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0171 俺もHカップの彼女が出来ると信じ続ければ、そうなる可能性が微レ存……?

「お前達! とっととそのトカゲ共を外に追い払え、抵抗するなら殺せ!」


 メーラは大きく扇を振り、中庭にひしめく魔族共に指図する。その数は数百……メーラはさらに、はりつけ台の方にも扇を振る。


獄卒ごくそつ共、銅鑼どらはもう鳴ってるんだよ、とっととその女共を処刑しな!」


 はりつけ台の周りには例の黄色い魔族の獄卒ごくそつが居て長い槍を持っている、ちょっと待てェ! その姉妹の体を突き貫いていいのは俺の股間の偃月刀えんげつとうだけだ!

 どうするんだ白波、早く決めろ!



「そんな事はさせぬ……我らはゴールド将軍の麾下(きか)の精鋭……竜人族(ドラゴニアン)部隊だ!」



 白波は足を大きく開き深く腰を落とし、両腕を開いて空を見上げる。何?


「はあああぁぁぁぁ……」


 限界まで息を吸い込む白波……何やってんだ、魔族共が迫って来たぞ!


「フハハハ、死ねェェトカゲ共!」「愚かな下等種族がァァ!!」


 次の瞬間。


―― ンギャアアアアアゴォォォォォオ!!


 辺りの景色が真っ白に染まった!? まぶしい、何事だよこれは、う、うそだろ……白波が……白波が口から激しい火炎を吹いたァァ!? 突出して白波に向かって来た魔族兵はまともにその放射を浴び、火だるまになって他の魔族兵の所まで吹っ飛ぶ!


「ぐわあああ!?」「あち、あちぃ!」


 トカゲ兵達も目を丸くしていた。


「たた、隊長!?」「今のは隊長が!?」「いつの間にそんな技を!?」


 白波は仲間達に背を向け、魔族兵共を見渡したまま答える。


「出来ると信じたら、出来た!」


 こいつ、素直にも程があるだろ。



「何をしている! 奴らはたかだか50人だ、さっさと片付けてしまえ!」

「警備兵! 早くこいつらを始末しろ!」


 中庭には赤い肌の魔族だけでなく、黄色い肌や動物系の魔族も多数居た。赤い肌の魔王族の男共は、トカゲ兵が思ったより手強いと知るや攻勢に出るのをやめ下級魔族を前に出して来る。


「何度も言わせるんじゃないよ! まずその二人を殺せ!」


 バルコニーのメーラはヒステリックにそう叫ぶ。(はりつけ)台の前に居る、槍を手にした獄卒ごくそつ共は、メーラと姉妹を見比べながら躊躇ちゅうちょしていた。当然だろう、メーラはつい最近この城に来たばかりの人間の女、ゴールドは本来の魔族の将軍なのだ。


 それでも魔王のめかけにはかなわないというのか、獄卒ごくそつ共は渋々(しぶしぶ)、槍を持ち上げる……くそ、これ以上は無理だぜ白波! 俺はプラスチックの手錠を引き千切り、腰の袋から紅瓢べにひさごを取り出す。


「アスタロウ! 出ろ!」


 瓢箪ひょうたんの口からつむじ風が起こる! これはもう賭けの中の賭けだ、何の足しにもならないかもしれないし、思い通りにならない可能性もある。しかし後悔している暇はない。翼のある魔族の男、アスタロウはもう瓢箪ひょうたんの外に出てしまった。ジュノン、マジごめん。


「うおおおっ!? まぶしい、俺は外に出たというのか!? きっ、貴様が俺の名を呼んだのか!」

「説明は後だ深遠なる者アスタロウ、あれを見ろ! あの姉妹はメーラの姦計かんけいにより処刑されようとしている、それを止められるのはお前だけだ!」


 中庭には数百の魔族共がひしめいていて、いかに俺とトカゲ兵とて簡単にははりつけ台には辿たどりつけない。だが空を飛べるこいつなら……それに……


「ウサジ……貴様よくもこの俺をこの場に呼び出してくれたな……この俺をあざむきあの暗闇に閉じ込めておいて……」


 ああ駄目か。こいつを説得している時間などないのだ、思い通りにならないならただ単に一人増えた敵として倒すしかない、だけどそれでどうやってあの姉妹を救うんだ……!


「それもこれもこの時の為の策略だったというのか!? 良くぞこの俺をこの場に呼び出してくれたなウサジ! シルバーとその姉は、この俺、アスタロウが必ず救う!!」


 アスタロウはそう言って俺に背を向け、はりつけ台を指差す! 良かった、やっぱりこいつシルバーに惚れてるんだ、だからあの時一人で俺達と戦おうとしていたシルバーを心配して現れたんだな、それは解ったけど……


「どういう状況かは知らないが、こんな事はあってはならぬ! 貴様らも目を覚ませ! 何故人間の魔女風情の策略も見抜けず、我らの同胞の姉妹を処刑しようとしているのだ!」


 処刑人が槍を向けてるだろ御託ごたくはいいから早く行け! 俺は魔族共を指差すアスタロウの尻を空中に蹴り上げる。


「ぬおおっ!? 今行くぞシルバー!!」


 幸いそれでアスタロウは翼を広げ、はりつけ台の方へまっしぐらに飛んで行った。そういや俺、魔王を含めて背中に翼のある赤い肌の魔族をアスタロウの他に見た事ないんだが。あいつ実はユニークだったのか。

 だけどあいつ一人に任せてはおけない。


「ウサジ殿! 我々も中庭を突破するぞ!」


 白波はそう言って真っ先に中庭へと突入して行く。俺も行かないと。

 その間、周りでは……


―― アンギャアアアァァー!!


「出来る! 俺にも出来るぞ!」


―― ゴゴゴワァアァァァー!!


「我らは竜人族(ドラゴニアン)! 知恵と謙虚を尊ぶ種族なり!」


―― ギョエエエエェェース!!


「ゴールド将軍の為に! 真の世界の為に!」


 ある者はまぶしい火炎を、ある者は凍気と氷の刃を、ある者は激しい稲妻いなずまを吹き出しながら、トカゲ兵達が絶叫ぜっきょうしていた。

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作者みちなりが一番力を入れている作品です!
少女マリーと父の形見の帆船
舞台は大航海時代風の架空世界
不遇スタートから始まる、貧しさに負けず頑張る女の子の大冒険ファンタジー活劇サクセスストーリー!
是非是非見に来て下さい!
― 新着の感想 ―
[良い点] 盛り上がってまいりました [一言] こういう誠実な性格のドラゴニアン無双、大好物です
[一言] ガンパレードマーチでトカゲは飛ばねばならぬから云々、火を噴かねばならぬから云々で、だからドラゴンなのだ、みたいなこと言ってたの思い出した。 信心だな。
[良い点] トカゲ兵がドラコニアンを自覚もしくは思い込むことでブレスを吐くのはとてもカタルシスを満たせてよいアイデアであったと思いました。 [一言] いつも楽しみにしております。
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