターン!!


 次の瞬間、ジュノンはデッカーの凄まじい張り手を受けて吹っ飛ばされ、神殿の壁にまで叩きつけられた。



 金髪野郎はそれを見て、ただ溜息をついた。


「ああ、もういいよ、そんなひのきのぼうしか持ってない雑魚なんかほっとけ。早く行かないと野宿になっちまう」


 ジュノンは壁際に崩れ落ちていた。口の中を切ったのか、唇の端から血が溢れ出す……

 成金神官と姉ちゃんは? さっさと歩き出した金髪野郎について行ってしまった。お前ら治療魔法とか使えないの?


「チッ」


 デッカーも露骨に舌打ちをして、歩き去って行く。


「あ、あの、ウサジ……今のは私、私が油断したから、その……」


 クレールはいつもの強気の態度もどこへやら、セクハラされそうな隙を作ってしまった自分を恥じてか、青くなって震えている。


「貴女が責任を感じる事なんて何もありませんよ。それより」


 クレールを見ているのが辛かった俺は、ジュノンとかいう少年の方に駆け寄る。

 こいつも多分15歳くらいで、むかつくレベルのイケメンなんだけど、やっぱり頭髪は明らかに後退している。いや、髪の事はいいんだ今は。俺はジュノンの前に屈み込む。


「すみません、私のせいでこんな怪我を」

「い、いいえ、とんでもない、仲間が失礼をしてごめんなさい」

「貴方はそうやって、いつも仲間の為に頭を下げているのですか?」

「うちは、こうする事で上手くやってるんです……ああ、もう行かないと」


 ジュノンは立ち上がり、飛び散った荷物袋をまとめて背負おうとして、ふらつく……荷物の重さのせいじゃない、だいぶ体力を削られたのだろう。

 仕方ねえなあ。この魔法、女の子にしか使わないつもりだったんだけど。


「しゅくふく。」


 俺は知っている二つの呪文のうちの一つをつぶやく。



―― シュバババババババ!!



 その瞬間、地面から空から周りの草や木々から湧き出すように現れた青い光の筋が、数十本、数百本と束になり、ジュノンの体の周りを回りだした!?


「なっ、何これっ……!?」


 毛糸球のように絡まり合う青い光は、ジュノンの体を荷物ごと宙に浮かべる……な……何が起きたのこれ? 俺知らないよ?



 やがて光は、ゆっくりと収まり、消えて行く……ジュノンの体もゆっくりと、地面に降り立つ。彼の怪我は、どこにも残っていないように見える。


「あ……あの……ありがとうございます……」


 ジュノンは呆然としていたが、ようやくおずおずと微笑んでそう言った。ノエラは呆気に取られていた。ラシェルは自分が治療魔法を使おうと駆け寄って来る所だったが、やはり足を止めて呆気に取られている。


 例の四人組も、足を止めてこちらを見ていた……みんな大口を開けている。俺何かやっちゃいました? いやマジ知らねえ。

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作者みちなりが一番力を入れている作品です!
少女マリーと父の形見の帆船
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