0021 俺も初めて下の毛が生えた時は、泣きながら引き抜いたっけなあ
ちょっとだけ続きを公開するよ!
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ウサジ
レベル10
そうりょ
HP78/78
MP16/16
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「ええっ、もう行ってしまうんですか!? 勇者パーティの皆様!」
翌日。俺達は砦を後にしていた。
本当はもう暫くこの拠点に留まり、小さなクエストを達成して金を稼ぐつもりだったのだが。
「ワイバーンなんて大物を狩った後で、たんぽぽ採取やクマーモス退治を引き受けるのも決まりが悪いかなって……村の人もきっと、僕達の扱いに困るでしょ?」
ノエラは照れたように指先で頬を掻いてそう言った。
まあ、旅の行先を決めるのは当然勇者であるノエラの役割であり、見習い同行者の俺が異議を挟む所ではない。
だけどもうちょっとここに居たかったような気もする。何せ俺達はこの砦の村のヒーローになったのだ。
そして勇者パーティに居る男は俺だけ。これはつまり、ここでは村中の女が俺の物だと言っても過言では無い訳である。口には出せないけどね。
そんな事を考えていたからだろうか。三人の女が俺の方を見ている……やばい、俺の強力でエッチな思念が外に漏れてしまったのだろうか。
「今の村、気のせいか、その……抜け毛に苦労されている方が多いように見受けられましたね」
俺はその場をごまかそうと、人々の為に苦悩する、いかにも僧侶らしい深く低い声でそう呟いた。本当はゲラゲラ笑い出したい所だったが。ハゲだらけだったなあの村……
しかし、三人は順に互いの顔を見合わせ、微かに俯く。えっ……俺そんなに悪い事言ったか?
「僕はやっぱり、ウサジは特別な人なんだと思う……正直、二人もそう思ったでしょう? 初めてこの人を見た時」
最初に顔を上げたのはノエラだった。次にラシェルが、俯いたまま語り出す。
「ウサジさんはきっと魔王の事も御存知無いのですわ。無知だからという意味ではなく、特別な人だからという意味で」
「ウサジ自身がアーティファクトだというノエラの仮説、私は最初は全く信じる気にはなれなかったが……」
クレールも視線を逸らしたままそう呟く。
ちょっと待ってよ、何この空気。俺が村中の女(ストライクゾーンは12~35とする)(美魔女なら50まではぜんぜんあり)とエッチに励む想像をしていた事がそんなに悪いの? 勘弁してよ……俺は聖職者でもあるけど若く健康な男でもあるんだよ、そんなの仕方無いじゃん……
◇◇◇
魔王が現れたのは200年も昔の事だという。
最初は、辺境に閉じ込められていたはずの魔物達の動きが目立つようになって来たと、その程度の変化から始まった。
魔物達は次第に数を増して行き、人類の生活圏を侵食しだした。辺境の村や開拓地が陥落し、やがては地方都市や小さな国までも、増殖した魔物の群れに攻め落とされるようになった。
残された人類は人間同士の争いを極力抑え、いくつかの土地を自ら捨て、集結してその文明を守ろうとした。しかしそんな人類連合の夢も、魔王の策略に翻弄され失敗に終わった。
長い年月をかけてゆっくりと衰退して行く人類に、妙な変化が現れたのは50年程前だという。脱毛症に悩む男性が異常に増えたのだ。
人類(の男性)は力の限り抵抗した。貴重な水を使い定期的に頭を洗い、頭皮をマッサージした。塗るとスーッとする薬を作って塗ってみた。古の知識に解法を求め、広い世界に残された賢者を探した。神にも祈った。
しかし状況は改善しなかった。今ではこの世界には頭髪に不自由していない男はほとんど居ない。皆、12歳にもなれば額が広がり始め、15歳になれば頭皮で日差しを感じ始めるという。
人類(の男性)は、これは世界を覆う魔王の呪いであると結論づけた。
◇◇◇
俺は自分の頭髪に触れてみる……色々と不自由な所もある俺の体ではあるが、頭髪には今の所不自由はしていない。この世界での俺は特別な人間だったのか。
そうなると……まずいな……ハゲを笑う事はこの世の全ての男性を敵に回すという事になってしまうのか。そんな大事な事はチュートリアルの時点で教えといてくれよ。
俺、ここまででも結構ハゲって言っちゃってるぞ。まあ、他の男共も言ってたような気がするけど。
あっ、解った、皆も俺の事カツラだと思ってるんだ。
だけどこの先は秘密にしないといけないのか。俺が実はカツラを被っておらず、本物の毛を生やしているという事を……何とも厄介な異世界に来てしまった。
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