0135 そんな事より僕と三人でさ、明るく楽しくエッチをしようよ? ラブピース
城壁のある村で、俺はゴールドの計略にかかり青い瓢箪の中に吸い込まれた。
その後ノエラはゴールドを追い回し、荒野の砦に追い詰めて瓢箪を奪い取り、俺を呼び出した。
しかし俺がすぐに返事をせず出て来なかったので、ノエラはゴールドを一人で倒す羽目になった。
そしてどうにかゴールドを倒したノエラは再び俺を呼び、俺は返事をして瓢箪から出て来た。
その後色々あって、俺は少しゴールドと話した。しかしその時点ではゴールドは俺とシルバーの間に何かあったとは思っていなかったのだと思う。
あれから今までの間にゴールドは何かを知り、今こうして俺の目の前に現れた。
ノエラが、黙って前に進み出て、俺と、彼方に居るゴールドの間に立ち塞がる。
「また会えたね、ゴールド」
ノエラはまるで古い友人に語り掛けるような口調でそう言った。しかしその言葉には彼方に居るゴールドを半歩後ずさりさせる程の威力があった。
「……ノエラ! 私は今ウサジと話しているのだ、貴様には関係が無い!」
「君たちにとってのウサジは、魔王の敵でしかないんだろう!!」
ノエラの声は、激しい怒りに震えていた。いや、まあその……ゴールドの言い方もどうかと思うんだけど、ノエラも過剰反応じゃないかな、それは、うん。
「関係がないのは君の方だ! 戦闘がしたいならグダグダ言ってないでとっととかかって来い!!」
そう言うが早いかノエラは無謀にも弓を構えるトカゲ兵達の方へ、ゴールドの居る所に向かってまっしぐらに突進して行く! 敵の作戦にダダ乗りじゃねーか!
「ラシェル!」
「はい!」
ラシェルは防御魔法を掛ける、しかしその防壁はノエラの周りに集中して掛けるしかなかった!
そしてトカゲ兵達が一斉に矢を放つ!! 廃墟となった町に弦音が鳴り響き、無数の矢が殺到する、ぎゃあああ矢が矢が矢が当たったああ痛ぇ痛ぇ痛ぇ畜生!!
「ウサジ様ぁ!」
「隠れろジュノン!」
元の世界で自分の腕と足に矢が刺さっているのを見たら、悲鳴を上げて気絶していたかもしれない。しかしこの世界の今の俺にとって、このくらいはどうって事はないようだ。今さらだけど、異世界って恐ろしい。
そして矢のほとんどはノエラの方を狙っていた、ノエラは無事なのか!? ってあいつ、飛行機のプロペラみたいな勢いで天秤棒を回転させ、ほとんどの矢を叩き落してる!
「ば、化け物め!」
トカゲの化け物共がそう叫びながら剣と盾を手にノエラに襲い掛かる……!
「邪魔だァァ!!」
しかしあくまでゴールドを狙うノエラは、また敵の間を掻い潜りさらに突出してしまう。
「戻れノエラ、出過ぎだ!」
そして俺がそう叫んでも戻って来ない。
「うおおお! 道を空けろ!」
「諦めろォ! 多勢に無勢だぞ!」
そしていかにも数合わせの雑魚のように見えたトカゲ兵達は、実際にはかなり厄介な敵だった。下級魔族と呼ばれる彼らには、赤い肌の連中のような傲慢さが無いのだ。
「油断するな、しっかり盾を構えろ!」
「日頃の訓練の成果を見せるぞ!」
筋力的には上位の魔族と遜色がなく、日頃から鍛錬を欠かさず味方との連携も取れている謙虚なトカゲ兵達は、白兵戦においては自信過剰で脳筋な魔族兵の数倍手強い。
「広場から離れて! 弓兵がまだ居ます、クレールさん左!」
一方、ジュノンは市街戦の複雑な地形を読み切って的確な指示を飛ばしてくれる……正直かなり助かる、俺達には敵の弓兵を確認する暇もないのだ。
「今ですラシェルさん!」
「サンダーストーム!」
呪文を詠唱したラシェルの右手から沸き起こる雲が、トカゲ兵達の一隊を包む……
「た、耐えろォ!」
―― バリバリバリバリバリドォォォン!!
雲の間を凄まじい数の雷光が走り、ほんの一瞬遅れて雷鳴が轟く! かなりの数の敵を巻き込んでラシェルの呪文攻撃は成功したように見えたが……
「くそォ……まだまだ!」
その場にしゃがみ込んで攻撃を堪えたトカゲ兵達は、焦げ臭い臭いを放ちながらも、まだ剣と盾を構えて向かって来る!
「しつこいぞお前ら!」
「しつこいぞ貴様ぁ!」
俺がそう叫んだ瞬間。どこか建物の上の方で、ゴールドもそう叫んだ……続いて!
―― ガターン!
「ぐわぁっ!?」
そのゴールドが空から降って来て地面に転げ落ちる! お尻を打ったけど大丈夫!? おじさんが今撫で撫でしてあげようねー、ぐふふ。
―― スターン!
そんな事を考えた俺の目の前にノエラも降って来た! こっちは華麗な着地も決めて元気だ……いや元気じゃない、肩には背後から矢が刺さってるしあちこち怪我してる!
「ゴールド……今度こそ二度と口をきけないようにしてやる!」
まるで親の仇を前にしたような、俺でさえドン引きの凄まじい殺気を篭め、ノエラが低く呻く。ゴールドの方も、痛む体を引き摺りながら、やはり親の仇を見るような目で俺とノエラを交互に睨む……
待て。ちょっと待て。
「お前ら! 一旦停戦しないか!?」
俺はヤケクソでそう叫んでみた。
「おっ、お前達の方がこの町から後退するなら同意する! 一時停戦だ!」
驚いた事に、トカゲ兵のリーダーはあっさりとそう応じた。
「正気か貴様ら! とっととこいつらを皆殺しにするんだよ!」
「どうしてウサジさん!? この女だけは許せない、こいつは僕が倒す!」
ゴールドもノエラも激しい憎悪を燃やしそう応酬する……嫌だなあ、僕はこういうのは嫌だ。女の子同士がガチで憎みあい、喧嘩をする所なんて見たくないねェ。
「やめろォ! 手を離せ下等種共がァ!」
「ウサジさん、何で、ウサジさん!」
トカゲ兵達はゴールドを、俺とクレールはノエラを抱えて、それぞれこの場所から後退する。