0148 この道具はね……こうやって使うのさヒャッハー!! ってしたい……
俺は狭いテントの中で目を覚ます。腕枕を貸してやっていたカリンは居なくなっていたのだが、代わりに腕枕こそ借りてなかったが俺の顔のほんの20センチメートル程前でジュノンがこちらを向いて寝息を立てている!
「ヒッ……」
向こうを去る前にヴェロニクが言っていた。
『カリンのいたずらにも困ったものね……だけどウサジは見た目が12歳以下の女の子には興味が無いのよね?』
ノエラも前に言っていた。
『ウサジが小さなカリンちゃんと並んで寝ている所を想像するだけで、嫉妬の炎に焼かれて絶叫しそうになる……!』
だけどそんな二人も、ジュノンに関しては何も言わない。ノエラは前に少しだけ言ってたっけ? だけどカリン程には気にしてない。
クレールやラシェルもそうだ。俺がカリンに添い寝してる間はテントに張りついて聞き耳を立ててるくせに……みんな、俺がジュノンとこの距離で寝ているのは構わないというのか。
さて、ジュノンの寝顔を見る事は珍しい。こいつはいつも俺が目を覚ました時には洗顔用のぬるま湯と共に正座して待っているのだ。
今日は俺とカリンが眠るのを待っていたからだろう。まだ寝入りっ端なんだろうな……俺はジュノンの上を四つん這いで乗り越えてテントの出口へ行く……
ジュノンはその瞬間、薄目を開いた。
「あ……」
「……あの、目が覚めたので外へ出ようと」
いやマジで! 俺確かに今、寝ているお前に四つん這いで覆い被さってるけど、変な事しようとしてたんじゃないから! 出口が向こうにあるだけだから!
「すみません……お邪魔をして」
「もう少し休みなさい、まだ少し外は明るいから」
ジュノンは何かを気にした様子もなく、目を閉じた。俺はとにかくジュノンを跨ぎ越えて外に出る。
テントの外ではノエラが立ち尽くしていた。
「あ、あの……カリンちゃんは戻ったんですね、あの僕、おかしな事言った事をウサジさんに謝るの忘れてて、あの、僕ウサジさんがカリンちゃんに添い寝してあげても大丈夫です、あれはちょっと言い過ぎたんです、本当は平気なんです、あの」
「そうですか。解っていただけてありがとうございます。ノエラさんも、あまり気にしないで下さい」
俺はなるべくノエラを刺激しないよう言葉を選んでそう話し、その場を離れる。
辺りが完全に暗くなった頃、ジュノンはテントから出て来た。入れ替わりに三人娘がテントに入って行くのだが……三人じゃ狭いだろうなあ。
「ああ、ジュノンさん、ちょっと」
見張りをしていた俺は、女共が寝ついた頃を見計らってジュノンを呼ぶ。ジュノンはすぐに飛んで来る。
「はい、ウサジ様」
「カリンから色々な道具を預かって来ましたので、貴方にも少し預かっていただこうかと」
俺は道具袋から油性ペンや懐中電灯など、見せても差し支えない物を取り出して行く。
「わあ……ウサジ様、これは何に使う物ですか?」
小道具係の血が騒ぐのか、ジュノンは瞳を輝かせて俺を見上げる……しつこいぞ俺の八寸人参、沖縄の郷土料理にんじんしりしりにして食べてしまうぞ、いいから黙って静かに地面にでも埋まっていろ。
「これは何にでも書ける魔法の筆……これはただの明かりですがすぐ点いてすぐ消えます、水中でも点きます」
「凄いです! こんなすごい道具は初めて見ました!」
俺には入れた物の大きさが十分の一になってしまう、お前の道具袋が一番凄い道具に見えるけどな。
ジュノンは拾った石に油性ペンで試し書きをしている……
「こんな所にも書けるし擦っても消えない、色んな事に使えそうです!」
うん……俺のHDDの中では専ら男の子達が、女の子の体を使って漢字の「正」の字を描く練習をするのに使っていたようだけどね。
「この明かりも凄いですね、本当に簡単に点灯出来るし、とても明るいです!」
そう。真っ暗な中で寝ている女の子に忍び寄ってその体を照らしたりも出来るんだ。熱も出ないし消す時も一瞬だからとても都合がいいんだよ。
「わっ、この布はべたべたくっつきます」
「布ガムテープといいまして……壊れた物の応急修理などに使います」
それから、女の子の手足をぐるぐる巻きにする時とかね……ゴールドに会った時にも持ってたら良かったのになあ。猿ぐつわの代わりにするのは駄目だよ! 真面目に酸欠になるからね、お兄さんとの約束だ。
「すごいです、こんなに簡単にくっつけられるんですね、工夫次第で色んな使い方が出来そうです!」
「少し声が大きいですよ、ジュノンさん」
「あっ……ごめんなさいウサジ様、僕つい、興奮して」
それは仕方ないな、俺もさっきから興奮しっ放しだし。うーん。油性ペンやガムテープを知らなかった美少女に、油性ペンやガムテープの使い方を説明する事が、こんな性的興奮を伴う物だとは知らなかった。
中身が男だと解ってなかったらヤバかった。うん。