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0173 そうりょウサジ、ちんこに生き、ちんこに死す。歴史家は何と書き記すだろう

 魔族兵共はしばらくの間、俺を取り囲んで牽制けんせいしていたが。やがて黄色魔族の一人が意を決して長い槍を突き込んで来た。


「死ねェェ!」


 俺はその突きをかわしながら槍の柄を掴み一気に間合いを詰め、ひのきのぼうの頭をそいつの顔面に叩き込む。


「ぶおっ……!」


 そいつが()()()()打って倒れるのを合図に魔族兵共が一斉に突きかかって来る、俺は覚悟を決め前方の魔族兵のふところに飛び込む! きれいに囲まれたら終わりだ!


「うおらぁぁ!」

「ぐはあっ!?」「こ、この人間風情が!」


 黄色魔族は姉妹やアスタロウのような赤魔族には頭が上がらないらしいが、人間相手には遠慮がない。接近戦での危険度は赤魔族とほとんど変わらない。

 これだけの数の敵を相手にする俺の勝利条件は、白波達が追いついて来る事だけだ。敗北条件は俺が死ぬか姉妹が殺される事……


 俺は赤魔族の一人と揉み合いながら他の奴等の槍をかわし、もぎ取った槍で黄色魔族を二、三人まとめてなぎ払い、槍を投げ捨て転倒した赤魔族を踏み越えて、次の黄色を、赤を、ひのきのぼうで叩きのめし、


「に、人間ふぜイグワァッ!?」


 首根っこ捕まえた黄色を槍ごと赤にブン投げ、倒れていた赤の足を捕まえて振り回し、


「ぐわぁ、うわぁ、ぐはあぁ!?」


 また別の敵に投げつけてすぐ突き入れられた槍を避けてつかんで力比べになって、その黄色を槍ごと宙に高々と持ち上げて……


「ひぃぃぃーっ!」


―― ビターン!!


 そのまま反対側の赤に叩きつけて槍を離して、おっといけねえ姉妹から離れ過ぎた、


「どきやがりゃああ!!」


 自分でも意味不明な叫び声を上げて突っ込んでまた突き出された槍を腹刺される寸前で掴んでへし折ってその穂先とひのきのぼうを振り回して、


「ぐわあっ!」「ぎゃああああ!」


 黄色を殴って赤に斬りつけて次の赤を蹴り飛ばして別の黄色にぶつけて、畜生全くキリがねえ!


「ば、化け物かこいつ……!」


 化け物みてえな図体のでかい赤魔族がうめく。てめえに言われたくねえ。


 白波達はまだか……だけどあっちだって多勢に無勢は一緒だ、そして今の所メーラはこちらには魔法を撃って来ないが、バルコニーの上に居るのはちらちら見えるので、多分白波達の方に撃っているのだと思う。

 アスタロウが早く姉妹の縄を切ってくれれば……駄目だめだ、奴も自分の身を守るのが精一杯だ。


 この喧嘩、負けかなあ。くそっ……俺も敵の攻撃の全てを避けきっているわけじゃない。このままじりじりと消耗してしまえば、どうなるかは目に見えている。


 どうしてこんな事になっちまったんだ。俺はノエラを探しに来ただけなのに。

 だけど……俺が考えもなしにその事を口にしたせいで、シルバーとゴールドはこんな目に遭っている。


 この世界での自分がヴェロニクの使徒という大事な役割を持っている事は、さすがに良く知っているつもりだったんだけどな……


―― 貴様にははなから、みにくい魔族女を抱く気など無かったんだ!


 女の子にあんな事涙目で言われちゃったらさあ、もう仕方無いじゃん。

 ちんこと共に生き、ちんこと共に死ぬ。それが俺の変態哲学じゃないか。



「どうしましたお前達! 下等な人間など一捻ひとひねりではなかったのですか!」


 俺は高々と持ち上げていた黒目をいた図体のでかい赤魔族を、槍を構えた二人の黄色魔族に投げつけてやる。


「ぐひゃああ!?」「おうええっ!」


 そうして出来た僅かな隙で俺は自分にしゅくふくをかける、俺はちんこに生きちんこに死ぬが今はまだその時じゃねえ、そうりょ無双、まだまだ見せてやる。



 その時。



「ウ   サ   ジ……さ ぁ ぁ ぁぁあああん!!」



 はるか天上てんじょうから、聞き覚えのある声が降り注ぐ。俺は思わず空を見上げる……あれは……親方! 空から女の子が降って来た!?



―― ドオオォォォォン!!



「わあああ!?」「ぎゃあああーっ!?」


 降って来たどころじゃねえ、空から女の子が急降下爆撃して来た!? 俺の目の前の中庭の地面が爆発し、周辺数メートルはたちまち粉塵ふんじんに包まれ何も見えなくなった! 何!? 何が落ちたの、ねえ!?


「あはっ、あはっ、あはははははは! ひッ、ひぃ、きゃはははははは!」


 土煙の向こう側、爆発が起きた真ん中で、誰かが、ネジが外れたような大笑いをしている。この声は……ああ、土煙が収まって行く……!



「ノエラ!?」



 中庭に2メートルぐらいのクレーターを開けて現れたのは、紺色のイモジャージを着て、顔には極太カモメ眉毛まゆげと犬ヒゲをつけ、天秤棒を振りかざして機嫌よく踊りまくる、元気なノエラの姿だった。


「ウサジさん、僕ね僕ね凄いんだ、僕本当に凄いんだよ、僕こんなに凄いなんて知らなかった、キャハ、キャハ、キャアハハハハ!」


 こちらを向いたノエラの表情は普通ではなかった。こいつは元々瞳をキラキラさせている女の子なのだが、今は瞳のハイライトの量がいつもの三倍になっている。


「見て見」


 ノエラの姿は台詞せりふの途中でいきなり消えた……違う、飛んでいる! ノエラは例のゆうしゃクラウドに乗って飛んでいる、中庭の中を外周に沿って凄まじい速さで回っている! 多分、秒速200メートルぐらいは出ている、その速さでめちゃめちゃ小回りが効く!?


「どう凄いでしょ僕、でもね僕もっと凄いんだそうだウサジさん一緒に行こう、僕さっきガスパル王にも会って来たよ、あっマドレーヌ王女めちゃめちゃ怒ってた! ウサジが何も言わずに居なくなったから、アハハッ、ねえ行こうよウサジさ」


 戻って来た、俺の方を見ながらも目の焦点が合ってないノエラに、俺はタックルを仕掛ける。


「きゃあああ!?」

「ノエラ! しっかりしなさいノエラ!」


 俺はノエラを押し倒し、地面に組み伏せていた。

 ノエラはそれで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「あれっ? ウ……ウサジさん? 何これ? 僕、どうしちゃったの?」

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作者みちなりが一番力を入れている作品です!
少女マリーと父の形見の帆船
舞台は大航海時代風の架空世界
不遇スタートから始まる、貧しさに負けず頑張る女の子の大冒険ファンタジー活劇サクセスストーリー!
是非是非見に来て下さい!
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