0023 鼻の大きさとアレの大きさは同じって本当だろうか。畜生俺は信じねえぞ
翌日。結局俺は女の子達の無防備な寝姿を眺める事も、ちょっとおっぱいを突っついてみる事すらも出来ないまま、爽やかに目を覚ました。
「ああっ!? 朝まで寝てしまった! 私も見張りをする約束だったのに、申し訳ありません!」
「いえいえ、ウサジさん疲れが残ってたんですよ、一昨日は大変な奇跡を起こされましたし、その夜は村の皆さんと宴会、昨日の朝にはすぐ旅立ちでしたもの」
ラシェルはそう言ってくれるが、疲れてるのは女の子達も一緒じゃないか……トホホ、情けねえなあ俺。あと夜這いがしたかった。
その日も俺達は山の中の道無き道を行く……この場所は元々は石畳を敷かれた広い街道だったらしい。
今も所々、傾斜の強い所には当時作られた石段が覗いている。しかし道のほとんどは繁茂した草木に埋もれて消えてしまっていた。
「それでも、この辺りはまだマシな方なんだ。200年前と比べて、人類の国の面積は10分の1くらいになっちゃったんだって」
「そして残り少ない人類が身を寄せ合って暮らすこの地にも……あのワイバーンのような魔物が進出しつつある……」
この世界の人類は、本当にここから逆転出来るのだろうか? 魔王一人? 倒せたとしても、その他の魔物から大地を奪い返す力を、人類はまだ残しているのだろうか……
道がこんな事になるってのは、とにかく人口が少ないって事だよな。
そうだ。魔王を倒す事は手段の一つに過ぎない。人類再興の目的の為に一番大事なのは、この人口減による過疎化を食い止める事だと思う。
よし。俺は今夜からでもその戦いを始めよう。
まずは一番チョロそうな、いやお膳立ての出来ているノエラからかな……いやいや、あの子はやっぱりちょっと重い、あの一見元気で屈託のない僕っ娘は、ヴェロニクに負けず劣らずのヤンデレになる可能性を秘めているように思える。
ラシェルがいいか? あの子は旅の仲間から土下座して頼まれたらイヤとは言えないのではないだろうか。あの子なら俺が「ごめーん出しちゃった」って言っても「しょうがないなあ」って笑って許してくれるような気がする。
クレールは……さすがに無理だろう。だけどクレールの俺に対する最初の印象は三人の中では間違いなく最悪だった、そこから持ち直したんだから好感度の上昇率という意味では一番脈があるかもしれない。胸も一番でかいし揉みたい。
「どうかなさいました? ウサジさん」
人類を救う方法について深く考えていた俺は、ラシェルにそう声を掛けられて顔を上げる。あれ、思ったより時間が経ってるみたいだ。
「すみません、考え事をしていました……この200年の間の出来事について」
「ああ……ウサジ、ラシェル、ちょうど見えて来たぞ」
鬱蒼と繁る森の中に、大きな石造りの建物の屋根が飛び出しているのが見える……尖塔もあるな。宗教建築と思われる荘厳な建物だ。
俺達が今歩いて来た失われた街道も、かつてはこの神殿を訪れるたくさんの人々を運ぶ為の道だったんだろうか。
「ここには昔、この神殿を中心とした大きな町があったらしいんだ」
ノエラがそう言った。町ぃい? どう見ても原生林みたいな森に見えるけどな。ラシェルも付け足す。
「この神殿にどんな神様が居て、どのように人々と関わっていたのか。何故この町が放棄されたのか、どこにも記録が残っていないんです」
「……すぐそこにある、あの砦にも?」
「あの村が出来たのは50年程前で、その時にはここはもう廃墟になっていたそうですよ」
俺がこの廃墟の近くの箱の中で目覚めた事にも意味があるのなら、ここがヴェロニクの神殿だった可能性は低くないのではないだろうか。
森の中に立つ巨大な神殿。東京ドーム何個分くらいの体積があるのだろうか。うーん……いや……一個分かな……東京ドーム一個分。
「前にここに来た時はもう全然余力が無くて、全滅する前に逃げ帰ったんだけど。今回はウサジが居るからね! 今度こそ攻略出来るよ!」
ノエラはそう言って拳を握って振りかざす。
「フゴゴー!!」
「むんっ!?」
神殿の入り口に近づくまでにもモンスターの襲撃があった。
緑地にオレンジ色のラインの入った昔の電車のような配色の動く巨大土偶が、崩れた土塁の陰から雄叫びを上げて飛び出して来る! 先手を取られた俺達はクレールが軽い体当たりを受けるが。
「秘剣大根切り、喰らえッ!!」
クレールのカウンター必殺技で頭をかち割られ、あっさりと崩れ落ちる。
「やはり鋼の剣、威力が違うな」
前の砦で買った剣を満足そうに見つめるクレール。実は以前にも持っていたのだが、資金難で手放してしまったという。ワイバーン戦でも銅の剣を使っていた。
「ワンサーティンがこんなに簡単に倒せるなんて。今まで全滅覚悟で挑むか逃げるしかなかったんだよ、ウサジが来てから凄いや!」
「この怪物、丈夫で力持ちで大変な働き者ですものね……人類の味方でしたら良かったのに」
その時だ。
「おや? 外が騒がしいと思ったら。まだ冒険ごっこなんて続けてたの君たち?」
神殿の大きな入り口の陰から、誰か出て来た……それは長い金髪、長身で肩幅が広く、見るからに高そうな鎧を身につけゴテゴテとした剣を持った、人類の敵のようなイケメン野郎だった。