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0014 マックス! 頭を上げるな! そのまま伏せていろ、だめだマックス!

 気がつくと、俺は布団の中に居た……いや、合ってるよな?俺は宿屋の大部屋で、自分の分の寝床に入ったはず。

 ただ、ここはどう見ても日本家屋の中だ。四畳半かな……狭い。


「……お兄ちゃん」


 隣に誰か寝てる……暗くてよく解らないけど、女の子だな……これはつまり……俺は今夢の中に居る! しかもその事を認識している!


 夢の中で自我に目覚めるというのはどういう事か。それは全知全能の神になれるという事だ。そこは自分の夢の中、何でも自分の思い通りになる。そこは自分の夢の中、どんな事をしても逮捕されない。目の前に居る女の子に何をしても……


 つまりこれはスーパー18禁タイムの始まりという事だな! そこは自分の夢の中!


 俺は早速布団の中を這い、その女の子に近づく。その子は、長く艶やかな黒髪を持ち、青灰色の瞳がミステリアスな……



 俺は布団の中で後づさる。



「どうしたの? お兄ちゃん」

「あの……お兄ちゃんじゃないですよね……俺……」

「今日はお兄ちゃんって呼びたいの……駄目?」


 俺は必死に考える……

 この美少女とは、決して距離を詰めてはならない。だけど既にこの距離まで接近されている今、兄妹設定はむしろ安全装置として働くかもしれない。


「そ、そうですか……」

「……怒ってるの?」

「えっ!? い、いえ……」

「私が昨日来なかったから怒ってるの? それだったら少し嬉しいな……あんまり早く来たら、お兄ちゃんがまた引いちゃうと思って……頑張って……一晩だけ我慢したの」


 何の話をしているんだ……この……ヤバい女神は……


「それとも……私がこうして来た事自体に怒ってるの? それだったら……とても悲しい……お兄ちゃんが……ヴェロニク信徒になる事を宣言してくれたから……やっとこうして夢枕に立てるようになったのに……」


 ひいいっ!? あれのせいかッ……それでは……まさか……今後このヤンデレ女神は俺の夢の中に自由に出入りして来るという事なのか……?


「ねえ、お兄ちゃん」


 妹設定、見た目にはごく普通のパジャマを着ている女神ヴェロニクが……布団の中を移動し近づいて来る……

 俺は慌てて布団を跳ね上げ、立ち上がる。


 部屋はごく普通の、昭和の香りがする小汚い四畳半だった。扉が一つ、窓が一つ……窓の外は星も見えない漆黒の闇。照明は天井から下がった裸電球の脇の豆灯だけ。


 家具は二組の布団と二組の勉強机のみ、衣装入れは押入れの中だろうか……この状況は俺の趣味ではないのに、いくら願っても状況が変わらない。これは本当に俺の夢の中か??


 出口! 出口は!? この部屋の出口の扉は! ああ……無い……出口の扉に見えたのは扉の絵だ……窓は!? 無理だろ……この窓の外は何なんだ……


 俺はやけくそで布団の中に戻る。そうだ、眠ってしまおう、そうすればこの状況を離れて夢の中に行けるに違いない。


「お兄ちゃん」


 ヴェロニクがそっと背中にくっついて来る……無視、無視、無視……幸いな事に……ヴェロニクの胸はたいした事が無いようだ……せいぜいBカップ……

 そう想った瞬間! ヴェロニクは俺の肩を掴んだ指に力を篭めた! 嘘ぉぉ!! 思考も全部読まれてるのかよ! もう……何も無いじゃん……何も手が無いじゃん……


「ごめんね……あの子達みたいに……胸が大きくなくて……」


 恨めしそうな声……許して下さい助けて下さい神様神様神様神様、


「あの子達に……苦労してるんでしょ? だからね……私、お兄ちゃんをあの世界に行かせたく無かったの……私のお兄ちゃん……あんな女共に奪われるくらいなら……いっそ一思いに……」


 ひゃあああ怖い怖い怖怖怖怖怖怖怖怖神様神様神様神様、


「寒いの? お兄ちゃん……震えてるよ……」


 だだだ、誰のせいですか、神様神様神様……

 って! よく考えたら俺の神様ヴェロニクじゃねーか……


「本当に寒いね……どうしてかな?そうだ。お兄ちゃん、私が暖めてあげるよ。ね? お兄ちゃんもパジャマを脱いで……」




「ぎゃあああああああ!!」


 俺はリアルに跳ね起きた。ここは森の中の砦の、宿屋の二階、男性客用の寝室。


 寒さの理由も解った! 隣に寝ていた若いのにすだれハゲの男が俺の布団を剥いで被ってやがる! 返せこのハゲ!!

 俺はその布団をもぎ取り、別の場所に移動して横になる。

 やれやれ、寝直すか……



 ……



 何だか眠れなくなっちまったみたいだ……

 俺は体を起こす。


「どうしたの? お兄ちゃん」


 目の前にヴェロニクが居た。

 俺はさっきの四畳半に戻っていた。寝てるじゃん俺! 紛らわしいわ!




 翌朝。一晩中四畳半の布団の中でヴェロニカから逃げ回っていた俺は目覚めた。

 全く寝た気がしない。


 ―――――――――


 ウサジ

 レベル8

 そうりょ

 HP23/67

 MP3/14


 ―――――――――


 ステータスを開いてみても……寝る前よりかなり弱ってるんですけど……

 俺はぼんやりしたまま階段を降りていた。


「……きゃあああ!!」


 上からクレールの声がした……そう思い振り返った俺の顔に、クレールのFカップの双丘が降りかかって来た! が、喜びはそこまで。落ちて来たクレールに押しつぶされ、階段の下まで落ちた俺のHPは、ゼロになったらしい。



 †



 俺は再び階段下で目覚めた。ノエラが来て蘇生魔法を掛けてくれたようである。


「大丈夫? ウサジ」

「ウサジ……その、すまない……私がうっかり階段で足を滑らせてお前の上に……」


 やれやれ……ファンタジー世界だからいいけどよ……俺が元居た世界だったらクレールは業務上過失ラッキースケベ致死傷罪で逮捕されるんじゃねーのか……

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作者みちなりが一番力を入れている作品です!
少女マリーと父の形見の帆船
舞台は大航海時代風の架空世界
不遇スタートから始まる、貧しさに負けず頑張る女の子の大冒険ファンタジー活劇サクセスストーリー!
是非是非見に来て下さい!
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