0199 ちち、違うんです! 違います、待って、違うんです、違います、違います!!
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ヴェロニカの教会の様子も、前に来た時とはだいぶ変わっていた。いや、教会そのものは以前と変わりないのだが。
「さあさ、参拝のお供にヴェロニカ饅頭はいかがかねー」
「ヴェロニカのお土産物はこちらだよ! ペナントにキーホルダー、ぬいぐるみもあるよ!」
「名物ヴェロニカ焼きはいかがですかー焼きたてですよー」
教会へ続く道は巡礼客でごった返していて、道の両側には急ごしらえの店や屋台が立ち並び、縁日のような賑わいになっていた。
巡礼は人間だけじゃない。ラガーリンも混じっている……あいつらがこの町に攻めて来たのは割と最近の事なのに、皆よく理解してくれたな。
「ラガーリン達も今や、この町の大事な友人です……彼等は私個人の事も許してくれました。私も今は本当に反省しています」
デッカーは大きな背中を丸め、恥ずかしそうにそう言う。
俺達は賑やかな仲見世通りを抜け、ヴェロニカの教会に裏口からそっと入る。デッカーは敢えて俺がウサジだと皆に喧伝しないでくれていた。いやマジ助かるわ。
しかしデッカーは、教会の裏手にある六畳くらいの部屋に居た六人の若者に対しては俺の名前をすぐに言ってしまった。
「皆に紹介します。この方がヴェロニクの使徒、ウサジ様です」
「ウサジ様!?」「ウサジ様!」「この方が、ウサジ様……!」
男が四人、女が二人……一人は地味だけど可愛い子だ。そしてもう一人はウソだろォォオ!? Gを越えている、Gを越えてHだ、Hカップですらっと背が高く手足も長く垂れ目がたまらん癒し系の、それでいて清楚な美少女だ! 実在するのかそんなもん!? 男の妄想の中にしか居ないんじゃないのか!?
「ウサジ様ぁ! 本当に御会い出来るとは思いませんでした……ウサジ様……!」
即ハメボンバー!! 決めた! 今夜の夜伽の相手はこの両手を合わせてお目目キラキラさせて俺を見つめているこの女の子だ! メーラより胸でかいじゃんざまぁざまぁひゃあっはっはー!
「彼等はウサジ様の徳の高さとヴェロニク様の教えを慕い、ヴェロニク様の僧侶となる事を志し、ここにやって来た若者達なのです」
デッカーが微笑みを浮かべたままそう言った。駄目じゃん。じゃあ俺、絶対味見とか出来ないじゃん……
「ウサジ様! ヴェロニク様の事を教えて下さい!」
「ヴェロニク様の教えを、どうか私達にもお伝えください!」
そして案の定、人の一番苦手な事を要求して来るガキ共……俺は物教えるとか説教するとか、そういうのが一番苦手なんだよ。
◇◇◇
「エリンギは包丁で切るより手で割いた方が美味しく食べられます。縦方向に、好みの太さに割きましょう。輪切りにした時のアワビのような食感も、それはそれで捨てがたいですが」
「みかんを剥く時は下から二つに、次に四つに割ります。そして奥の方、へたの方から身を剥がすのです。するとどうでしょう、白い筋がきれいに取れた身が取り出せます。皮は最後まで切らないで下さい、へたの所を残して。その方が捨てやすいから」
「防火用水や雨水貯めにはそのへんの川で獲って来た小魚を二、三尾入れておきましょう。蚊がわかなくなりますよ」
◇◇◇
「皆さんとても感動されてましたね、さすがウサジ様です」
その夜俺はさらに狭い三畳くらいの部屋に案内された。ここに寝ろというのか。ノエラ達は町の宿屋の一番いい部屋に案内されてご馳走をいただいているそうだが。
「貴方はどこに寝るのですか」
「僕はこの床で大丈夫です」
そしてジュノンは当たり前のように俺について来て、いそいそと俺が寝る布団を敷いている。
「あの若者達は、皆あの部屋で寝るのでしょうか」
「さすがに女性の方は別に寝る所があるそうですよ」
俺は一計を案じる。
「私は少し散歩をして来ます。ジュノンはその布団を温めておいて下さい」
「は……はい! 解りました」
素直で純真なジュノンは言われた通り、寝支度をして布団に入るようだ。
俺は外へ行くふりをして礼拝堂へ向かう。全く、こんなに広い所が空いてるじゃねーか。
さすがにジュノンを床に寝かせて自分だけ布団には入れない。かと言ってジュノンを布団に入れたらこっちが眠れなくなるし、いい加減俺の光秀が何をするか解らない。どんだけ溜まってると思ってんだバカヤロウ。
ああ今日こそこの誰もいない広い礼拝堂で一人エッチをしてやろうか。しかしそれだと万が一何かがあった場合、世界に名を残すレジェンドになってしまう。
今夜こそしっかり時間を取ってヴェロニクと話さないといけない。
俺は講壇の下にヒョイと横たわり、眠りにつく。