0172 あんまり似てない姉妹だと思ってたけど、こうして並べたら結構似てるねー
「い……行かせるものか、トカゲの出来損ないが！」
中庭を突っ切る俺と白波達に、メーラは呪詛と魔法を浴びせて来るが、ここでも勤勉で献身的なトカゲ兵達は、機動隊のように盾を連ねて素早く防御してくれた。
しかし磔台はまだ遠い。
一方アスタロウは獄卒共の所まで辿りつき、奴らの一人から槍を奪い取るや、
「下がれ下郎共がァァ！ 貴様らが魔王族の者に手を上げてタダで済むと思っているのかァァ！」
「ひいいいっ」「これはかなわん」
そう叫び、威嚇しながら黄色の魔族で構成された獄卒共を追い散らす。いいぞアスタロウ！ そのままシルバー達の縄を切れ！
「くそ、この役立たず共がァ！」「とち狂ったのか、アスタロウ！」
しかし赤い魔族共が追い散らされた獄卒の槍を拾いアスタロウを攻撃し出すと、戦況は一変する……多勢に無勢、アスタロウはすぐにシルバー達から引き離されてしまった。
「貴様ら、何故解らぬ！ グハッ、何故人間の女風情が！ シルバーを、ゴールドを処刑出来るのだ、うおおっ！？」
「やかましい！ 魔王様の御意思だ！」「あきらめろ魔族の恥さらしが！」
駄目だ、アスタロウも奮戦しているが次々と被弾を重ねている、白波は堅実に進んでいるがこれでは持たない。
「先に行く！」
「ま、待たれよ！」
トカゲ兵のおかげで俺は中庭の半ばまで無傷で来れた、あとは押し通ってやる。相変わらず俺の武器と言えば歩行の補助に使うようなひのきのぼうと、股間に取り付けられたおんななかせのぼうだけなのだが。
「うおおお！」
「行かすか！」「なめるなあぁ！」
これはもうフットボールだ、魔族共の間を縫って磔台に向かいたい俺、ヴェロニクの使徒を捕まえたい魔族、ただし暴力はオーケーとする。
「どけやぁぁ！」
俺は格闘技なんか習った事ないのだが、この世界の俺は自分のイメージ通りに自分の体を動かす事が出来る……不思議な感覚だな、格闘ゲームのキャラにでもなったような気分だ……俺に顎の下から垂直に蹴り上げられて３メートルくらい舞い上がる赤い魔族を見て、俺はそう思った。
「死ねェェ！」
続いて俺は斧を水平に振り回して来る魔族をダッキングでかわし、その下腹に抜き胴のようにひのきのぼうを浴びせる……背骨にまで届く程の一撃で、魔族の男が黒目を剥くのが、スローモーションのように見える……
「があああ！」
体制を建て直し俺は走る、後ろを振り向く余裕は無い、畜生、アスタロウが槍の柄に引っ掛けられて地面に叩き落された！ 間に合え！ 俺がそう念じた瞬間……炎を纏った風は、俺の側面から襲って来た！
―― ゴオオオ！！
あちいい！？ 白波の誤爆か！？ んな訳ない、これはメーラの魔法だ、さっきまではトカゲ兵が盾で防いでくれたが今はその庇護は無い、俺はその爆風に弾かれて転倒してしまう！
「今だ、そいつを殺せ！」
メーラはそう叫ぶが、その時俺の近くに居た魔族共は全員メーラの爆発魔法に巻き込まれて転倒していた。俺はその中では一番に立ち上がり尚も走る！
磔台はもうすぐそこだ！ しかしアスタロウは赤い魔族に数人掛かりで押さえつけられ、今にも斧で首を落とされようとしている！？
「喰らえぇぇええ！」
俺は憤怒に顔を染め魔法を放とうとする、アスタロウを捕らえていた魔族共は俺の手に集まった大きく眩しい光の玉を見て慌てて飛び退く。
「ハーッ！！」
まあしかし、俺が走りながらいかにも攻撃魔法っぽく放ったこの光の玉は、本当は治療魔法である。
「体が動く……！ 俺はまだ戦えるぞ！」
倒れていたアスタロウは俺のしゅくふくを喰らうと身を翻して立ち上がり、上空に逃れる。
そして俺は今や、磔台の真下に居た。
ふふ……ふふふふ……
「ど、どうしてこんな所に来たんだ！ お、お前なんかの顔など見たくない、早く、早くどこかへ行ってしまえー！」
俺は真下から、磔にされたシルバーを見上げる！！ うひょおおおたまんねー最高の景色だぜヒャッハー！！ 磔にされる前に痛めつけられたのか、ホットパンツでむき出しの太股にはいくつもの痣が出来ている、なんてけしからん事をするんだ魔族共め、やべえええ可哀相でエロくて立つ立つちんこ立っちまうヤバイヤバイ、だめだ一旦目を逸らそうヤバイヤバイ！
「何故だ、何故だウサジ、我らには貴様にそんな事をされる筋合いは無い、貴様のしている事は我らに対する最大の侮辱だッ！」
だけどそっちにはゴールドがァァ！ ああっ、あのプライドの高い魔族の女将軍がエッチなボディスーツを着たまま手足も首も磔台に縛りつけられて、うおおおお何てよく解ってる優秀な獄卒共なんじゃあああ！ ちゃんとゴールドのおっぱいの上下に縄を掛けてある、ボディスーツに包まれたＦカップのおっぱいがより強調されるようになぁぁ！？ たまんねえ畜生たまんねえぇ！
ここがＳＳ席ってやつですかぁぁ！ これがお金持ちな上に関係者にコネのある人にしか許されない景色ですかぁぁ！？ フヘヘヘハハ、シルバーもゴールドもボロッボロ泣いてやがる、そんなにこの俺にスペシャルシートから視姦されるのが悔しいのかぁぁ！？ 残念だなあ！ お前ら縛り上げられてて、満足に首も動かせないんだルルォォオ！？
「おのれヴェロニクの使徒め……！ だが貴様はもう袋のネズミだ！」
背後からの魔族兵の呪詛に、俺は現実に引き戻される。
袋のネズミ……この世界でも言うのね。
俺は磔台の下に居て、黄色い獄卒や赤い魔族兵共は長めの間合いを取った上で、俺を二重三重に取り巻いていた。奴らは俺との接近戦を割け、四方八方から槍で突く事にしたらしい。まずいな。いつものように手柄を焦ってバラバラに突っ込んで来て欲しかった。
白波達は善戦しているがここに来るまでもう少し時間がかかりそうだ。アスタロウも槍を持った魔族に牽制されて進めずに居る。
四面楚歌だな、こりゃ。
だけどシルバーは俺の為に魔王城の牢獄の忍び込んで捕まり、ゴールドはそんなシルバーの為に出頭して捕まったんだ。
何とかしてやりたい、つーか俺が何とかしなきゃならねえんだけど。何とかなんねえかなあ。これ。
