0132 一緒に女子の着替え覗こうぜ! そんな事を言い合える親友が欲しかった
荒野の旅は、何日も続く。
道はほとんどが砂に埋もれて消えていて、どこにあるのかも解らない。これはカリンの提灯が無ければとても歩けなかっただろう。
人間の集落跡も時折現れるが、人が居なくなって百年以上経ったと思われる物ばかりだ。井戸は砂に埋もれているし、石造りの壁も崩れかけている。
そしてやっとオアシスを見つけたと思うと、モンスターが待ち伏せしている。
「ヴオオォーン!」
水辺の畔の湿地から、泥人形のような奴が次々と立ち上がって来る。人間より少し大きいくらいの、四肢のある……まさに泥人形としか言いようのない奴らで、一見動きは鈍そうに見えたが……5メートル程まで接近すると突如カンフーの達人のような素早い動きで攻撃して来る!
「危ない!」
「これはダンスマンです! 図鑑には出会ったら逃げろと書かれてました!」
ダンスマン? シャレた名前つけやがって。だけどこいつら素早い動きが出来るのは数秒間だけみたいだぞ、気をつけて戦えばどうって事ないんじゃね? ようやく見つけた水場を離れるのは癪だしな……どうしよう。
「大丈夫、良く見て戦えば負けないよ、オアシスにこんな奴らが居たら迷惑だ!」
そう叫んだのはノエラだ。あいつここの所調子を崩し気味だったけど、あの感じは復調したみたいだな、勇ましい僕っ子勇者の顔に戻っている、そして油断の無い狡猾な動きと圧倒的なスピードで、次々とダンスマンを粉砕している。
「ふふ、ノエラには負けられないわね!」「魔法はあまり効きませんよ!」
クレールもパワーチャージを繰り返して次々と敵を木端微塵にして行く。ラシェルもここは物理一択みたいだが、この敵には何故魔法は効かないのだろう。
俺もひのきのぼうを振りかざして戦う。この武器がこんな長い付き合いになるとは思わなかったわ。普通、最初に宿屋に泊まった翌日までには買い替えてるよね。
ダンスマンは一瞬の速さと力を持つ敵ではあったが、出会ったら逃げろという程の危険な敵には見えなかった。
最初のうちは……!
「ちょっと待った! 何十体居るんですかこいつら!?」
「きゃああ!! 倒した奴が片っ端から蘇ってるよウサジさん!」
「だから魔法はあまり意味無いんです……倒してもまた蘇るから」
しまった。俺達は敵を侮った。ラシェルの言う通り、最初から逃げておけば良かった。こいつらは一度に数秒間しか速く動けないので逃げるのは簡単なのだ……囲まれる前ならの話だが。
俺やクレール、ラシェルが焦り出した、その時。
「狼狽えないで! 百回でも二百回でもぶっ倒せばいいんだ! うおらあああああ!」
ノエラはそう大声で吼えると、尚も一気呵成に敵に打ち掛かり、次々とダンスマン共を撃破して行く。クレールもラシェルも、俺も、ノエラの裂帛の気合いに勇気を奮い起こし、再び敵に立ち向かう。
……
辛い時にも仲間達を奮い立たせ、背中で引っ張る、それは誰にでも出来る事じゃない。やっぱり、ノエラはゆうしゃだな。真面目で勇敢で正義感が強く、何より仲間想いでないと務まらない。ああ……そんなノエラを押さえつけて無理やりエッチな事をして泣かせてみたい……
「……皆さん!」
そこへ不意に、逃げ回っていたジュノンが叫ぶ。ジュノンは竹筒で作ったおもちゃの水鉄砲を持っていた、何を一人だけ遊んでるんだあいつ。ジュノンはその水鉄砲でダンスマンの一体を撃つ……ん? ジュノンが撃った水は命中したダンスマンを赤く染めた。
「あのダンスマンだけ動きがおかしいです!」
「よし来たぁ! 任せて!」
近くに居たクレールは行く手を塞ぐダンスマン二体を素早く片付け、赤く染まったダンスマンに向かって突進する。すると赤いダンスマンは他のダンスマンの陰に逃れようとする……!
「気をつけて!」
ラシェルが後ろから叫ぶ、赤いダンスマンを追い掛けるクレールの周りに四体のダンスマンが殺到する、しかしその四体にはラシェルの放った魔法の氷の槍が殺到し串刺しにする! 俺は呪文をコントロールするラシェルを他のダンスマンから守る役だ。
赤いダンスマンは他の仲間を盾にして素早い動きで逃れようとするが、行く手に先回りしたノエラに立ちすくんだ所を、追いついたクレールに背後から長柄の平鋤で、脳天から地面まで貫通するような特大の一撃を喰らう。
「グォッ……!」
そのダンスマンは泥人形の姿のまま、乾いた大地に倒れる。
するとどうだ。他のダンスマン達も次々と倒れて行く。そいつらの方は人形の形すら留めない、ただの泥の山に戻ってしまった。
「……やったー! 倒したわよ!」
「皆の連携の勝利ですよ!」
確かに、少し苦戦はしたが気持ちのいい勝利だった。ノエラの勇気、ジュノンの観察力、そして残る三人の労働力の勝利だ。
砂漠の湧き水はそれ以上の意地悪をする事もなく、俺達の喉を存分に潤してくれた。
女共が水浴びをしたいと言い出すと、ジュノンは水辺に即席の陣幕を作った。
「えー、ここにはウサジさんとジュノン君しか居ないんだから、別に丸見えでも良かったのにー」
「ウサジ様はヴェロニク様の使徒で修業中の身ですので……あと、僕も心は男のままですから皆さんの沐浴を見てしまうのはちょっと」
クレールとジュノンがそんな話をしていると、ノエラも来て言う。
「そうだよクレール、ウサジさんはそんなの見たくないんだよ、だから三人でぱぱっと浴びちゃおう、ジュノンが作ってくれた陣幕の向こうで」
いや、見たいよ? 舐めまわすように見たいよ? 鼻息荒く見たいし、なんならズボンもパンツも脱いで見たいよ! 女の子達の水浴びが見たいよ! 見せろ!
「私達は向こうに行きましょう、ウサジ様」
ジュノンはそう言って、わざわざ陣幕を立てたのにさらに俺の手を引いて近くの岩陰の向こうに連れて行く。そこには既に石組をした焚き火と敷物と、お茶の用意がしてあった。
なんだかなあ。ジュノンって本当に男の心を持ってるのかね? 俺がジュノンならここには覗き用の望遠鏡とティッシュだけを置いておくわ。