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0136 しょうがないじゃん、男の子だもん。ポコちゃんがやれって言うんだもん

「賢明な判断だったと思います、あの方々ぜんぜん下級魔族じゃないですよ……あれだけしっかりサンダーストームを当てても一人も倒れませんでしたし」

「赤魔族が見た目のわりにもろいから、ちょっとナメて掛かっちゃったかも……矢はどんどん飛んで来るし、私達結構危なかったわ」


 ラシェルやクレールも、そう言って肩を落とす。俺達は廃墟の町の手前まで後退していた。

 向こうもよく停戦してくれたよなあ。ゴールドは相変わらず下等種などと呼んでいたが、トカゲ兵達はそれでいいのかね? あいつら、ゴールドの為に停戦に応じたんだろうに。

 あのまま戦っていたら、ノエラはゴールドを殺していたと思う。しかし俺達は消耗戦の末に全滅していたかもしれない……嫌な女上司は死んだが宿敵は倒した、トカゲ兵達にとっては、それは勝利ではないと言うのか。


「ごめん、みんな」


 ノエラは地面に座り込み、ひどうつむいたまま、そうつぶやく。


「僕のせいで、みんなが危険な目にった。こんなのは勇者のする事じゃない」

「やめてくださいノエラさん、ダンスマンを倒せたのは貴女の勇気のおかげだし、今回も結果的には貴女のおかげで逃げられたんです。あのトカゲ兵達はゴールドを攻撃された事で動揺し停戦に応じましたが、それ以外の方法ではあの場を脱出出来たかどうか」


 俺は全員にしゅくふくを掛け終えた。実際ノエラはかなりダメージを受けていたし、俺も他の仲間もそれぞれに手傷を負っていた。


「ウサジさんは優しいからそう言うけど……僕が勝手に攻撃を始めなければ、もっといい方法であいつらを倒せたかもしれない」


 まあ……ゴールドの奴、ノエラに名前を呼ばれて普通に返事してたな……どんだけ頭に血が上ってたんだろう。実際、瓢箪ひょうたんに閉じ込めちゃおうかというのは俺も考えた、考えたが。


「あのね。これ……聞いてもいいのかしら?」


 クレールは、意味深な笑みを浮かべて声を落とす。


「ウサジさん、本当にシルバーって女との間に……何かあったの?」


 ヒエッ、来やがった……その話するの? 俺が()()()()つつも口を開こうとした瞬間、


「何もないよ、ある訳ないだろ!!」


 ノエラが、地面にうつむいたまま絶叫した。


「ウサジに限ってそんな事、ある訳ないじゃん、ウサジ、ウサジさんはさ、僕なんかはともかく、クレールに迫られたって手も足も出さなかったんだよ!? ウサジさんは女神ヴェロニク様に仕える身も心も清らかな人なんだ、何もない、何もないんだよ、それをあの魔族女が……! ウサジさんをおとしめようと、一番卑怯(ひきょう)な方法でウサジさんをおとしめようと……許せない、あの女許せない……!」


 大地をこぶしで打ち、その固く締まった土に指を突きたて、き散らしてにぎり込み、ノエラは慟哭どうこくする。

 見かねたラシェルがノエラの横にかがみ込んで寄り添い、その肩に手を回す……大丈夫かしら? ノエラは相当興奮しているようだが……ああ大丈夫そうだ、ノエラはラシェルに抱きついて嗚咽おえつをあげ出した。


「泣かないでノエラさん、みんな解ってますよ、ウサジさんはそんな人じゃないって」

「うう、ラシェル……ラシェルぅ……」


 ラシェルの胸で泣きじゃくるノエラ……百合(ゆり)見物ってのも悪くねェなぁ? ヒヒヒ。出来ればブサメイクとイモジャージ無しでやってもらいたかった。


「あ、あの、私も変な事言ってごめん」


 クレールもそう言ってうつむく……うーん。そういうのやめて欲しいなあ。俺にもね、良心の欠片かけらくらいはあるんだわ。罪悪感を感じちゃうよねー。

 本当の事を言えば、邪魔さえ入らなきゃ俺は間違いなくシルバーを食ってたし、何なら今からでも食べたい、今、目の前に現れたら迷わず食う。食う。

 食う機会がたまたま無かったから食わなかっただけで、俺自身はゴールドが危惧する通りの人間です。シルバーにエッチな事したかったわー。チャンスが無くて出来なかっただけで。

 だからねノエラ、そんなに泣く必要は全く無い。クレールも落ち込まないで。

 こんな事、絶対に口に出せないけどね。ハハッ。



   ◇◇◇



 ノエラは泣き止んだ後もまだゴールドを倒したいと息巻いていたが、あのトカゲ兵の軍団はちょっと、正面から挑んで倒せる相手ではない。10人くらいなら倒せると思うけど、50人は居るんだよな。


「あの廃墟の町は迂回うかいしましょう。どうしても通らなくてはならない場所ではないですし、今はこの近くにあったというヴェロニク様の寺院にたどり着くのが先決です……そこにも敵が居るかもしれませんが」



 辺りには夕闇が迫っていた。出来ればあの廃墟の町でどこか都合のいい所を見つけて寝泊りしたかったが、今はあそこからは離れるしかない。

 幸いこちらにはカリンの提灯ちょうちんがあるので、道から外れて荒野に迷い込んでも、また道に戻る事は容易たやすい。


 俺達は背の高い草の生えた湿地の間で夜営を張る。

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作者みちなりが一番力を入れている作品です!
少女マリーと父の形見の帆船
舞台は大航海時代風の架空世界
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是非是非見に来て下さい!
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