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0170 畜生そんなのでマウント取りやがって、でかけりゃいいってもんじゃねえぞ

 トカゲ兵達は本館とは別の建物目掛けて駆け上がる。銅鑼どらの音も確かにそちらから聞こえたように思う。

 階段を登り切り、庭園を駆け抜け、俺達は学校の校舎のような箱型の建物、魔王城別館の中庭へと駆け込む……!



 広い中庭には、赤い肌に四本角、魔王族の男共が大勢居た。こちらより数が多い、他にも様々な姿の下級魔族が……人間の奴隷もいくらか居る。


 そして中庭の向こう側の壁の近くには……うおおお!! ゴールドとシルバーの姉妹が、並んで高さ4メートルばかりのはりつけ台に掛けられているではないか!? ホットパンツにおへその出る短いシャツ、推定Eカップのシルバーちゃん、競泳水着のようなえちえちなボディスーツ、推定Fカップのゴールドちゃん……! 二人は両手も開く十字架型のはりつけ台に拘束こうそくされて、悔しそうに瞳を伏せている……うおおお何てけしからん見物みものなんだぁぁ!

 かぶりつきで観たい! この見世物はかぶりつきで観たい、魔族の皆さん! どうか俺にこの光景をかぶりつきで見せてはくれませんか! 魂を、魂を売るから!



「とッ……トカゲ共!? 何をしに来た! 私は貴様らなど呼んだ覚えはない、今すぐただちに、私の目の前から失せろ!」


 トカゲ(・・・)兵達に気づいたゴールドは顔を上げ、そう叫んだ。


 それから……シルバーもこちらに気づいた。一瞬、俺の顔を見て……すぐに顔を背ける。ひどく悔しそうに……


 白波は呼び掛ける。


「高貴なる魔王族の方々よ! 何故(なにゆえ)大功(たいこう)あるゴールド将軍にそのような縄目なわめはじを負わせるのか! これを見よ!」


 俺は白波に肩を押され、トカゲ兵に囲まれたまま、少し前に出る。


「魔王様の御命令通り、ヴェロニクの使徒ウサジを連れて来たのは我ら、ゴールド将軍麾下(きか)の精鋭、()()()()部隊である!」


 魔族共の間にどよめきが広がる……奴らの中には前に見た事があるような奴もちらほら居る。何(おどろ)いたふりしてやがるんだ。


「噂によれば、魔王様の前でウサジは倒したと吹聴ふいちょうした者が居るらしいな? だがウサジはこの通りここに居るぞ! ウサジを捕らえたのはゴールド将軍だ! さあただちに将軍と妹君を解放するのだ、諸君らのしている事は間違っている!」


「な、何を、下等なトカゲ風情ふぜいが……」


 お決まりの罵声ばせいを返しながらも、魔族共は少し動揺していた……しかし。


「ハハ、アハハハハ!」


 甲高い笑い声と共に中庭を見下ろす三階のバルコニーに現れたのはメーラだった。あー。やっぱり並べてみると一番デカいわ。あれが魔王の物かあ。うーん。


「ヴェロニクの使徒は一度は瓢箪ひょうたんに閉じ込めたんだろう!? ウサジを倒したと報告するのは当然じゃないか、あの中に入った奴は自力では出て来れないんだからね!」

「そ、そうだそうだ!」「その女……公主様の言う通りだ!」


 中庭に居たダメ魔族兵共が、そう声を上げる。くそ……奴らは俺が再び世に放たれたのはゴールドのせいだと言うのか。そんなのはノエラという追跡者(ターミネーター)を相手に十分な火力を準備出来なかった魔族全体の落ち度だろう。


 白波はバルコニーを見上げて叫ぶ。


「貴様では話にならん! 魔王様はどうされたのだ!」

「口のきき方に気をつけな! アタシを魔王様の何だと思っているんだい? だがまあ、ヴェロニクの使徒を捕らえて来た事に免じて、聞かなかった事にしてやらないでもない。ちょうどいい、そいつも一緒にはりつけにしな!」


 メーラがあごで指示すると、そういう仕事をする為にここに居るのだろう、黄色い肌に少しだけ獣に似た顔の下級魔族と思われる武装兵士が近づいて来る……しかし白波達はすぐに、そいつらの行く手をふさぐ。


「我らは魔王様の命でこの男を連れて来たのだ。貴様などに引き渡す為ではない」


 次に叫んだのはゴールドだった。


「やめろ貴様ら、言われてもいないのに余計な手出しをするな! 失せろと言っているのが解らんのか、下賎なトカゲ共が! 失せろッ! 失せろーッ!」


 メーラはそんなゴールドに忌々(いまいま)しげな視線を向けていたが、やがて扇子せんすを振りかざし白波をにらみつけて叫ぶ。


「フン、部下の(しつけ)一つ出来ない無能が! お前にはその(はりつけ)台がお似合いだ……トカゲ共! これで最後だよ! とっととその男を引き渡しな!」

「くどい! 貴様の指図は受けん!」


 しかし白波は間髪入れずにそう返す。メーラはしばらく憤怒ふんぬに顔をめ、歯軋はぎしりしていたが。


「そうかい……だがアタシは魔王様の命を受けてここに来てるんだよ、魔王様の全権を任されてね! トカゲ共……貴様らはクビだ! たった今、貴様らは魔王様の庇護ひごを失った!」



 俺はメーラが調子に乗ってそう叫んでいる間、シルバーの方を見ていた。首まではりつけ台にしばられたシルバーは、動かせる範囲で必死に首を動かし、俺達から目をそむけていたが……俺の視線に気づくと、ちらちらと、こちらを見るようになった。

 魔族は男も女も、弱い者は好かないという。どうなの? 手枷てかせを掛けられてトカゲ兵に連れて来られた俺を見て、幻滅げんめつした?

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作者みちなりが一番力を入れている作品です!
少女マリーと父の形見の帆船
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是非是非見に来て下さい!
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