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0134 昔の女の事だと? お前は今まで食ったパンの枚数を覚えているのか?

 昼は荒野を突き進む……道は次第に山がちになり、気候は冷涼になって来た。

 途中、割合大きな都市遺跡にも出くわした。石煉瓦作りの建物の外壁がほとんどそのまま残っている。これまでの経験上、こういう場所には大抵モンスターが潜んでいる、そう思っていたら。


「止まれ……お前達がヴェロニクの使徒の一行だな」


 現れたのは以前見た、喋るトカゲ人間の兵士共だった。結構な数だな……しかしどうせ待ち伏せしていたなら奇襲でも仕掛けてくればいいものを、わざわざ姿を現して声を掛けて来るとは、なかなかの紳士である。


「ヴェロニクの使徒ウサジは私ですが、私達は勇者ノエラの一行ですよ」


 俺は堂々と前に出てそう答えた。兵士共は道だけでなく建物の屋根や城壁の影にも居て、こちらに弓を向けている……しかし以前ラガーリンに弓を向けられた時とは違い、俺達には飛び道具に有効な防御魔法を持つラシェルが居る。


「見ての通りお前達は完全に包囲されている! 俺が合図をすれば全ての弓手が一斉に矢を放つ、お前達がいくら強くても、これだけの数の矢をくぐる事は出来まい!」


 そこは価値観の別れる所で、俺はそうは思わないんだが……さっきまでの方が可能性があったんじゃないか? 奇襲で撃って来られたらこちらも全員助かるというのは無理だったかもしれない。

 しかしこのトカゲ兵達はそうはしなかったし、今も何やら御託ごたくを並べていやがるのだ。それは、どういう事か。


「我々と交渉したい事でもあるんですか? 話があればうかがいますよ」


 俺がそう言ってやると、トカゲ兵のリーダーらしきそいつは、他のトカゲ兵と何か小声でささやき合ってから、こちらを向く。


「お前達は、アスタロウ殿を捕らえているのだろう」


 アスタロウ……誰だっけ? ウソだよ、覚えてるよ、俺が紅瓢べにひさごの中に閉じ込めた翼のある魔族のバカな男だ。妙な薬品で攻撃して来てジュノンを性転換させてしまった張本人でもある。

 しかしまあ、こちらには本当の事を言う義務は無い。


「その質問には、お答え出来ませんね」


 俺はそう答えながら、一番体力の低いジュノンを背中にかばう。


「我々は知っているのだ。シルバー様からそう聞いた」


 シルバー……そういえばシルバーちゃんはあれからどうしたのだろう。ゴールドちゃんも。うーん……あの姉妹を並べて縛り上げて交互にエッチする方法は無いだろうか? やべえ、そんな事考えたら興奮して来た。


「シルバーは今、どこに居るんですか?」


 俺は知りたかったのでそう聞いてみた。トカゲ兵のリーダーは色めき立つ。


「そっ……そんな事、例え知っていても言う訳が無いだろう!」

「ああ、貴方も知らないんですか」

「た、立場をわきまえろお前! 質問をするのは俺の方だ、俺が合図をすればお前達はたちまち無数の矢に射抜かれ、ハリネズミになるのだぞ!」


 だから、そこは見解の別れる所なんだわ。ラシェルは辺りの気配を察する事に集中していて、トカゲ兵が合図をした瞬間に飛び道具を防ぐ強力だが効果時間の短い防御魔法を唱えるだろう。ただ、そこから先の乱戦の中でも矢は飛んで来るだろうし、それを防ぐのは結構大変だとは思う。


 俺はそんな事を考えながら、トカゲ兵のリーダーの動きを凝視ぎょうししていた。

 そこへ……!



「ウサジに……ノエラ!」


 トカゲ兵のリーダーの後ろの、石煉瓦いしれんがの壁の向こうから現れたのはパツパツでエッチなボディスーツもまぶしいFカップの美人魔族、ゴールドちゃんだった! うおおお! 俺のファンタジーやっと始まったァァ!


「愚か者共が! 貴様らの命運もこれまでだ、何度も言わんぞ、一思いに殺して欲しければ言う事を聞け! 愚図ぐずのアスタロウは貴様らが捕えているのか、そしてシルバーに何をした! 返答次第では貴様らを、死してなお苦しみの続く無間地獄へ送り込んでやる! ウサジ……貴様一体、シルバーに何をした!!」

「い、いけません、楼主様はお下がり下さい」



 さすが、ラシェルは賢者である。敵がこちらの動揺を誘う為におかしな事を言っているという事を見抜き、油断無く敵全体を俯瞰ふかんし続けている。


「ええっ……ウサジさん、あの魔族の女に何かしたの……?」


 クレールは半笑いで俺の顔を見た。馬鹿者、敵から目を離すんじゃありません。見ろ。ノエラだってちゃんと敵の方を向いたままじゃないか。


 それから、敵の方もなんだか動揺しているな。トカゲ兵のリーダーはゴールドを隠しておきたかったようなのだが、そのゴールドが激昂げきこうして予定外に姿を現してしまったらしい。


「それは……ウサジ様がシルバーをわざと逃がし、尾行してあの町の位置を突き止めた事を言っているのでは」


 ジュノンがクレールにそう答える。そうね。そういう事はしたね。



「アスタロウを捕らえているのは、奴はお前がシルバーにした事を知っているからではないのか……!?」


 ゴールドは怒りに顔をゆがめながら、そうしぼり出す。



 ちょっと待ってよ。

 今ここでその追及をするの!? 仲間達の前で!? どうして!?


 確かに俺はちんこ丸出しでシルバーちゃんに迫りました! 仕方ないじゃん、俺が裸で温泉に入ってる所を襲撃して来たのはシルバーの方だよ、シルバーは武器としてぎざぎざの刀を持ってたけど、こっちはちんこしか持ってませんでした!

 俺は首に刀を突きつけて来たシルバーの手を掴んで湯船の中に沈め、ちんこを近づけて威嚇いかくしました、だって本当に他の武器は無かったんだよ!

 それから……それをアスタロウに見られたな……ま……あいつから見たら俺が裸でシルバーを湯船の中に沈めて乱暴しようとしてるように見えたろうな……


 実際シルバーちゃん、俺のちんこを見てめちゃくちゃ動揺してたね。もしかしてあの子、生娘きむすめだったのかしら。


「貴様にやましい事が無いと言うのなら、今この場でアスタロウを開放しろ、そして奴に証言させろ! おのれウサジ……貴様がシルバーに何かしたと知っていたら、もっと早くに貴様を始末していた……!」


 魔族も貞操は大切にするんだね。勝手にサキュバスみたいな感じなのかと思ってたわ。お姉ちゃんめっちゃ怒ってんな。負けて戻って来た妹をいじめてたくせに。


 困った。ウサジ君またしてもピンチである。

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作者みちなりが一番力を入れている作品です!
少女マリーと父の形見の帆船
舞台は大航海時代風の架空世界
不遇スタートから始まる、貧しさに負けず頑張る女の子の大冒険ファンタジー活劇サクセスストーリー!
是非是非見に来て下さい!
― 新着の感想 ―
[一言] 今回も最高…(腹がよじれそうw
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